剣と魔法の世界にある学園都市でロリが大冒険するやつ6(#えるどれ)

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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21944 pv 167 2 users

前回の話

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷が騎士となり復讐のために戦うヒロイックファンタジー 略して #えるどれ 過去のお話のまとめはこちらからどうぞ togetter.com/li/1479531

2020-05-04 20:01:00
帽子男 @alkali_acid

治世の府の中庭には天幕が張られ、木材と土嚢で障害が築かれ、無数の立て看板が並んでいる。中には無数の男女の学生が熱気に満ちてひしめいている。 仮ごしらえの演壇には赤いぼろをまとったやせぎすの女学生が立ち、紙の拡声器を手によく通る声で若き同志達に呼びかけている。

2020-05-04 20:05:18
帽子男 @alkali_acid

「諸君!我々の再三の訴えにもかかわらず、学校当局は学食の値上げを断行した!この専横に対し我々は断固たる行動をとる」 歓呼の叫びが次々と上がる。 「学食の値上げは…当局の強権的かつ専制的な体制の明確なあらわれだ!ほかにも人民に敵対する当局の無謀と傲慢を列挙しよう!」

2020-05-04 20:07:22
帽子男 @alkali_acid

「図書館における他校学生の利用制限、老朽化を理由にした第三学生会館の退去要求!革命的活動の拠点であることが彼等にとって目の上のたんこぶなのだ!学食の値上げもまた我々の貴重な結束の場を奪おうという意図のあらわれ…」

2020-05-04 20:09:36
帽子男 @alkali_acid

「中等部以下の学生に対する門限の強化!新制服の押しつけ。いずれも学生を自由な意志によって思索し行動する主体から、当局にとって都合のよい家畜に変えようという愚劣極まる政策!」

2020-05-04 20:11:51
帽子男 @alkali_acid

「職員による学生証の携行や提示を公然と要求さえ見られたという!我々は奴隷か?名札をつけられ囲いに入れられる牛や羊だというのか?否!断じて否!」

2020-05-04 20:13:11
帽子男 @alkali_acid

ありとあらゆる学生生活への憤懣。 だが女学生は次第に内容を切り替えていく。 「背後にあるのは何か。諸国間の緊張は日増しに高まり、戦争の機運が次第に盛り上がりつつある。そこかしこで集会を阻み、情報の収集や共有を阻止するのは、諸君に戦争に対する騒動を起こさせない意図だ」

2020-05-04 20:21:48
帽子男 @alkali_acid

「諸君!当局は嵐を前に家畜を囲いに入れる牧童のつもりで、せっせと準備をしているのだ!だが我々こそが嵐だ!戦争が我々を体制の家畜にしようというなら、我々は断固戦争に反対し、言論と行動の両輪でもって粉砕する。そのために我々の権利を行使し、我々の自由を確保せねばならない」

2020-05-04 20:23:54
帽子男 @alkali_acid

ヒョロヤナギのあだ名を持つ扇動家はまずまずの成功を収めていた。話す内容は凡庸に抑えているが、言葉や表情には不思議な魅力があり、はるかに雄弁な学生よりも人の心を捉えるのがうまい。

2020-05-04 20:25:51
帽子男 @alkali_acid

「でも今日はノリが悪いな」 仲間の一人、バカガラスが喝采してから、衣嚢(ポケット)に入れた煙草をいじって呟く。 「いつもはもうちょっと飛ばすのに」 「天気が荒れるかもしれない」 ぽつりと暗い膚の青年、クツズミがつぶやき、また歓声を張り上げる。

2020-05-04 20:29:20
帽子男 @alkali_acid

ちょうどその時、熱気に包まれた校庭の外で、血まみれの学生が一人、よろよろと歩いてきた。見張りが気づいて駆けより、噛み跡がついてるのに気づいて叫ぶ。 「クツズミ!先生!怪我人だ!警邏にやられたんじゃない!犬か何かに…」 呼びかけはすぐに悲鳴に変わる。

