小池陽慈さんによる「高校生や浪人生のためのテクスト論入門」

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小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

ただここでは、ちょっと違う角度から考えてみましょう。 「走れメロス」は、 王様クソ → メロス激おこ → 王に直談判 → 死刑確定 → 妹の結婚式手伝うからちょっとタンマ → 身代わりに友人置いてく → 手伝いを終えて王宮に馳せる → 挫折? → 復活 → 間に合う → 王感動 という展開ですよね?

2018-10-04 22:16:42
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

この展開で「友情の素晴らしさ」を確信できるのは、すべての「結果」が出揃った結末場面においてのはずです。つまり「走れメロス」に「友情の素晴らしさ」を解釈する読み方は、「結果」をコードとしているということがわかりますね? じゃあこの「結果」というコードをずらしてみるとどうでしょうか。

2018-10-04 22:16:45
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

例えば「原因」をコードとして読み直してみましょう。 なぜ物語は、ハッピーエンドを迎えることができたのか。 王宮へ駆けていくメロスは、一度だけ、挫折しそうになります。その後見事に復活するわけですが、そのきっかけになったのが、岩に流れる清水を飲んだこと。

2018-10-04 22:29:42
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

つまり物語が大団円を迎えることができた「原因」の一つは、岩に流れる清水という【大地の恵み】であるわけです。ならば、そのような恵みこそが2人の友情を深め、あの王をすら改心させる奇跡を引き起こしたのですから、「走れメロス」の主題は、【大地の恵みの素晴らしさ】とも解釈できますよね!

2018-10-04 22:29:45
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

あるいは「走れメロス」は、王の悪虐ぶりに憤るメロスの描写から始まり、王の改心に終わる。仮にこの【始まり → 終わり】を【フレーム】とでも呼び、それをコードとするなら、むしろこのテクストは、【どんな悪辣な人間でも改心することができるのだ】という【性善説】を主題としているとも読める。

2018-10-04 22:38:25
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

もういっちょ! 「走れメロス」は、最後、友人に「裸体」であることを指摘されたメロスが「赤面」する、という、明らかに〈身体性〉に焦点化した描写で閉じられます。この〈身体性〉をコードとして再度テクストを読み返してみると、実はメロス復活のシーンに、看過できない記述がある。

2018-10-04 23:34:47
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まずは挫折した時、 「身体疲労すれば、精神も共にやられる」 そして清水を口にしたあと、 「肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた」 という描写が!

2018-10-04 23:34:48
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

この、〈『身体』あってこその『精神』〉というモチーフの反復は、〈精神〉を優位に置いて〈身体〉を劣等視する、近代西欧的な〈心身二元論〉や〈理性中心主義〉への反論として読むこともできる。つまり「走れメロス」を、近代西欧哲学を批判するテクストとして受容することだって可能なわけですよ!

2018-10-04 23:41:54
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

□まとめ 「テクスト論」は僕が勉強していた頃から、賛否両論ある考え方でした。例えば言説分析と呼ばれる批評においては、「発話者」が、いつ・どこで・どのような立ち位置から発話したのかを重視します。こうした発想を前提とするかぎり、「作者への遡行」を不可能とするテクスト論とは相性が悪い。

2018-10-05 08:14:48
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

しかしながらその言説分析も、コンテクストやコード、コノテーション等、テクスト論が見出した様々な観点を戦略的に用います。実はテクスト論は、いわゆる現代思想と呼ばれる一連の考え方に、広範な影響を及ぼしている。ここをしっかり学ぶと、他の様々な思想にアプローチしやすくなるわけですね!

2018-10-05 08:14:49
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

最後の最後に、何冊か、参考文献を紹介しておきます。僕が学部生〜修士の頃に読んだことのあるものに限りますので、古めの文献ばかりですが、そこは何卒ご了承ください。

2018-10-05 09:50:52
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

【初学者向け】 □川本茂雄『ことばとイメージ』(岩波新書) □池上嘉彦『記号論への招待』(岩波新書) 初学者向けとは言っても内容が内容なだけに「かんた〜ん♬」とは言えないですが、頑張れば高校生にも読めるはず。もしこれらがよく理解できなかったら、もう一度この連ツイを熟読してみてください。

2018-10-05 09:50:53
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

【中級者向け】 □丸山圭三郎『言葉と無意識』 □丸山圭三郎『ソシュールを読む』(岩波書店) □丸山圭三郎『ソシュールの思想』(岩波書店) □大橋洋一『新文学入門』(岩波書店) □テリー・イーグルトン『文学とは何か』(岩波書店) □土田知則『間テクスト性の戦略』(夏目書房) 学部の二、三年から。

2018-10-05 10:06:14
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

【上級者向け】 □ロバート・スコールズ『記号論のたのしみ』(岩波書店) □ロラン・バルト『物語の構造分析』(みすず書房) □ジョナサン・カラー『ディコンストラクションⅠⅡ』(岩波書店) □Y.トゥイニャーニョフ『詩的言語とは何か』(せりか書房) □M.リファテール『詩の記号論』(勁草書房) ガチ。

2018-10-05 10:06:15
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

それでは皆様、ほ〜んとーーに長々とすみませんでした💦 お付き合いくださった方々、ありがとうございます😊 「うぜーよ💢」と思われた方々、ごめんなちゃい。しばらくは平常運転に戻りますので、何卒ご容赦ください。 では!

2018-10-05 10:08:58
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