元凶は産業革命...?メシマズで有名なイギリス、”18世紀半ばまで存在した食文化”が喪失された経緯の解説が興味深い

1982
めがざら @Megazarak

これが長期間にわたって続いた結果として、「そもそもまともに料理をしたことが無い」人間が大量に発生することとなります そんな彼らでも、うまく行けば結婚し、まともな借家に住むことができました―が 当然ながら 夫 婦 そ ろ っ て 料 理 が で き な い さてどうなるかと申しますと

2020-01-20 22:34:10
めがざら @Megazarak

皆さんも一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか 「イギリスでは、野菜を味付けせずに煮崩れる寸前まで煮込んで、グタグタになったものに塩コショウやビネガーで各自味付けをする」 という、我々日本人からすれば、極めて理解に苦しむ話を 恐らく、この頃にあれが始まったのです つまり…

2020-01-20 22:36:39
めがざら @Megazarak

・夫婦そろって料理はできないが、もちろん毎日外食するほど金はない ・市場で野菜は買えるものの、当時の冷蔵技術は低く、また、衛生環境も劣悪であった となると、 「どう見ても火が通ってる状態まで煮込んでしまえば、多少傷んでいても食べられる」 という結論が導き出されたのではないでしょうか?

2020-01-20 22:40:03
めがざら @Megazarak

事ここに至り、ついに「料理」ではなく、「とりあえず間違いなく食っても大丈夫なところまで火を通す」だけの代物へと成り果てるのです こうなるともう最悪で、これがある程度の範囲で一般化していってしまうわけです で、もっと不味いことにですね、これと同様のことが一部富裕層の中にも起こります

2020-01-20 22:44:00
めがざら @Megazarak

産業革命で一山当てた、ジェントリですらない、いわゆる「成金」の方々は、上流階級に倣おうと使用人を雇います しかし、彼らは貴族や地主ほど裕福ではないので、雇える使用人は一人か二人、それも労働者です …しかし、使用人がいる以上、「家事は使用人に任せるもの」となります はい、ここで炊事

2020-01-20 22:46:03
めがざら @Megazarak

鍋に水入れて芋をふかして、平鍋でベーコン焼いとけ」 「 野 菜 は と り あ え ず 煮 て 火 を 通 し と け 」 そうなるよな、そりゃ! そうなるよ! だってそれしか知らねえもん、労働者階級の使用人!

2020-01-20 22:47:56
めがざら @Megazarak

さて、ここで 「でもそれは労働者の話であって、イギリス全体に適用できないのでは?」 という疑問を持たれた方もいらっしゃると思います その通りです さて、では惨憺たる有様になった労働者のメシから、ちょっと視点を変えましょう 「当時のイギリスの食糧事情」 です

2020-01-20 22:50:41
めがざら @Megazarak

さてはて、当時のテムズ川は船舶における物資輸送の要であり、ロンドンには生鮮食品を含む多数の荷が降ろされていました また、テムズ川とその河口部、そこから繋がる沿岸・外洋における漁業も極めて盛んでした 特にビリングスゲートは、当時から今に至るもロンドン最大の魚市場です

2020-01-20 22:57:43
めがざら @Megazarak

イギリス、魚、と聞いて思い浮かべるもの、そう フィッシュアンドチップスですね? これを例にとって、「当時のイギリスにおける魚の扱い方」を簡単に説明します まず前提として、「当時でも、氷による冷蔵はある程度ですが確立していました」 勿論、その技術は現代とは比べるべくもありませんが

2020-01-20 23:02:08
めがざら @Megazarak

氷井戸(Ice Well)と呼ばれる深い竪穴に、北方から運んできた氷雪を溜め込み、それを保冷剤として売っていたりしたのです またそもそも、イギリスは気候が冷涼であり、生鮮品はある程度長持ちしたでしょう 加えて、イギリス周辺海域は現代でもタラの良質な漁場であり、当時からこれは名産でした

2020-01-20 23:05:19
めがざら @Megazarak

にもかかわらず、「本場のフィッシュアンドチップスは不味い」と言われるのはなぜか? これは、魚の扱い方と調理方法によるものが極めて大きな要因となっています まず油ですが、イギリスは畜産国で、牛の牧畜が非常に盛んです 身近な食用油として、古くからヘット、つまり牛脂がありました

2020-01-20 23:07:52
めがざら @Megazarak

この牛脂、すき焼きや焼き肉で使う人はお分かりかと思いますが、独特の匂いがあります また、動物性油脂であるため、加熱・酸化するとその匂いがかなり強くなる傾向にあるのは想像できると思います 古くからのフィッシュアンドチップスは、このヘットを揚げ油に使っていることが多いです まずここで1点