2020-05-04 20:31:56
帽子男 @alkali_acid

あわててほかの学生が駆けつける。独りは角材から作った用心棒も引っ提げている。 「おい何やってる!」 「噛みついてるぞ!…引き離せ!」 「やめろ!おい!先生!」

2020-05-04 20:33:08
帽子男 @alkali_acid

先生というのは医学生であるクツズミを呼んでいるのだ。 ヒョロヤナギもすばやく演壇を降り、障害のそばまで大股に歩いてく。そばに仲間が従う。 「君が動いたら皆が動揺する」 「馬鹿なことを。怪我人が出たならまず…」 だが若き活動家たちの言葉は最後まで続かなかった。

2020-05-04 20:35:24
帽子男 @alkali_acid

障害の外では人間が人間を食らいつく阿鼻叫喚の絵図が始まっていたからだ。

2020-05-04 20:36:02
帽子男 @alkali_acid

学問の都に、奇妙な病が急速に広がっていた。 爽やかな薄荷の匂いをさせながら、緑の体液をたらす生ける屍の群がはなたれ、学生や教授、市民に食らいつくと、すぐに似たような怪物へ変えてしまう。拡大は速く止めるのは困難だった。警邏の武装は主に棍棒と盾で、銃は少なかった。

2020-05-04 20:40:45
帽子男 @alkali_acid

学生が騒動を起こすといってもおおむね治安のよい街だったからだ。 表の治安機関が混乱を来たすなか、裏で真の防衛を担う教授達は、異変に気付くと、すぐ都市の仕掛けを動かし始めた。 懸念していた「財団」の来襲がついに起きたのだ。

2020-05-04 20:44:04
帽子男 @alkali_acid

財団。 人類文明を、超常の災厄から守るために生まれた秘密結社。 しかしそのために遺物と呼ばれる災厄の源を独占しようとし、似た目的を持つ組織とはしばしば対立する。

2020-05-04 20:46:06
帽子男 @alkali_acid

学問の都を構成する学園は、遺物を含むあらゆる知識を蒐集し保管しようとする性格があり、必然として財団とは競合した。 双方は複雑に絡み合った関係を持ち、正面切っての衝突を可能な限り避けていたが、いつの日か闘争は避けられないとも考えていた。

2020-05-04 20:47:44
帽子男 @alkali_acid

財団ほどではないが、学園も超常の存在である遺物を幾つも収容しており、中には現実を改変するような強大な力を有するものさえあった。いざとなれば「来襲そのものをなかったことにする」といった対処さえ可能なはずだった。 だが実際には防衛用の遺物のほとんどは活性化されなかった。

2020-05-04 20:55:16
帽子男 @alkali_acid

なぜならそうした遺物とはまた別の、遠い昔に忘れられた力、魔法を操る尖った耳の刺客が密かに都に潜り込み、教授達を次々に襲って、生ける屍に変えてしまったからだ。

2020-05-04 20:56:27
帽子男 @alkali_acid

学問の都を守る教授の内でもとりわけ魔法に詳しい一人、古典の府のリンディーレ・リンダール教授は、財団の来襲を知るや素早く隠し部屋に逃げ込んだが追手の正体が想像通りであれば目くらまし等易々と見破りそうだった。 久しぶりに必死で走った妖精学者は胸を抑える。近頃心臓の調子がよくない。

2020-05-04 21:10:47
帽子男 @alkali_acid

「困りましたね。イシュマー。あなただったらこんな時どうするかしら」 呟いてから苦笑する。夢にまで見た魔法が蘇り、よりによって自分を付け狙ってくるという、稀なる機会が訪れたというのに、まず思い浮かんだのがかつての上級生のこととは。

2020-05-04 21:12:59
帽子男 @alkali_acid

だが頭でっかちな少女の空想に満ちた言葉に耳を傾けてくれた、あの暗い膚の青年はもう側にいない。 今や魔法を迎え撃ち学問の都を守るのは、すっかり歳をとったリンディーレ一人の仕事なのだ。 とはいえ銃を持つのは流儀ではなかった。 そういった些末な暴力で何かが解決できるとは思わない。

2020-05-04 21:16:04
帽子男 @alkali_acid

妖精と異なり、どうも好きになれない例の魔法もどき。遺物に頼らねばならないが、一番近い安置所、つまり収容施設からもかなり距離がある。 「…ウィスティエさん…あなたを財団から遠ざけておくと誓ったのに…」 意を決してまた進む。もう駆けるのは無理なので、できる限りの速足で。

2020-05-04 21:18:55
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