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剣と魔法の世界にある学園都市でロリが大冒険するやつ4(#えるどれ)

今でも極制服がスケベなデザインになる理由がよく解ってない。
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帽子男 @alkali_acid

「ここ偽物のみを集めた禁書図書館で、ケログム博士が白の錬金術師の研究を復元したように、あなたなら黒の乗り手の秘密をとらえられれるかもしれない…だというのに力任せに焚くつもりですか」

2020-04-27 23:47:12
帽子男 @alkali_acid

「たわごとを…」 「いいえ。たわごとではありませんとも。あなたには解るはずです。妖精の騎士よ」 古典の府の教授の言葉は次第に遠ざかっていく。秘書はしばらく解けた髪を鬣か炎のように揺らめかせていたが、ややあって指印を切ると、膨れ上がっていた魔法の力を収める。

2020-04-27 23:50:00
帽子男 @alkali_acid

「いいでしょう…人間…挑戦を受けましょう」 呟くと、手近な本を一冊抜いて、瞬くうちに読み尽くすと次へ移る。 やがて次々の偽書は棚から勝手に抜け出て、蝶か蛾じみて羽ばたきながら、鱗粉がわりに埃を落とし、頁をめくらせる。

2020-04-27 23:52:59
帽子男 @alkali_acid

何十何百の本を開かせ、球状に並べて旋回させながら、秘書は宙に浮かんで、ことごとくを一瞥のうちに暗記し、咀嚼し、整理する。 だが打字機と三匹の猿の木乃伊が作り上げた言葉の迷宮には果てなどないかに思われた。 かくて鏡の乗り手、財団の最強戦力、機動部隊集団の騎士団第零番は囚われた。

2020-04-27 23:55:49
帽子男 @alkali_acid

妖精の騎士が知識の牢獄に囚われた丁度その頃、宿敵たる黒の乗り手は女学生同士の剣術試合を見学していた。 体育館の床に室内靴の軋みをさせながら、細剣を使って刺突を主体に斬撃も交えた素早い舞踏のような動きが繰り広げられる。 もちろん本物の刃はついていない。刀身の材質も軽量で柔軟。

2020-04-29 20:16:17
帽子男 @alkali_acid

全身隙間なく防具服をまとい頭部を保護する仮面もつけている。戦闘の訓練というよりはあくまで競技。だが命を懸けないからこそ極限まで磨ける術もある。 「すご…い」

2020-04-29 20:20:16
帽子男 @alkali_acid

黒の乗り手、今は自らも女学生に身をやつしたウィスティエは人でひしめく建学席に紛れつつ、目を丸くし二人の剣士のめまぐるしい攻守の交代に魅入っていた。 制服の胸には釣鐘草の造花をきちんとつけている。

2020-04-29 20:20:42
帽子男 @alkali_acid

やがて試合の決着をつける鐘がなる。 それぞれの学園を代表する選手のうち、勝利を収めたのは昔の儀礼や文化を学ぶ古典の府の付属中等部。四回生の秀抜アンシオナだ。 以前からの好敵であり、兵法戦略を学ぶ軍武の府付属中等部の五回生を完膚なきまでに打ち破った。 「楽しい舞踏だった。リーゼル」

2020-04-29 20:25:36
帽子男 @alkali_acid

仮面を外したアンシオナが短髪から散る汗さえさわやかに告げると、相手もならう。 「私は必死でしたよアン」 「でも優雅で大胆だった」 「言葉より勝利が欲しいですわ…次こそは」 「それは譲れないな」

2020-04-29 20:27:59
帽子男 @alkali_acid

え?いったい全体これは何の話かって? この物語はエルフの女奴隷が解放された後のどたばたファンタジー。 略して #えるどれ 今は学園編です。

2020-04-29 20:29:15
帽子男 @alkali_acid

両雄が握手すると、見学席では鮮やかな試合ぶりに拍手と歓声が響き渡る。ウィスティエも周囲をきょろきょろ見まわしてから小さく手を打ち合わせる。 「すごい…」 剣とか戦いは正直あまり好きではない少女だが、今目にしたのは血なまぐさくないのに、血沸き肉躍るところに心惹かれた。