2020-01-20 23:10:40
めがざら @Megazarak

んで魚の扱いですが…どうも割と最近まで、イギリスの漁業には「活〆」という概念が存在していなかったようです 「血を抜くために傷なんかつけたらそこから傷む」「なんでわざわざ新鮮な魚を傷物にするんだ」という考え方だったらしいのですね しかし、実際には活〆の方が鮮度を保てるのはご承知の通り

2020-01-20 23:13:06
めがざら @Megazarak

特にタラのような深海性の白身魚は、急速冷凍してしまうか、そうでなければ活〆でしっかり血抜きをしてしまわなければ、極めて傷みやすいものです まして、当時の鈍足の船で、精々氷に突っ込んだだけの保冷となれば、傷むのはまあ、必然でしょう 勘違いしてはいけないのは、「当時はそれが普通」でした

2020-01-20 23:16:11
めがざら @Megazarak

さて、そうやって持ち帰ってきた魚は、ビリングスゲートに並び、そこから店や家庭に持ち帰って行かれるわけですが 当時の衛生管理は今より遥かに緩く、極めていい加減としか言いようのないものでした 朝に魚が上がったからと言って、市場の魚が今朝のものとは限らない、というようなこともあるほどです

2020-01-20 23:18:58
めがざら @Megazarak

フィッシュアンドチップスの魚は伝統的にタラが主体である、とされています つまり、当時のそれは ・活〆されておらず ・いい加減な冷蔵技術で持ち帰り ・適当な管理で市場に並べられた ・そもそも傷みやすい ・鮮度不明の白身魚を使う という…もうこの時点で「おお…もう…」となる代物なわけですが

2020-01-20 23:25:00
めがざら @Megazarak

ここに加えて、揚げ油が先ほどのヘットになるわけです これだけでも相当にアレなのですが、まだあるんだなこれが まず衣、水で溶いた小麦粉、以上!味はつけない!卵も入ってない! 次に魚、下味無し、以上! 次に油、ヘット!低温!以上! なんで低温の油で?と言いますと、恐らくこうです

2020-01-20 23:27:15
めがざら @Megazarak

言ったように、当時のF&Cは、魚の鮮度が非ッ常に怪しいです ですが、大当たりなど出せばもちろん、店が一発でアウトです なのでちゃんと火を通す必要があるのですが、高温で一気にカラッと揚げると、中まで火が通らない可能性があります で、低温の油でじっくり揚げるディープフライになったのでは?と

2020-01-20 23:29:41
めがざら @Megazarak

で、加熱面はまあこれで解決できるのです できるのですが…ディープフライドの特徴として、 「揚げ油が衣と食材にどっぷり浸み込む」というのがあります 油に長時間浸されるわけですから、当然のことなのですが… これがサラダ油とかなら、恐らくまだマシなんですよ(マシ、でしかないけど)

2020-01-20 23:32:16
めがざら @Megazarak

「長時間加熱されて酸化した牛脂で、小麦粉の衣をじっくりと揚げ、中に入っているのは鮮度の怪しい白身魚(下味一切なし)」 という過程を経て完成した代物がどういうものになるのかは、まあなんというか お察しください

2020-01-20 23:35:12
めがざら @Megazarak

鮮度が怪しいことにかけては野菜なども同様で、市場で買ってきた野菜がカビてる、みたいな話も往々にしてあったようです なので、前述の通り「とにかくしっかり加熱殺菌する」という傾向がある程度見られるのは仕方のないことなんでしょう また、これはちょっと話がズレますが、当時は水質もアレでした

2020-01-20 23:39:06
めがざら @Megazarak

当時のロンドンというのは水質が非常に悪く、生水は高確率で大当たりする代物で、基本は煮沸消毒でした 清浄な水は高価で、労働者にはかなり手を出しにくいものだったため、水代わりに普及したのがです つまり「アルコール飲料は基本的にアルコール消毒済みやろ」

2020-01-20 23:40:50
めがざら @Megazarak

この結果としてポーターなどのビールが労働者階級に水代わりとして普及し、ついには「ジン横丁」なる代物まで生まれることになります 当然のことながら、当時のロンドンではアル中がそこらじゅうにゴロゴロしてました なにしろ真水より蒸留酒の方が安かったのでチカタナイネ

2020-01-20 23:45:24
めがざら @Megazarak

さて話をもとへ戻しますと かくの如く、産業革命期の労働環境・衛生環境の劣悪さが「徹底的に火を通す」という方向性を生み出し、 それがイギリスの食事は不味い、という評価を呼ぶ大きな一端になっているのは疑いようのない事実です 他にもいくつか要因はあり、食材の乏しさなどもそうです

2020-01-20 23:48:58
めがざら @Megazarak

先述の通り、イギリスの気候は日本ほど多種多様な農作物を育むことができません このため、イギリス料理において、野菜というのは極めて限られたものでした 半面、魚と肉類・穀類は非常に豊富にあり、またジャガイモも古くから利用されました 言ってしまえば、「食材レパートリーが乏しかった」のです

2020-01-20 23:54:54