剣と魔法の世界にある学園都市でロリが大冒険するやつ4（#えるどれ）

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 一方その頃、古典の府の地下深くにある禁書博物館で、数万冊の偽書を読破した妖精の騎士は、緊身裙（タイトスカート）に度の入っていない銀縁眼鏡という近代風の恰好で、もう何度も目を通している一冊の騎士物語（ロマンス）に再び向き合っていた。不機嫌そうに。

帽子男 @alkali_acid

「何なのですこの女は」 作中の登場人物への嫌悪を口にしながらも、黒き獣に関する重要な手がかりがあるという直観からつい繰り返し内容を追ってしまう。 「何と軽薄で浅慮な…王の妃の身で…王の子飼いの騎士と…恋に？」

帽子男 @alkali_acid

みずからも武勇に長けた妃騎士は、王の盾とも剣とも言われる黒騎士とはじめは対立するが、森で狩りをする間に魔法の土地へともに迷い込み、男女が愛を交わさねば出られないという呪いにかかる。 「男を脅して、その辺の野の獣の雌とでも番わせればよいでしょう」

帽子男 @alkali_acid

あれだけ妃騎士につれなくしていたはずの黒騎士が最後には求愛し（馬鹿馬鹿しい）妃騎士は拒みきれず狼藉を許し（荒唐無稽）、床模様が異様に詳しく記述してある。明らかにわいせつな挿絵まで入っている。 「…遺物がこしらえる偽書らしい」

帽子男 @alkali_acid

宮廷に戻ってから深く己の行いを恥じた黒騎士は宮廷を出てゆくが（逃げるぐらいなら自害すればいい）妃騎士は引き留めず（弓で射殺せばいい）沈んだ日々を過ごす。 だがやがて恋の苦しみに耐えられなかった黒騎士は舞い戻り、妃騎士を待ち伏せ、一騎打ちで打ち負かしてまたしても狼藉を犯すと

帽子男 @alkali_acid

縛り上げて馬の後ろにのせて逃れる。王の騎士の追跡をかわし、秘密の塔に隠れ、妃を説得する。王を捨て己の妻になるならすべてを与えると。 「なぜこんな暴漢のために地位や名誉を捨てると思うのか？この本の作者の頭はどうなっているのでしょう」

帽子男 @alkali_acid

そもそもどうして武勇に長けた妃騎士が黒騎士に敗れるのか。そのこところもはっきりしない。 妃騎士ががんとして拒むと、黒騎士は怒り狂い、追って来た王の九人の騎士を順に殺すと宣告する。最後には王も殺すと。

帽子男 @alkali_acid

妃騎士は黒騎士の強さを知るため、夫と家臣の命の為にかりそめに悪党の妻になることを受け入れる。 二人は塔で暮らす。意味もなく首に鎖をつけられた妃騎士と先端を手に持つ黒騎士の挿絵などもある。 「低劣…あげく…」

帽子男 @alkali_acid

妃騎士は最後は黒騎士の逞しい強さに屈し、夫と妻というより主人と奴隷のような関係を受け入れてしまい永遠の愛を誓うのだ。最後の頁は影が光を抱き寄せ覆いかぶさるようにしている絵面でめでたしめでたしと結んでいる。 「…こんなものが古典の府の秘密だというのですか…」

帽子男 @alkali_acid

指で影の輪郭をなぞりながら、ダリューテはぶつぶつと独り言ちる。 「何の役にも…せめて続編を…そう…」 本を抱えてダリューテは吹き抜け状になった図書館の最下層へとまた降る。 館内にあって偽書を無限に増やす遺物に働きかければ、続編を書かせることも可能なはずだ。

帽子男 @alkali_acid

「黒き獣の手がかりをつかむため…仕方ありません」 黒騎士を受け入れた妃騎士はどうなったのだろうか。 あのまま鎖でつながれ、奴隷のような暮らしに慣れ、挿絵のようにひたすら強いられたかりそめの夫に甘えるのだろうか。何と浅慮で軽薄で意志の薄弱な女だろうか。まるで現実感がない。

帽子男 @alkali_acid

とにかく知らなくてはならない。知らなくては。

帽子男 @alkali_acid

さて「ウィストの狭の大地あっちこっち」シリーズ 次回は「あの…九つの指輪…集めに…行きます…影の国への道を…開くために…」 乞うご期待。