哲学院生のアライさんによる権利・社会契約・法の哲学話

哲学院生のアライさんによる哲学話 - Togetter https://togetter.com/li/1416702 からの抜粋なのだ!
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑤【私的所有権】 ロック曰く、神は人間以外の被造物を「人類の共有物」として人間に与えたのだ。そのため、なんでも共有物のはずだけど、自分の身体と身体のなす労働は身体所有権の範囲内なので排他的なのだ。同時に、その労働によって共有物から私的なものを作り出すことで所有権を獲得できるのだ。 pic.twitter.com/oRtqgxSwhd

2020-03-27 18:24:47
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⑥【労働】 労働が所有権の基礎となる理由は次の三つなのだ。 ⑴労働によって(耕した土地は)所有権が神から与えられるから ⑵労働の成果は労働の報酬として認められるし、労働なしに他人の所有物を奪うのは権利侵害であるから ⑶労働によって人類全体の財を増やしている(=価値の創造)からなのだ。

2020-03-27 18:24:47
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⑦【ノージックの批判】 ちなみにノージックは「トマトジュースを海に注いだら海を所有したことになるのか」といった趣旨の問題提起でロックを批判しているけれど、トマトジュースを海に混ぜても価値の創造に寄与しないのでこの批判は的外れらしいのだ。

2020-03-27 18:24:48
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⑧【私的所有権の条件】 このロックの私的所有論には二つ条件があるのだ。 ⑴自分で使い切れないものは他人の分け前なので、保有しすぎて腐敗させてはいけない(腐敗禁止の条件) ⑵他人に十分なものが残されている限りで、労働によって所有したもの(土地や水)は自分のものとなる(十分制条件)

2020-03-27 18:24:48
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⑨【条件2】 さらに、実は他者が困窮に陥っている場合は、裕福な人が援助しなければならない、とロックは述べているのだ。さらに商人が買い手を破滅させること(ex.飢饉の際の便乗値上げ)を批判し、富裕な者には、困窮者の救済や他者の最低限の生活水準の維持に対する義務があると主張したのだ。 pic.twitter.com/oehhl7H0uC

2020-03-27 18:24:49
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⑩【自然状態と社会契約論】 自然状態でも自然法による自由と平等が確保されているけど、警察も裁判官もいないので人間の生命・自由・財産の保存が保障されないのだ。そのため、(神ではなく)人間たちが生命・自由・財産の保存のためだけに「統治」を形成するのだ。

2020-03-27 18:24:49
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⑪【同意と社会】 「統治」を形成する前に、人間は「同意」によって「社会」を形成するのだ。この「同意」で人間は持っていた自然権のうち、 ⑴自己・他者の保存のために何でもできる権利(ただし、本人と社会の保存に必要な限りだけ) ⑵自然法に背いた犯罪者を処罰する権利 を放棄するのだ。 pic.twitter.com/Y7sgb1ndIY

2020-03-27 18:24:50
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⑫【同意と社会2】 とはいえこれらの放棄された権利は喪失されておらず、社会における「多数者」に与えられているのだ。さらに、人間は社会(の多数者の決定)に服従する義務を負うのだ。同意は「明示の同意」(宣言・文書)のほかに「暗黙の同意」(異議の不在・居住の事実)によってなされるのだ。

2020-03-27 18:24:51
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑬【信託と統治】 この同意で「社会」ができると、今度は社会の多数者が、集めた権利を個人か集団に「信託」し、立法部・執行権を設立することで「統治」を形成するのだ。立法部の法は自然状態の是正のためだけのもので、信託にはすべての人民の生命・自由・財産の保存という条件が伴うのだ。 pic.twitter.com/9sBuX5l5cE

2020-03-27 18:24:51
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⑭【社会・統治】 この<社会・統治の二段構え>はとても重要なのだ。社会に入るための多数者の服従の義務に関する同意も、あくまで社会に対するもので、統治に対する服従は間接的なものなのだ。なので、もし統治が人民の生命・自由・財産を侵害しているなら統治を解体してやり直すことができるのだ。

2020-03-27 18:24:52
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⑮【革命権】 ロックの言う革命権には、「統治の解体」が「社会の解体」ではないという前提があるのだ。君主による立法部の勝手な改変や、立法部や君主による人民の生産・自由・財産の侵害が発生し、統治が信託に背いている場合は、統治と人民は戦争状態に入るのだ。 pic.twitter.com/PAc0Da618T

2020-03-27 18:24:53
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑯【革命権2】 この場合、人民は武力を持って統治を解体するのだ。ただし、統治が解体されても社会は解体されない以上、まだ社会の多数者への服従義務が残っているで、人間は「同意」に拘束されたままなのだ。そのため、まだ持続している社会から、新たな統治を形成することが可能となるのだ。

2020-03-27 18:24:53
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑰【まとめ】 ロックは、身体所有権から労働を媒介とした私的所有権を主張したのだ。さらに社会と統治を区別し、統治だけを解体し、再形成する革命権を含めた社会契約論を展開したのだ。以上、アメリカ独立革命やフランス革命、日本国憲法に影響を与えたロックの重要な権利論だったのだ!

