感染拡大/縮小のダイナミクスを科学的に理解するための杉本大一郎さんによる物理学者的方法

杉本さんからの情報発信を理解していくために、 コロナウイルスの感染伝搬など連鎖的に広がる現象解析の基本的な部分と用語定義を、 抜粋してまとめました。
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sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術25:最も大切な点はa-cを低く保つこと。特にaは規制で減らせるので重要。専門家会議は社会的接触率fを80%減にと提案し、効果を図示した。社会・経済へのダメージを少なく保ちながら a の実効値を効果的に下げる行動様式の基準。次回からはそのことを考える。→26に続く

2020-05-19 14:44:46
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術26:この先の議論のために、用語を再整理する。ツィートの文字数制限のため、短いが意味の分かりやすい語に:現感染者数z感染率a感染時間(スケール) T_a=1/a、(広い意味での)治癒率c治癒時間T_c=1/c、時刻(日単位とか) t、それにxのy乗をx**y。→27に続く

2020-05-21 13:53:49
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術30:言い換えると、z=一定、は「不安定な(定常)状態」。例えて言うと、遊びのないハンドルの自動車を運転しているようなもの。ハンドルさばきが良くても、左右にフラフラ揺れる。しかもハンドルを切ってから車輪が反応するまでに時間遅れがあるからなおさら。→31に続く

2020-05-21 13:57:36
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術33:現実のデータから諸量を下表に計算。結果は驚くほど、これまに述べた理屈どおり。全国と東京は現感染者数の増加率(a-c)zと、累積治癒者の増加率czから計算。北海道は第20回の結果。最後の列のとおり、感染拡大時と比べて最近の下降時のaの割合はf9~20%。→34に続く pic.twitter.com/3yspEZAtCy

2020-05-21 14:06:03
拡大
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術60:感染拡大に関する数理モデルはいろいろある。先に述べたSIRモデルに潜伏期の効果も算入したSEIRモデル。人数の有限性を取り入れた確率論(離散)モデル、...。いくらでも詳しく出来るが、それによって本質が隠されかねないことに注意計算機時代の落し穴。→61に続く

2020-05-27 08:31:39
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術61:量の定義とその意味の明瞭さも重要。再生産数だけが強調されるが、R=a/cという無次元量だけで物事が決まる筈は原理的にない。だから3/19専門家会議の提言のように「R0...が欧州...のR0=2.5 程度であるとすると...」という、生徒レベルの議論になった。→62に続く

2020-05-27 08:35:26
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術66:最後に後回しになっていた、規制の量的基準について述べる。感染を拡大させるいろいろな要素 a_i がどう決まるかということ。「実効的」拡大率 aa_i の和で決まる。それぞれを時間尺度T_i=1/a_i で表すとき、足し算のできる量は T_i でなく、1/T_i 。→67に続く

2020-05-27 08:51:45
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術67:説明は数式で表すと簡単だが数式は嫌いな人も多いので、ありそうな数値を当てはめて個々の関係を次回から説明。数理論理に馴れている人向けには「2体遭遇だから密度の2乗に比例し、相互作用距離・時間を考慮して局所的 aを全空間・時間で平均する」だけ。→68に続く

2020-05-27 08:55:00
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術68:左右の図で、密度が4倍の場合を比較する(空いている店と流行っている店)を比較。感染影響範囲 b (2mくらい)の大きい丸の中心に緑で示した人から見ると、右の感染確率は4倍。大きい四角の中に、うつされる人も4倍いるから、感染事象数は4の「2乗」で16倍。→69に続く pic.twitter.com/l4X4X8iZZN

2020-05-28 10:04:33
拡大
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 出口戦略と戦術69:大きい四角の中で起こる感染数は、「密度の2乗×感染影響範囲の面積x個別感染率×その状態の継続時間」。個別感染率はうつす人1人×1時間あたりで、「*」の単位は(人/面積)。大きい四角は多数あるから、その面積を掛けて足し合わすと市全体の感染率aになる。→70に続く

2020-05-28 10:06:40
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後10:感染ダイナミクスの式でdz/dt=(a-c)z と纏めなかったのはaは社会的接触の程度cは病院・回復力と、それぞれ異なる要因によって決まる概念だから。しかもaは自粛や規制によっていつでも、不連続的にも変えられる点がcと異なるので、分けて議論すべき。→..11に続く

2020-06-25 10:59:46
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後11:az には、他にいろいろな要因が影響。感染してからウイルスを放出して他人に感染させるようになるまでの潜伏期間(latent period)および発症までの潜伏期間(incubation p.)の違い、それによる時間遅れ(time-lags)、未発見感染者の比率、免疫獲得者の比率等。→..12に続く

