笹山直規さんの個展「Still Life」の感想

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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

ずいぶん前になりますが、そしてもうあの頃からずいぶんと情勢も変わりましたが、笹山直規さんの個展にお邪魔しました。 pic.twitter.com/GPSwn9OsSJ

2020-04-20 21:20:42
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

今回はステートメントの英訳をお手伝いさせていただきました。 なぜかというと、笹山さんには長いこと精神的にお世話になっており、毎度の年末年始の年賀状企画にも律儀にお誘いをいただいており、恩を返したくくて。

2020-04-20 21:23:44
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

英語に訳すために、わからないニュアンスを質問したり、笹山さんが語る文脈を自分なりにがんばって理解しようと、いろいろ調べて翻訳に臨みました。 目的の達成は、展示にきた外国の方が笹山さんの絵を理解する手助けをすることです。

2020-04-20 21:26:22
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

笹山さんの主張を要約すれば、 1.西洋の絵画は「静的な」画面を美的に構築することを目指す 2. しかし、日本の絵画はアニメートされた「動的な」画面を構築しようとする 3.具体的には河鍋暁斎などの画面

2020-04-20 21:30:25
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

4. また、九相図という、美女が死体へと変化する「状態変化」を描くジャンルもある。これは美の様態変化を描写するという点で「動的」といえる。

2020-04-20 21:33:28
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

5. 一方、西洋の美術では伝統的にどう死を描くかというと、ヴァニタス絵画のように頭蓋骨や砂時計を置いて象徴的に描く。これらは静物であるという点で、「静的な」死の描き方である。 河鍋暁斎の描いたトカゲのような描き方とは異なる。

2020-04-20 21:37:41
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

6. そこで、西洋の美術に接続するために笹山さんは、「死体」を静物画としてプレゼンテーションしたいと思う。つまり、生きた人体はふつう「静物」ではないが、死んだ人体がポーズをとったものを「静物」として描くという。

2020-04-20 21:41:40
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

笹山さんは日頃、水彩画をメインに使っている(今回の古典では木版画もあった)。 このメディアの特色は何かというと、笹山さんの絵を見る限り「紙の白」である。かたわらにころがったメスや、背骨の白さがとても美しいのである。いい紙を使っているのでしょう。 pic.twitter.com/WfZDSpcfgG

2020-04-20 21:47:05
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

この台のグリーンも、水色と緑色のあいだの微妙な色合いで、濁ってなく美しい。 その美しさは、ころがっている医療器具のグレーとの彩度対比(鈍い色と鮮やかな色の対比)で強調されている。

2020-04-20 21:51:08
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

同様に、剥き出しになった内臓の赤さもやはり美しい。「死体の内臓は本当にこんなに美しいのだろうか?」「こんなに美しいグリーンの解剖台があるのだろうか?」

2020-04-20 21:52:40
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

内臓の赤さと、解剖台のグリーンは、色相対比によってより一層お互いを鮮やかに見せている。肉がフレッシュな赤色に見える。

2020-04-20 21:53:50
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

また、肉の赤色と解剖台のグリーンの補色対比に挟まれて、皮膚の下の脂肪を表す黄色も妙に鮮やかである。色相の対比としてはこのように90度の関係になっており、意図としては「色彩を明瞭に分割し、鮮やかさを強調する」組み合わせである。 pic.twitter.com/j6mXFYkgoP

2020-04-20 21:57:45
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

ここから逆に考えれば、笹山さんの絵はけして写実的な写真の再現などではなく、構図も色彩も美的にかなり補正されたバーチャルな死体画であることがわかるし、笹山さんの「美」を尊ぶ日頃の言動とも一致している。

2020-04-20 21:59:32
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

このように、絵具と色の扱いをいちど眺めた上で、もう一度「白の美しさ」に注目すると、笹山さんの人体は肌が異常に「白い」ことがわかる。

2020-04-20 22:03:47
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

たとえば、この肌のハイライトだが、真っ白である。 pic.twitter.com/4jQ7VU7f4I

2020-04-20 22:07:09
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

先ほどの「メス」やこの肌の「ハイライト」は、端的に言えば「無」なわけだ。 それではわれわれはこの白い部分に何を見ているのか?というと、おそらく支持体の「紙」である。(地塗りがされてたり、白い絵具が置かれてるかもしれないけど)

2020-04-20 22:09:01
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

この「白の美」が100%紙だとしたら、そこに薄く絵具が乗った肌色の部分は、90%紙、ぐらいである。つまり、このハイライトやメスの白さを介して、われわれは支持体やそこに乗った絵具の発色やテクスチャーなどの物質的な美しさを見せられている。そのように誘導されているのではないか?

2020-04-20 22:12:14
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「死体画を見ている」から、「薄く絵具の乗った白い紙を見ている」という気持ちになった。それが会場での感想です。

2020-04-20 22:13:13