2020-03-27 18:24:54
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

哲学話㊲【ロックの権利論とは?】を追加したのだ! 哲学院生のアライさんによる哲学話 - Togetter togetter.com/li/1416702 @togetter_jpさんから

2020-03-28 10:49:13
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

哲学話㊳  ①【ルソーの権利論とは?】 今回は、ルソーの権利論について整理した論稿を紹介するのだ!自然状態や人間本性、自然法の議論や、社会契約論における人民主権、そして代議制の批判などを整理しつつ、ルソーに対する批判も少し触れているのだ! pic.twitter.com/m9vJVTqR1v

2020-03-28 14:52:43
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

②【文献・目次】 吉田修馬「ルソーの権利論」、『権利の哲学入門』、社会評論社、2017年、86-102頁 amazon.co.jp/dp/4784515585/… ③―⑤自然状態 ⑥―⑫社会契約論 ⑬―㉑人民主権と市民 ㉒―㉔ルソー批判 <略称> ・ルソー(R) ・『人間不平等起源論』(『不平等論』)

2020-03-28 14:52:44
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③【自然状態】 Rは『不平等論』で、人間本性の誤解によって自然法の議論が混乱していると考え、自然状態から人間本性を解明しようとするのだ。自然状態では理性以前の自己愛や憐れみ、動物にない自由を人間が持ち、自足が成立しているので個体差による不平等の影響はほぼ皆無なのだ。 pic.twitter.com/m6qs2VS7zG

2020-03-28 14:52:44
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

④【不平等】 でも実際は技術の発展や精神の発達、農耕と耕作による所有権の成立が生じると、収穫差による不平等や貧富による対立、支配服従の関係が発生し、戦争状態に陥るのだ。戦争状態は自然状態から離れることで生じる点がホッブズと、所有権は自然権ではない点がロックと異なるのだ。

2020-03-28 14:52:45
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⑤【政府・奴隷】 でも富者は戦争状態を自分たちに有利な法によって解決するのだ。そして富者は為政者となり、政府を形成して奴隷を作り出し不平等を発生させるのだ。でも、自然法で自由と平等は守られている以上、これは許されないのだ。よりましな社会の作り方は『社会契約論』で述べられるのだ。

2020-03-28 14:52:45
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⑥【権利の誤解】 『社会契約論』によると、人間は生まれながらにして自由であるため、自由の譲渡・放棄はできないし、他人を服従させることもできないのだ。そのため、⑴「父親に服従する義務」は子どもが自立したら認められないし、⑵「奴隷の本性」も暴力によって作られる以上認められないのだ。 pic.twitter.com/tSdYhHZS1v

2020-03-28 14:52:46
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑦【誤解2】 また、強者への服従はやむを得ないからであるため、⑶「強者の権利」はそもそも権利ではないのだ。戦争の勝者に敗者を殺す権利がある+敗者は奴隷となり自由と生命を交換できるという⑷「勝者の権利」も、自由の譲渡が不可能であること等から否定されるのだ。⑸征服の権利も同様なのだ。

2020-03-28 14:52:46
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑧【誤解3】 よって、以上の義務や本性は認められないし、3つの権利は権利ですらないのだ。支配・権威をつくるのは権利や自然法ではなく「約束」にすぎないのだ。権利は全体の利益ではなく、生得的な人間本性から説明され、物理的な力によっては生み出されえないことが説明されているのだ。

2020-03-28 14:52:47
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑨【全面譲渡】 いろいろあって自然状態から社会契約に移行する際、各人は権利の全面譲渡をするのだ。でもこれは各人が「誰か」に譲渡し服従するのではなく、「共同体」に権利を譲渡して「結合」を保護するだけなので、各人は「自由」なままなのだ。これで全ての市民に同様の権利と義務を与えるのだ。

2020-03-28 14:52:47
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑩【社会契約】 自然状態の場合、人間は無制約な自由や暴力の自由を持っていたけど、社会契約後は一般意志に基づく「社会的自由」や「所有権」、「道徳的自由」を手にするのだ。これによって不安定な状態から、自由や安全が確保された状態に至るのだ。

2020-03-28 14:52:47
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑪【共同体の権力】 さて、ここで生じる共同体の「権力」に対しては権力分立論などでも議論されているけど、Rはあくまで「人民主権」にこだわるのだ。社会契約が君主と人民の契約ではなく、市民相互の契約であることを説明するためにルソーは団体や成員に様々な呼び方を与えるのだ。 pic.twitter.com/CIy1u4bQzj

2020-03-28 14:52:48
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