2020-04-29 20:32:32
帽子男 @alkali_acid

「これで今年のデルーヘナ杯も古典の府に栄冠が輝きましょう」 「いえいえ都外からの参加者にも強豪はおりましてよ」 「アンシオナ様には誰も太刀打ちできません!」

2020-04-29 20:34:32
帽子男 @alkali_acid

女学生達が皆で興奮してあの突きがどう、あの薙ぎがこうと寸評に盛り上がるのを横目に、そっとウィスティエは密集する制服の間を抜け出そうとする。 「僕のお姫様!来てくれたんだね!」 だが後ろからよく通る声がかかると、あっさり人垣は左右に別れた。 ぽつんと独り残った小柄な娘は慌てる。

2020-04-29 20:37:59
帽子男 @alkali_acid

「あわわわ」 「特等席に座っていないなんて。いけない子だな。僕の幸運の仙女なのに」 丈高い短髪の娘は颯爽と歩み寄って、暗い膚に尖り耳の、女童といっていい矮躯の下級生の肩を抱いて引き寄せる。 「でもちゃんと試合を見てくれたんだ。だから勝てたんだよ」 「…おめ、おめでとうございまっ」

2020-04-29 20:39:59
帽子男 @alkali_acid

逃げられないようにしっかりウィスティエを後ろから抱いたまま、アンシオナは尋ねる。 「僕の試合どうだった?」 「か、かっこよかったです」 「ふふ。ほんと?野蛮だと思ったんじゃない?」 「え、いえ…あの…かっこよかったです」

2020-04-29 20:42:13
帽子男 @alkali_acid

「ウィスティエ。君も剣術部に入らない。試合に出なくていいんだ。僕のそばにいてくれば」 「あ、あー…あ…えー…あの…えっと…え、遠慮しま…むぐ」 「んふふ。聞こえないなあ?」 四回生はしなやかな指で一回生の唇をつまんで閉じてしまう。またざわめきが起きる。 「ああ王子様ったら」

2020-04-29 20:49:22
帽子男 @alkali_acid

「そこまでになさいませアンシオナ」 豪奢な縦巻の金髪を左右に結った上級生がしずしずとお伴とともにあらわれる。扇子を出して口元を隠すと、小さく空咳をしてから窘めるように云う。 「いたずらも度がすぎれば下品です」 「君と違って上品なのは僕向きじゃないんだエリザ」

2020-04-29 20:52:44
帽子男 @alkali_acid

「女王様よ!」 「エリザビフィタ様!」 「ああ、お美しいわ」 「また王子様と火花を散らして」 「ほんとに仲が良いのか悪いのか」 「やきもきする!」

2020-04-29 20:53:33
帽子男 @alkali_acid

エリザビフィタはつんとして、アンシオナはいたずらっぽく、間にウィスティエを挟んで丁々発止のやりとりをしている。 暗い膚の少女は、己のおかしな尖り耳を隠す耳当てをそっと手で抑えつつ縮こまっていたがやがて、あたりの雰囲気が、あるものに似ているのに気づいた。

2020-04-29 20:56:01
帽子男 @alkali_acid

人形芝居だ。さすらいの民が子供向けにやる催し。 ここで繰り広げられているのはお芝居なのだ。王子様だの女王様だのと名前をつけて皆が騒いでいるのは、舞台に上がった木や布の人形を、本物の騎士や竜のように想像してどきどきわくわくしていたのと同じだ。

2020-04-29 20:57:40
帽子男 @alkali_acid

そういう遊びなのだと解ったら急に安心した。 「あの、これ返します…」 しかし釣鐘草の造花を胸元からとって渡そうとすると、王子様はそっと押し戻す。 「どうして?君にとても似合うのに」 「えっと…次の人に…」 「何のこと?それは君に上げたんだ」

2020-04-29 21:00:24
帽子男 @alkali_acid

「えぅ…」 難しい。遊びは遊びでもウィスティエには決まりが解らない。 「その花が気に入らないなら、新しいのをもらってあげる。おいで」 四回生は一回生の手をとって駆けだす。 「アンシオナ!まだ師範の訓示が…」 「代数のミコーゼル先生の四行詩でも聞いた方がましだよ!」

2020-04-29 21:04:20
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