剣と魔法の世界にある学園都市でロリが大冒険するやつ4(#えるどれ)

今でも極制服がスケベなデザインになる理由がよく解ってない。
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21944 pv 167 2 users

前回の話

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 上から下へ。 どこまでも続く吹き抜けの空洞。周囲をまるで銃の線条(ライフリング)のように螺旋階段が取り巻いている。 階段の外側の湾曲した外壁にはことごとく書架で埋め尽くしてある。並んでいるのは巻物や綴本。石板や縄の結び目。ありとあらゆる形式の典籍。

2020-04-27 21:42:43
帽子男 @alkali_acid

禁書図書館。 学問の都にある古典の府の隠れた心臓部。 あらゆる旧時代の知識を収めた秘密の庫。 外から紛れ込んだ妖精の乙女は、館守である人間の婦人に問う。 「御本を一冊拝見してもよろしいでしょうか?」 「どうぞ」

2020-04-27 21:44:32
帽子男 @alkali_acid

尖り耳の客は革の装丁を開き、乾いた紙をぱらぱらとめくらせる。 内容は小説だ。作中では登場人物がちょうど、架空の冒険譚を読んでいる。 不思議なものだ。物語の登場人物も物語を読むのだ。 さてこの物語は、エルフの女奴隷が解放されて騎士となり復讐を成し遂げるまでの幻想奇譚 略して #えるどれ

2020-04-27 21:48:53
帽子男 @alkali_acid

すべての頁(ページ)をわずか数瞬のうちに読み終えると、妖精の騎士ダリューテはまた本を棚に戻した。 「いかがですか?」 人間の教授リンディーレが問うと、淡々と返事がある。 「大変面白い御本でした。もう一冊拝見してもよいでしょうか?」 「ええどうぞ」

2020-04-27 21:51:14
帽子男 @alkali_acid

一冊また一巻とダリューテは禁書図書館の蔵書をとってはめくり、またあった場所に返す。形状が異なるばかりではない。科学、歴史、芸術、哲学、教理、ありとあらゆる分野の、ありとあらゆる言語で書かれた文章が雑多に並べてあるのだ。 「いくつかは…"財団"にもある本ですね」

2020-04-27 21:54:07
帽子男 @alkali_acid

「そういう本もあります」 「ですが書かれていることが少しずつ違う」 「版の新旧、写字生の手違い、改竄」 「…突然知らない言葉が混じるのも?」 「乱丁、落丁」 「本来の論旨がねじまがり、ありえない結論を導くものもありました」 「悪質な偽物。いたずら本」

2020-04-27 21:57:03
帽子男 @alkali_acid

ダリューテはうなずく。 「何であれ。この禁書図書館にある本は、すべて偽物ですね」 「どうしてそう思います」 「一部は紙の質、装丁の質。出版の日付と一致しません」 「複製本かもしれません」 「いいえ。偽物です。内容も…かなり真に迫っているものもありますが」

2020-04-27 21:59:08
帽子男 @alkali_acid

「おおざっぱに題名からあてずっぽうで書いたものもある」 「あなたの誤解かもしれません」 「誰がこの本を書いたのですか」 「それが質問なら的を外しています」 「誰か…あるいは目的を同じくした人の集まりが、偽の本を書いたのではありませんか」 「それが質問なら、答えは、いいえ」

2020-04-27 22:01:29
帽子男 @alkali_acid

"財団"の職員は切れ長の双眸で、"学園"の職員を眺めやった。 「正しい質問とはなんでしょう」 「それが正しい質問ですね。正しい質問とは、何がこの本を書いたのか…答えは"遺物"…遺物番号三十三"打字機と三匹の猿"です」 「遺物番号三十三は"人懐こい回転鋸"ではありませんか」

2020-04-27 22:04:21
帽子男 @alkali_acid

リンディーレはかぶりを振った。 「財団は、本来収容していた"遺物"が持ち去られ、歯抜けになった後を、別の遺物で埋めたのです」 「そうだったのですね」 「財団の方針を巡って内部で対立があり、一部が離反した際に」 「分離派はこの学園にやってきたのですね」

2020-04-27 22:06:59
帽子男 @alkali_acid

「もともと学問の都…学園は財団に協力していました。世界の滅びを防ぐため、知識を求めているというのであれば、手を貸すのにやぶさかではないと。しかし分離派は財団の理想が地に落ちたと批判し、今後は交わりを断つべきだと進言した。そうしてここ、安置所十六も学園の管理に移ったのです」

2020-04-27 22:08:43
帽子男 @alkali_acid

リンディーレはそっと腕を差し伸べた。 「遺物番号三十三は最下層におります。この歩く台座でたどりつくのは時間がかかるのです。手を貸して下さる。財団の方」 「喜んで」 ダリューテはそっと血管の浮いて皺のある手を滑らかな指でとらえ、そのまま宙へと招きだすと、まっすぐ吹き抜けを降下した。

