北野勇作さんの【ほぼ百字小説】その3

北野勇作 『100文字ＳＦ』発売中！ @yuusakukitano

さらに、【英語で『100文字ねこ』】という発展もあり。あ、なんかめっちゃ売れそうな気がする。早川がやってくれなくても、どっかがやってくれるんじゃないか。

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【ほぼ百字小説】（２９８６）　たんっ、とアスファルトを蹴って猫が跳ねた。たまに見かける猫。びっくりさせたかな、とすこし申し訳なく思った背後で、たんっ。別の猫が跳ねてさっきの猫の後を追っていった。なんだ、人間なんか眼中になかったか。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９８７）　実話怪談を仕入れるために話を聞きに来たのだが、ちょっと信じられないくらい話が下手な人で、まるで怖くないどころか、どこが怪談なのかすらよくわからない。それがいちばん怖い、とかそんなオチではないだろうな。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９８８）　電車の窓の下に川が見える。岸のそばに大きい楕円形の茶色い岩があって、亀に似ている、と思ったすぐあとで、電車がこの鉄橋を渡るたびいつもあの岩を見ていつもそう思うことを思い出すのは、夢に似ている、と思う。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９８９）　以前は川だったであろう道を今夜も走る。このところ毎晩走っているが、今夜は途中にある駐車場の照明の色が違う。青色のＬＥＤだ。水の中のように青い。この道が川だったことを意識している誰かが他にもいるようだ。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９０）　いつも通っている道なのに景色が違う。ここにあった坂がない。登り坂だったはずが、なぜか平らなのだ。いったいどこへ消えたのか。あのね、脳味噌の皺が無くなっちゃってるんですよねえ。画像を見ながら医師が言う。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９１）　死んでしまった友達のことを話す座談会に共通の友達が集まって、そこで話すことはといえば楽しかったアホな話ばかりで、その座談会の写真を見るとやっぱりみんな楽しそうに笑っていて、なんだか遺影みたいだと思う。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９２）　いつもの連中といつもの話をしていて、こうして読み返してもあの場にあの人がいないのが不思議なくらいだが、なにしろあの人を追悼する座談会なのだからいるはずもなく、でもやっぱりいた気がするからいたんだろう。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９３）　更地になるまで三角形の土地だと気づかなかったのだが、今見ると、これまで気づかなかったことが不思議。その頂点に猫がいる。ひとつの頂点に一匹、三匹がちょこんと座っている。これまでもそうしていたのだろうか。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９４）　池の水をぜんぶ抜きかけたらあんなものが出現してしまったから、あわてて水を入れ、関係者に口止めはしたが、なぜぜんぶ抜かなかったのか、という抗議の声も大きくなっていて、その声の中にもなんだか怪しいものが。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９５）　昔、会社の寮のあった場所。その近くの図書館のイベントで、短い小説の書きかた、みたいな話をした。昔、会社の寮にいた頃、休日にはこのあたりの喫茶店で小説を書いたりもしてたなあ。今、会社の寮はどこにもない。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９６）　お待たせしましたファクトチェックの時間です。私は公式ファクトチェッカー。ああ、これはデマじゃなくてファクトだな。まあそんなのどうでもいい。大事なのは、これがファクトチェックされた、というファクトです。 ＃マイクロノベル

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これまでの朗読動画をまとめました。 100文字ＳＦ朗読動画｜北野勇作 @yuusakukitano #note note.com/yuusakukitano/… #マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９７）　道端に大きな亀がいるが、その甲羅には六角形も五角形もなく、碁盤の目のようになっている。子供が描いた亀みたい。狸だな。うどんに入れようと買ってきた油揚げをあげた。油揚げなら狐だが、たぶん狸も食うだろう。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９８）　本日は息を必要とする楽器がいつもより多いので、いつもより多めにヒトは再生してもらえます、と聞いて喜んでいるヒトも多いと思いますが、息ができれば誰でもいいわけではなく楽器を操作する能力が肝心ですからね。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（２９９９）　ひとつずつ部品が送られてくる。順に組み立てれば完成だが、途中で興味を無くしてしまったり、それまで作った部分を無くしてしまったりで、なかなか完成には至らない。まあ完成したところで最後は灰になるだけだが。 ＃マイクロノベル

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【ほぼ百字小説】（３０００）　夜明け前、巨大な影が上空を通過していく。鳥ではないが、材料として鳥が使われてはいる。政府によると、それが監視を行っているので善良な国民は安心して眠ることができる。三千世界の烏の脳が使われているという。 ＃マイクロノベル

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さて、あと３３３で三分の一、というところかな。わからんけど。