剣と魔法の世界にある学園都市でロリが大冒険するやつ4(#えるどれ)

今でも極制服がスケベなデザインになる理由がよく解ってない。
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帽子男 @alkali_acid

リンディーレは記憶をたどる。 「私は学園におけるケログム博士の主要な協力者でした。まだ修士課程に入ったばかりでしたが、博士の研究と私の興味を持つ分野が近接していたので」 「どんな分野でしょう」 「妖精…闇の妖精です」

2020-04-27 22:40:51
帽子男 @alkali_acid

教授は静かに告げる。 「すこしまた話が逸れますが。私の一族には研究者が幾たりかいて、闇妖精については、仲の良かった叔父が幼い私に語り聞かせてくれたのです。狭の大地のそこかしこにあらわれた、黒馬に跨る尖り耳に暗い膚の貴公子、貴婦人の伝承を」

2020-04-27 22:43:58
帽子男 @alkali_acid

「叔父は民俗学を専攻にしていました。学歴は学士でしたが、それはしょっちゅう各地を飛び回って、論文を書き上げる時間がなかったせいなのです。幼い私が聞いたこともない土地に出かけ、多くの驚くべき見聞を持ち帰りました…法螺吹き扱いする人もいましたが…」

2020-04-27 22:45:38
帽子男 @alkali_acid

「旅の学士ですか」 「はい。でもそのせいかいつまでも独身で。いつか闇妖精の乙女を花嫁に迎えるつもりさ、などと笑っていたのです。そのうちに自分には本当に闇妖精の妻がいる、などと言い出して姪の私をからかって…いえ本当にそう信じ始めていたのかもしれません…叔父は…」

2020-04-27 22:48:23
帽子男 @alkali_acid

「闇妖精の国に辿り着いて…歓待を受けたとか…ふふ…私は大真面目で聞いて…」 リンディーレはどこか悲しげに笑うと、かぶりをふって、気の毒な叔父についての話を打ち切った。

2020-04-27 22:50:32
帽子男 @alkali_acid

「とにかく私も闇妖精についての研究に進みました。辿り着いたのは叔父とは別の答えでしたが。白の錬金術師とも深くかかわりのある…影の国という」

2020-04-27 22:55:32
帽子男 @alkali_acid

ダリューテは息をつめた。怜悧なおもざしに動揺があらわれる。 「影の国…とおっしゃいましたか…」 「はい。白の錬金術師は、影の国、闇妖精の支配する国と敵対したとも、味方したとも言われます」 「闇妖精…けれど、闇妖精など実在しません…小人…ドワーフを指す言葉の一種としてはありますが」

2020-04-27 22:59:16
帽子男 @alkali_acid

「そうでしょうか」 「闇妖精は実在せず、人間の…旅の学士を迎え入れ、妻となることもないのです。すべては妄想に過ぎない…」 「あるいはそうだったかもしれません。民俗学のために捧げた半生の放浪と探求の末に心を病んだ男性の…最後のよるべ…虚しい慰めだったのかも…でも…」

2020-04-27 23:01:53
帽子男 @alkali_acid

「ケログム博士が復元した白の錬金術師の書には、暗い膚をした妖精の記録があるのです」 「偽書…それはこの遺物が本来の書を捻じ曲げた内容にすぎないと、御認めになったはず」 「説明はつけられます」

2020-04-27 23:05:36
帽子男 @alkali_acid

リンディーレは熱意を込めて応じた。 「白の錬金術師の書によれば、人間と妖精もまた結ばれ、子をなすことができるというのです」 「な、何を…」 「東方人。当時は東夷と呼ばれていた暗い膚の民と、もし妖精が政略結婚か…あるいは…恋に落ちたとか」 「は?は?」

2020-04-27 23:08:12
帽子男 @alkali_acid

「暴力が介在した可能性は否定できません。妖精の伝承の多くは世界がもっと野蛮だったころ。人道などというものを誰も考えてみなかった、奴隷制も盛んな古代が舞台ですから」 「いいいえ…それは…おかしい…」 ダリューテは過呼吸気味になり、眼鏡を意味もなく何度も直し、空咳をする。

2020-04-27 23:10:09
帽子男 @alkali_acid

本人もなぜ取り乱しているのか解らない。ただ乳を凝らせたような白い肌に珠のような汗の粒が浮かんでいる。十尋を飛び降りても顔色一つ変えなかった妖精の騎士が。 「東夷…に、人間のうちでも獣に近い民…そう西方では認識されていたはずです。そのような…種族と…妖精が…」

