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"それでは駆け比べは、影の国の勝ち" 「競馬は小手調べ。真のもののふならば騎射こそ大事。次の勝負を制したものが真の勝者。的を!」
2020-03-04 23:11:00![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
星の女神の求めに、妖精王は首にかけた碧玉を握り、静かに祈った。 魔人の獰悪に戦いていた泉と樹と山のうち、樹が鎮まると、白い枝を揺すらせ、あまたの白銀の花を咲かせ、散った後に黄金の果をならす。
2020-03-04 23:12:58![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
"合意と見てよろしいですね" 狩の男神ヌンノスは神弓をとり、神馬にまたがる。すでに折られた指は癒えている。一敗地に塗れても心は波立たず、双眸は冷たく澄む。 「次は私が先手をとる」
2020-03-04 23:16:29![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ドリンダもまた乱れた情を抑え、滑らかな足運びで背をいささかも揺らさず、ゆるやかに白の木の周囲を巡る。ヌンノスは同じ木の枝から作られた弓に矢を番え、よく狙って引き絞ると、放つ。
2020-03-04 23:19:59![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
風鷲の矢羽を持つ箭(や)は大気を引き裂きながら唸りを上げて飛び、まず一つの金の果を貫くと、虚空で弧を描いて戻り、次の果を射抜く。さらに地に落ちぬまま次の果を。すべての的を捉えるまで幾度も幾度も鳥のように木に戻ては、嘴のかわりに鏃をもって餌食をついばむ。
2020-03-04 23:22:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
宵闇のもとで妖精王は絶句し、小人匠は顔をしかめた。太腕の中で赤ん坊が寝息を立てる。 「…俺の番だな」 老魔人が呻くように尋ねる。
2020-03-04 23:25:48![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
アルウェーヌははっとして、ドレアムの顔を持つ見知らぬ男に呼びかける。 「弓を!ランスローを。あなたなら同じことが…」 「中立を保て。妖精王」 バンダは述べてから、じろりとまた滑車つきの妖弓を眺める。 「そいつは俺が嫌いだ。俺もそいつは好かん」
2020-03-04 23:27:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒の乗り手は何も持たず、空しげな雄馬にまたがった。そうして首のあたりを軽く叩きながらぽつりと述べる。 「…最後に一度、お前の脚を見せてみろ」 さして優しげでもない口調だがったが、熾火は瞬きし、地を掻いた。
2020-03-04 23:29:12![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかして神馬をして顔色なからしめるほどの速さで馳せた。 疾駆ではなく並足で。 それほどの捷(はや)さだった。狩人は嵐のように揺すれる。 騎射にはまるで向かぬ駿足。
2020-03-04 23:31:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
だがバンダはまた嗤い、馬上で腕を水平に保ち、弓を引いた。 あるはずもない弓を。 あるはずもない矢を番え、 あるはずもない弦を引き絞り、 放った。
2020-03-04 23:32:33![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒の乗り手に相対した白の大樹、木の女王は、身もだえするように丸みを帯びた幹となよやな枝を揺すり、新たに実らせたばかりの金の果を振るい落とした。 ことごとく。一つも余さず。
2020-03-04 23:34:03![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「貴様の技は弓にあらず…詐術にて裁きを逃れるは許さぬ!」 ついに精霊の猟人は怒りを抑えきれず、騎獣を巡らせ、剛弓に無数の矢を同時に番えて放つ。 だが闇の男王は嘲り、反逆の精霊が育てた焔の鬣の馬を駆って突進すると、飛来する矢を掴み取り、打ち払い、歯で噛み取り、投げ返し撃ち落とす。
2020-03-04 23:38:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
二頭の馬がすれ違うと、まず熾火がゆっくり足を止めた。バンダは拳を開き、掌を振るう。 ヌンノスは痙攣し、ゆっくりとドリンダから滑り落ちた。喉には矢が生えている。ただし、鏃は外に出て、矢羽の側が突き込んであった。 肉の器は崩れ落ち、霊気は叫びを上げながら天へ昇ってゆく。
2020-03-04 23:42:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒の乗り手は、残る三柱の光の諸王に尋ねる。 「続けるか?」 霧の衣をまとう死の男神が掌を突き出し、答える。 「ヌンノスはもはや戦わぬ。この勝負は影の国に譲る」
2020-03-04 23:43:43![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
バンダはつまらなそうに熾火から降りた。 ヌンノスの魂が逃れ去り、あとは崩れ落ちるばかりの体に、ドリンダはうなだれてから、馬首を返した。 「なぜ…情けをかけた」 「殺すほどの価値もない」
2020-03-04 23:45:46![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
邪悪の化身は首を回すと、また西の果ての善き神々を振り返る。 「次は誰だ。続けて俺が相手をしてや…ずるいよ父さん。僕が遊べないじゃないか」
2020-03-04 23:48:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
魔人は賽子を二つ出して、拳に握り、掌を開く。 一の目が二つ。 不吉の極み。 「おや…二だ。僕の番だね」 白々しく笑いながら、黒の癒し手は問いかける。 「さあ…誰が挑んでくるのかな。できれば男神がいいな。女神をいたぶるのは好きじゃない」
2020-03-04 23:50:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
星の女神が、戦意に満ちた光輝を増すが、精霊の王、風の男神スーリスが正視、進み出る。 「私が挑む。種目は…魔法」 「光の諸王の王が魔法で競って下さるとは…光栄だ」
2020-03-04 23:53:19