エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その23~

ハッシュタグは「#えるどれ」 バンダは拗ねているがそれはそうとして八つ当たりはする。
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帽子男 @alkali_acid

風と星の神々は瞋恚を漲らせたが、目の前にいる魔人が粗暴なばかりか毒蛇のような舌を持つのを察すると、醜い言い争いを避けた。

2020-03-04 23:08:26
帽子男 @alkali_acid

"それでは駆け比べは、影の国の勝ち" 「競馬は小手調べ。真のもののふならば騎射こそ大事。次の勝負を制したものが真の勝者。的を!」

2020-03-04 23:11:00
帽子男 @alkali_acid

星の女神の求めに、妖精王は首にかけた碧玉を握り、静かに祈った。 魔人の獰悪に戦いていた泉と樹と山のうち、樹が鎮まると、白い枝を揺すらせ、あまたの白銀の花を咲かせ、散った後に黄金の果をならす。

2020-03-04 23:12:58
帽子男 @alkali_acid

星の女神は宣告する。 「馬上より白の木の金の果を、より少ない矢でより多く射落した方が勝ちとする」

2020-03-04 23:14:34
帽子男 @alkali_acid

"合意と見てよろしいですね" 狩の男神ヌンノスは神弓をとり、神馬にまたがる。すでに折られた指は癒えている。一敗地に塗れても心は波立たず、双眸は冷たく澄む。 「次は私が先手をとる」

2020-03-04 23:16:29
帽子男 @alkali_acid

バンダは熾火の側によると、首に手をまわしてもたれ、うっそり答える。 「よかろう」

2020-03-04 23:17:45
帽子男 @alkali_acid

ドリンダもまた乱れた情を抑え、滑らかな足運びで背をいささかも揺らさず、ゆるやかに白の木の周囲を巡る。ヌンノスは同じ木の枝から作られた弓に矢を番え、よく狙って引き絞ると、放つ。

2020-03-04 23:19:59
帽子男 @alkali_acid

風鷲の矢羽を持つ箭(や)は大気を引き裂きながら唸りを上げて飛び、まず一つの金の果を貫くと、虚空で弧を描いて戻り、次の果を射抜く。さらに地に落ちぬまま次の果を。すべての的を捉えるまで幾度も幾度も鳥のように木に戻ては、嘴のかわりに鏃をもって餌食をついばむ。

2020-03-04 23:22:36
帽子男 @alkali_acid

狩の男神の絶技は、一矢をもって百果を余さず得た。

2020-03-04 23:23:33
帽子男 @alkali_acid

星の女神は莞爾として述べた。 「勝負あった」 さすがに闇の軍勢は声もなく、光の軍勢は箙を叩いてはやす。

2020-03-04 23:24:20
帽子男 @alkali_acid

宵闇のもとで妖精王は絶句し、小人匠は顔をしかめた。太腕の中で赤ん坊が寝息を立てる。 「…俺の番だな」 老魔人が呻くように尋ねる。

2020-03-04 23:25:48
帽子男 @alkali_acid

アルウェーヌははっとして、ドレアムの顔を持つ見知らぬ男に呼びかける。 「弓を!ランスローを。あなたなら同じことが…」 「中立を保て。妖精王」 バンダは述べてから、じろりとまた滑車つきの妖弓を眺める。 「そいつは俺が嫌いだ。俺もそいつは好かん」

2020-03-04 23:27:19
帽子男 @alkali_acid

黒の乗り手は何も持たず、空しげな雄馬にまたがった。そうして首のあたりを軽く叩きながらぽつりと述べる。 「…最後に一度、お前の脚を見せてみろ」 さして優しげでもない口調だがったが、熾火は瞬きし、地を掻いた。

2020-03-04 23:29:12
帽子男 @alkali_acid

しかして神馬をして顔色なからしめるほどの速さで馳せた。 疾駆ではなく並足で。 それほどの捷(はや)さだった。狩人は嵐のように揺すれる。 騎射にはまるで向かぬ駿足。

2020-03-04 23:31:20
帽子男 @alkali_acid

だがバンダはまた嗤い、馬上で腕を水平に保ち、弓を引いた。 あるはずもない弓を。 あるはずもない矢を番え、 あるはずもない弦を引き絞り、 放った。

2020-03-04 23:32:33
帽子男 @alkali_acid

黒の乗り手に相対した白の大樹、木の女王は、身もだえするように丸みを帯びた幹となよやな枝を揺すり、新たに実らせたばかりの金の果を振るい落とした。 ことごとく。一つも余さず。

2020-03-04 23:34:03
帽子男 @alkali_acid

魔人は零矢をもって全果を得た。

2020-03-04 23:34:33
帽子男 @alkali_acid

「貴様の技は弓にあらず…詐術にて裁きを逃れるは許さぬ!」 ついに精霊の猟人は怒りを抑えきれず、騎獣を巡らせ、剛弓に無数の矢を同時に番えて放つ。 だが闇の男王は嘲り、反逆の精霊が育てた焔の鬣の馬を駆って突進すると、飛来する矢を掴み取り、打ち払い、歯で噛み取り、投げ返し撃ち落とす。

2020-03-04 23:38:36
帽子男 @alkali_acid

二頭の馬がすれ違うと、まず熾火がゆっくり足を止めた。バンダは拳を開き、掌を振るう。 ヌンノスは痙攣し、ゆっくりとドリンダから滑り落ちた。喉には矢が生えている。ただし、鏃は外に出て、矢羽の側が突き込んであった。 肉の器は崩れ落ち、霊気は叫びを上げながら天へ昇ってゆく。

2020-03-04 23:42:08
帽子男 @alkali_acid

黒の乗り手は、残る三柱の光の諸王に尋ねる。 「続けるか?」 霧の衣をまとう死の男神が掌を突き出し、答える。 「ヌンノスはもはや戦わぬ。この勝負は影の国に譲る」

2020-03-04 23:43:43
帽子男 @alkali_acid

バンダはつまらなそうに熾火から降りた。 ヌンノスの魂が逃れ去り、あとは崩れ落ちるばかりの体に、ドリンダはうなだれてから、馬首を返した。 「なぜ…情けをかけた」 「殺すほどの価値もない」

2020-03-04 23:45:46
帽子男 @alkali_acid

神馬の女王は打ち震えた。 「…卑怯もの」 そうして駆け去っていった。

2020-03-04 23:46:43
帽子男 @alkali_acid

邪悪の化身は首を回すと、また西の果ての善き神々を振り返る。 「次は誰だ。続けて俺が相手をしてや…ずるいよ父さん。僕が遊べないじゃないか」

2020-03-04 23:48:42
帽子男 @alkali_acid

魔人は賽子を二つ出して、拳に握り、掌を開く。 一の目が二つ。 不吉の極み。 「おや…二だ。僕の番だね」 白々しく笑いながら、黒の癒し手は問いかける。 「さあ…誰が挑んでくるのかな。できれば男神がいいな。女神をいたぶるのは好きじゃない」

2020-03-04 23:50:37
帽子男 @alkali_acid

星の女神が、戦意に満ちた光輝を増すが、精霊の王、風の男神スーリスが正視、進み出る。 「私が挑む。種目は…魔法」 「光の諸王の王が魔法で競って下さるとは…光栄だ」

2020-03-04 23:53:19
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