2020-04-27 23:12:52
帽子男 @alkali_acid

「財団の方。あなたはこれまでの財団の調査員とは違う。学園がどれほど秘匿しようと試みようともすべてを暴く力がある。そう考え、あえて包み隠さず話をさせていただきました。もう一つには…」 教授は秘書をひたと見つめる。 「お会いしてすぐ気づいたこと…」

2020-04-27 23:20:01
帽子男 @alkali_acid

「あなたが失われたと思われていた魔法の種族。光の妖精であろうことから、私が長らく温めていた仮説を忌憚なく評価していたただけるのではないかと考えたからです…まことに闇妖精は実在しないとおっしゃるのですか。叔父…旅の学士が妻にしたという闇妖精は」 「し、ま、せ、ん。妄、想、で、す」

2020-04-27 23:20:20
帽子男 @alkali_acid

「白の錬金術師の書には、数少ないながら妖精と西方人の婚姻の歴史についての記述があり、東夷や…南寇と呼ばれる民族とまじりあう可能性も示唆されていました」 「ありえません…妖精は…戦に長けています。また子供を得たい、授けたいと望まなければ魔法によって妨げられます」

2020-04-27 23:22:54
帽子男 @alkali_acid

ダリューテは柳眉を逆立てて反論を始めた。 「故にまず、妖精が人間の捕虜になどなることはなく、まして…辱めを受けようとも子などなしません。故老からも、人間に妖精をしのぐ魔法があったとは聞いていません」 「ですが、では正当な婚姻や…恋の可能性は」

2020-04-27 23:25:50
帽子男 @alkali_acid

「婚姻については、西方人との間に同盟があったとすればありえなくはないでしょう。わずかな例でしょうが。しかしほかの民族との間にそういう記録がありますか」 「いえ…逆にお尋ねします。財団の方。あなたの同胞に、当時南寇と呼ばれていた近南地方の民族の赤銅色の膚や、東夷と呼ばれた東方人の」

2020-04-27 23:27:49
帽子男 @alkali_acid

「ありま…せ…」 ダリューテの脳裏を、妖精族の故郷である至福の地でともに暮らした武芸の師の面影が過る。確かに珍しい赤みがかった肌をしていた。 「あ、あったとしても…暗い膚はいません!!!!」

2020-04-27 23:29:18
帽子男 @alkali_acid

リンディーレの瞳がきらりと輝いた。 「では…暗い膚に尖った耳のものはひとりもいないというのですね」 「当たり前です!黒い…害獣も同然の種族など!妖精と相いれるはずがない!」 「なぜそう激しく否まれるのです」

2020-04-27 23:31:21
帽子男 @alkali_acid

ダリューテは深呼吸した。 まったくおかしな話だった。何を恐慌をきたしているのだろうか。 「…確かにまったくありえなくはないかもしれません。しかし闇妖精の伝承は私の故郷にはありません」

2020-04-27 23:33:03
帽子男 @alkali_acid

「影の国の太守、黒の乗り手が、光妖精の妃を迎えたということはありえませんか」 「黒の…乗り手…」

2020-04-27 23:34:19
帽子男 @alkali_acid

喪失と憤怒。 慚愧と諦念。 なお捨て切れぬ狂おしい熱情が身を焼く。 「…そう…か」 妖精の騎士の双眸が燃える。 「どこです」 「闇妖精は…」 「どこにいるのです!!ウィストは…黒き獣にとらわれたあの獣の娘は!」

2020-04-27 23:37:46
帽子男 @alkali_acid

本棚が開き、秘密の通路があらわれると、リンディーレはするりと中に消えた。たちまち螺旋階段に沿って並ぶほかの書かが一斉に動き始め、上下左右に組み変わり、反転して別の棚と交代する。 「黒き獣!!黒き獣に与しのだな学園は!!秘密を餌に秘密を探ろうとしたか!!小賢しい人間め!」

2020-04-27 23:40:16
帽子男 @alkali_acid

「残念です財団の方。あなたはもっと理性と自制を備えた人物だと思っていました。獣とは今のあなたの方です」 どこからか教授の声が聞こえる。 「許さぬ!!獣を庇いだてするなら!」 妖精の騎士が叫ぶと、周囲に冷気と熱気が渦を巻き、稲光が爆ぜ始める。

2020-04-27 23:42:50
帽子男 @alkali_acid

「妖精の魔法とはそのような浅慮で粗暴なものですか。あなたを取り巻く偽書の中には、黒の乗り手にまつわる秘密が隠れているのかもしれないのですよ」 「何!」 「私にはとうてい明らかにできませんでしたが。ケログム博士と同じ…いやそれ以上才気を備えるあなたなら、辿り着けるかもしれない」

2020-04-27 23:44:16
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