2020-04-27 22:10:31
帽子男 @alkali_acid

女達は互いに手をとりあいつつ、裳裾を抑え、風に髪をなぶらせながら落ちてゆく。 「私。ずっと妖精と一緒に空を飛ぶのが夢でした。ここは地下ですけれど…とうとう願いが叶った」 教授が述べると、秘書は目を伏せ、呪文を呟く。 二人の体が失速し、ふわりと床に降り立つ。

2020-04-27 22:12:50
帽子男 @alkali_acid

床というよりは平に均した地面だろうか。 三つの打字盤を備えた打字機が中央に置いてあって、それぞれ一匹ずつ、猿の木乃伊がとりついて叩いている。 打字機の地面に接する部分は激しく土や石を掻き起こし、内部へ取り込んでいく。そうして時々、ぽんぽんっと、書物を天辺から吐き出す。

2020-04-27 22:15:41
帽子男 @alkali_acid

本が積み重なると、木乃伊が立ち上がり、壁に向かって走ってゆき、空の本棚に並べる。 「財団が発見した時点で、すでに四万冊の偽本を、この遺物番号三十三は作り出していました」 「ずっと休まず続けているのですか」 「ええ。土や石や岩盤を取り込んでまったく別の素材の典籍を作ります」

2020-04-27 22:19:05
帽子男 @alkali_acid

「偽の本を、あなたがた学園の教授は読むのですね」 「慎重に」 リンディーレは一冊を手にとった。かなりどぎつい色本だ。挿絵が入っていて、妖精の騎士が蛮族の大男につかまり、今にも操を喪おうとしている。 「偽の本には…たいてい役に立たないか…間違ったことが書いてあります…しかし…」

2020-04-27 22:21:09
帽子男 @alkali_acid

古典の府の研究者は別の一冊を手に取る。珈琲の実の調理法という本だ。 「関連する分野の偽の本同士を突き合わせてゆくと、それぞれの嘘に矛盾する内容が見つかります。結果として、本物の内容をおぼろげながら類推できるのです」 「気の遠くなるような作業ですね」

2020-04-27 22:23:36
帽子男 @alkali_acid

「才知に長けた人物であれば、まるで本物を読んでいるようにたやすく正確な内容を取り出せます。私にはとても無理ですけれど」 「誰でしょう」 「ケロケル・ケログム博士にはできました」

2020-04-27 22:25:27
帽子男 @alkali_acid

リンディーレは螺旋階段の手すりに背を預けて、どこまでも続く吹き抜けを見上げ、点々と灯る灯の連なりを仰ぐ。 いくつもの十字の通路が虚空を横切って、吹き抜けの中央にある柱と柱を取り巻く本棚、さらに湾曲する外壁とをつないでいる。

2020-04-27 22:28:31
帽子男 @alkali_acid

「ケログム博士はお元気ですか?」 「博士は財団を退職されました」 「それは…そうするだろうとは思っていましたが。早かったこと」 「博士はここで何を研究したいたのですか」 「ケログム博士がとりわけ求めたのは、白の錬金術師の本です」 「その二つ名は博士が時々口にされていました」

2020-04-27 22:30:32
帽子男 @alkali_acid

ダリューテは緊身裙(タイトスカート)のわずかな皺を目立たぬ指の動きで直し、度の入っていない銀縁眼鏡の位置を調えると、高い靴の踵をきちんとそろえてまっすぐ相槌を打つ。

2020-04-27 22:32:23
帽子男 @alkali_acid

「白の錬金術師は伝説上の人物で、ケログム博士にとっては憧れの存在でした。秘密の学問…魔法に精通し、この世界でありとあらゆる発明を意のままにしたという。ところがこの人物が記した本も、研究していた書もすべて失われたました…はるか古の時代に」

2020-04-27 22:33:58
帽子男 @alkali_acid

古典の府の教授がちらりと視線を、また土の上で黙々と働く遺物に向ける。打字機と三匹の猿の木乃伊。 近代職業婦人のいでたちをした妖精の騎士も、注意をそちらに移した。 「偽書としてなら、この遺物が蘇らせられるというのですね」 「ええ。猿の木乃伊の一つに題名を囁くことで操作ができます」

2020-04-27 22:36:54
帽子男 @alkali_acid

「かつてこの世界に存在した本、これから存在する本…あるいは存在しえたかもしれない本であれば、打字機は偽書を作り上げます」 「内容はあてにならない」 「それでも手掛かりにはなります。そうやってケログム博士は、白の錬金術師の研究を復元した」 「一人で?」 「…いいえ。私が手伝いました」

2020-04-27 22:38:58
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