2020-06-25 11:02:07
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後12:czには、多すぎる患者数で医療崩壊が起こった時は別枠で考えるとしても、重症化する人と軽症ですむ人の比率、ベッド・資材・機器の不足のため借切りホテルや自宅で療養させられる人数、医師の罹患などが影響。ただ、社会的・不連続的影響はazほどではない。→..13に続く

2020-06-25 11:04:12
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後13:..10~12に述べたが、aとcは異なる状況に左右されるので、感染対策の方法も異なる。個々の状況に対する値の推定は不定性を伴うので、社会全体で足し合わせると不定性はますますひどくなる。だから逆に現実のデータからaゃcの値を読取ることから始めるべき。→..14に続く

2020-06-25 11:06:13
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後16:再生産数はR=a/c=T_c/T_a。すなわちT_a毎に一人に感染させ、T_cの間続くから、1人の感染者がR人に感染させるとの意。システムの表現に必要な2つの独立パラメターは、(aとc)でなくても、(Rとc)でも (Rとa)でもよいが、意味を明瞭に分離できるのは(aとc)。→..17に続く

2020-06-27 11:26:07
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後33:基本的な2つの量をaとcにすると良いのは、a-cという引算が現れるから。例えば典型的な値として、共に0.1くらいとしよう。a=c=0.10ならa-c=0.00で「現」感染者数は一定値に留まる。ただしこの状態は不安定(定常)状態。(ツイート5/21「出口戦略と戦術30」)。→..34に続く

2020-07-02 09:45:58
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後34:例えば、(a,c)=(0.11,0.10)ならa-c=0.01(10週で倍加)、(0.12,0.10)なら0.02で(5週で倍加)。つまりa (社会的接触)が10%変わっただけで、倍加期間が2倍も異なる。これが、引き算の入ったシステムの特徴であり、コントロールの難しさの要因なのである。 →..35に続く

2020-07-02 09:47:07
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後35:他の例。原子炉では核分裂で発生す中性子の一部を連鎖反応に使い(プラス)、残りを連鎖反応に効かなく(マイナス)して、連鎖速度の不安定定常状態を維持する。だからコントロールに多数の計器と要員が必要。収入と支出がほぼバランスしている家計でも同じ。→..36に続く

2020-07-02 09:48:47
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後36:東洋経済onlineの 「新型コロナウイルス国内感染の状況」は役立つ形でデータをまとめている(表には示さないので使いにくい)。最近、実効再生産数のグラフを示している。「北海道大学大学院医学研究院・西浦博教授のモデルと監修を基にしています」とある。→..37に続く

2020-07-06 14:05:54
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後37:その「計算式は「(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)^(5/7)」、平均世代時間5日、報告間隔7日と仮定 (・^hは、・のh乗のこと)。・・7日間の新規・・はy(t)-y(t-7)、「累積」感染者数yの差のことで、「現」感染者数 z の差ではない。→..38に続く

2020-07-06 14:08:02
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後38:7日間分の差と(5/7)乗は2種類の潜伏期間を考慮した模様。何を計算したことになるのか示す。「累積」感染者数 y の差前々週はΔ前週は pΔとする。東洋経済の再生産数には*をつけて区別すると、R*=p^(5/7)  (pの5/7乗)。Δは消えてしまっていることに注目。→..39に続く

2020-07-06 14:13:19
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後39:その結果、p=1 なら、何時でも R*=1。また増加/減少比率が同じなら、R* はΔの大小に関係がない。例えば「新規」感染者の倍加日数が7日(p=2)なら R*=1.64。このツィートで採用してきたR=a/cと違ってR*には治癒率(病院力)の情報 c は入っていないことに注意。→..40に続く

2020-07-06 14:16:57
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後40:東洋経済の再生産数R*の続きに戻る。感染拡大/縮小がR*-1の正/負で記述される点はR-1と同じ。そこが動かないよう、関数形をべき乗にした? 現実のデータで、「累積」感染者数yの増分はcの効果が繰込まれた結果だと言うなら、14日も前のyまでは戻りすぎ。→..41に続く

2020-07-08 09:05:57
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後41:Rとの関係は、繰込まれた値をp=exp{7(a-c)}だとすれば、その5/7乗から、5(a-c)が1に比べて小さい(0.5までくらいならまあ許せる)場合に、Rで c=0.2/日と仮定したものと同じになる。東京都や北海道での c は0.1/日程度だから、そんなに悪いわけでもない。→..42に続く

2020-07-08 09:08:25
sugi_sci @SciSugi

#コロナウイルス 評価と今後42:一般的に言うと、(単なる経験則に当てはめた内挿式ならいざしらず、) システムの特性を記述する量の定義として、整数でない半端な「べき」が現れることはあり得ない。意味を明確に示すことが出来ないから。「理論」**学者監修というのは、私には不可解。→..43に続く

2020-07-08 09:09:52