まっかなくちべに

同窓会と小さな復讐と大倉さん
2
前へ 1 2 ・・ 8 次へ
よつげ @Eight_os

25 「女の子一人で夜歩かせるわけにいかへんやろ」 「ご心配なく。そこまでヤワじゃありませんからw」 「そういう問題ちゃうやん」 大倉くんは私の目をしっかり覗き込んで 「せっかくまた会えたのに」 と続ける。 またも何も、『九条早苗』とは初対面だよ貴方。馬鹿みたい。 #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:01
よつげ @Eight_os

26 ああもう。 (早く来て) そう思った時。 入口の方から革靴の音が聴こえた。 キョロキョロと辺りを見回したその人影は、受付係の静止に「迎えです」と言って、 すぐこっちを見つける。 …彼こそが、今回の協力者。 というか、発案者なのかな。 「おった…!早苗ちゃん!」 #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:02
よつげ @Eight_os

27 額に汗を浮かばせながら、こっちに走ってくる。 少しばかりイケメンなもんだから、気づいた女の子たちがちょっと騒いでる。 それには目もくれずに、その人は私の目の前で立ち止まった。 「もぉ〜、絶対遅れんようにって言うたやんか」 「ごめんごめんw」 「ほらはよ立って」 #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:03
よつげ @Eight_os

28 その人が差し出した手を私はしっかりと握ってその場から立ち上がる。 「…そいつ誰?」 大倉くんがいつもより少し低いトーンでそう聞いてくる。 私は軽く笑みを浮かべて答えた。 これこそ今回の計画だ。 「誰って…彼氏?」 「え」 大倉くんが目を見開く。 #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:03
よつげ @Eight_os

29 明らかにショックを受けた顔。 これで私の本当の名前を教えたらどうなるんだろう。 でも今更大倉くんとどうこうなろうというわけでもないのに教える義理はない。 私の協力者は、人のいい笑みを浮かべて口を開く。 「彼氏の丸山いいます 『うちの』がほんますんません」 #エイトで妄想 pic.twitter.com/GaSZFw6APt

2020-07-15 20:42:07
拡大
よつげ @Eight_os

30 この人こそ 高校時代に『見返したったら?』と私に言い出してくれた人。 私の生きる世界の意味を変えようとしてくれた人。 「ほんじゃ、僕らはこれで失礼しますわ お先にすんませーん」 「ごめんねー、みんなによろしく言っといて」 手を合わせてそう言って #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:08
よつげ @Eight_os

31 丸山くんの腕に腕を絡めてその場を後にした。 「ふーっ…」 会場から出ると溜め息が漏れる。 丸山くんが苦笑して私に聞いた。 「気は済んだ?」 「おかげさまでw」 私も笑って返す。 今後大倉くんにはもう二度と会うことはないだろう。 些細な自己満の復讐。 #エイトで妄想

2020-07-15 20:42:08
よつげ @Eight_os

32 願わくば彼がこの出来事を、一週間くらいでもいいから引き摺ってくれたらいいなぁなんて そう思いながらご機嫌で丸山くんと別れた。 しかし私はこの時点では知りもしなかった。 まだ事は全然『終わって』なんていなかったんだ。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/u5UFi0NgnD

2020-07-15 20:42:11
拡大
よつげ @Eight_os

33 すっかりそんな出来事も忘れかけた1ヶ月後。 知らない電話番号からの着信が入っていたことに気づいた。 あとショートメールも。 電話に出なかったからこっちに用件を書いたのだろう。 『元気?』 『今度呑まへん?』 そんな文言が並んでいた。 #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:05
よつげ @Eight_os

34 「名刺偽物で良かったぁ…」 「名前のとこだけやけどな」 「丸山くんほんまありがとうね」 名刺のデザインは私。作るように依頼してくれたのは丸山くん。 デザインって言っても本物を参考にしてるからほぼ変わらない。 電話番号もデタラメを書けばよかった。今更ながら後悔。 #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:05
よつげ @Eight_os

35 本日高めのレストランに誘ってくれた丸山くんは、頬杖ついて考え込む。 「これは…全部俺のんにするまで思ったより長くかかりそうかなぁ…」 「へ?」 小さく呟いた丸山くんの言葉がよく聞こえずに聞き返すと、ニヤッと笑った。 「ええ機会やん もっと弄んだったらええ」 #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:06
よつげ @Eight_os

36 「弄ぶ…とは」 丸山くんはサラダの中に入っていた大豆をフォークで器用に掬うと 「期待させるだけさせて、堕ちる所まで堕として」 そして、その大豆を唐突に皿の上に落とした。 「最後に、ポイッと捨てる」 なるほど… 「出来るんかな、私に」 「あー、それ悪い癖やで?」 #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:06
よつげ @Eight_os

37 丸山くんはフォークを置いてテーブル越しに私の頬の肉を摘む。 「ひょっほ、はうぇあえへん」 「そうやって自分を過小評価してまうん、悪い癖」 そして、一旦手を離すと、頬に掌を添えた。 「それも、全部あいつの…大倉くんのせい」 「…」 「ムカつく」 #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:07
よつげ @Eight_os

38 一瞬、丸山くんの顔が恐ろしいほど冷ややかになった後 その手は離される。 何事もなかったかのように優しい声の調子で丸山くんは続けた。 「今のお前なら、大丈夫」 「うん」 「世界一魅力的な女なんやから」 「大袈裟w」 「いやいやほんまにw」 あの頃からずっと #エイトで妄想

2020-07-17 22:47:07
よつげ @Eight_os

39 自分に自信を持たせてくれたのは彼の言葉だった。 「都合よく丸山くんの言うこと信じてみ?w」 いつもそう言ってくれる彼は魔法使いのようで。 「はい、信じますw」 ある種洗脳に近いものだったのかもしれないけど 私にとって丸山くんはずっと、《救世主》だった。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/gXVYFBmNGQ

2020-07-17 22:47:14
拡大
よつげ @Eight_os

40 (…はぁ〜〜〜) 弄んで捨てる、という丸山くんの言に乗ったものの、やはり私を待ってるその人を見ると気が重くなる。 待ってるのは━━━━━あの日、連絡をくれたのは、紛れもない大倉忠義その人であった。 メイクは崩れてない。 私が九条早苗を崩さなければ良いだけ。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:45
よつげ @Eight_os

41 小さく息を吐いて両頬をパチンと叩いてから、 「遅なってごめん〜!」 と彼の前に駆け出した。 「俺もさっき来たとこ お、ちゃんと可愛くしてくれてるw」 「うん、久しぶりやからね こうして男の人と出かけるの」 そう口にした言葉に大倉くんはすかさず反応する。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:46
よつげ @Eight_os

42 「彼氏おるんちゃうの?」 「あー…」 意味ありげに目を逸らしては髪を耳にかけた。 「最近忙しいみたいで まあ、元々外でデートとかも好きなタイプやないから」 「…そっか」 大倉くんは眉を下げて心配そうな笑み。 疑いもしてない。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:47
よつげ @Eight_os

43 高校の時は演劇部だった。 似合わないって最初は断ったけど 丸山くんに誘われた。 『そんなことないやろ、絶対演技上手い!気がする! それに、今同じクラスの人部活におらんから入りづらいねーん…入って?お願い!』 今思うとあれが世にも楽しい洗脳の始まり。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:47
よつげ @Eight_os

44 ヒロインを張ったこともあったから、まあ私の演技はそう悪くなかったんだろう。 その結果こうして、かつての想い人を騙せている訳だし。 「何にする?」 「大倉くんと同じのにする 慣れてないからよお分からんし」 「じゃあこれで」 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:48
よつげ @Eight_os

45 入ったレストランは丸山くんとこないだ行ったとこよりさらに高そうだった。 「すごいね…こういうとこよお来るん?」 「そんなにw ただここ、取引先と会食するとかで何回か使ったことあんねん」 「さすが営業NO.1w」 そう言って笑うと、大倉くんも笑ってくれる。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:49
よつげ @Eight_os

46 「それじゃあ…乾杯」 「かんぱーい」 料理とお酒が運ばれてきて、早速「いただきます」と手をつける。 「ん〜〜…!」 「美味そうに食うなぁw」 「大倉くんに言われたないわぁそれw」 私よりよっぽどいい笑顔で食べるくせに。 知ってるよ。 見てたから、あの頃。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:49
よつげ @Eight_os

47 「というか今更やけどこんな所で俺と二人でメシとかええの?」 たぶん大倉くんずっと気にしてたよね。私の彼氏の存在。 お店入ってからちらちらこっち見てた。 「心配されるんちゃう?」 「そう思うんやったらもっと軽い居酒屋とか誘ってくれたら良かったのに」 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:50
よつげ @Eight_os

48 悪戯っぽく笑ってそう話を逸らすと 大倉くんはお酒に手を伸ばして 「…そらええ店誘いたなるやろ 気になってる奴やったら」 目を合わせてはくれないものの真面目なトーンでそう言った。 …おぉ。 意外と直球。 好きな人には、そんな風に言うんだね。 知らなかった。 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:51
よつげ @Eight_os

49 心が揺らいではいけないと思いつつ、頬を染めてしまう。 それを見透かしたのかどうなのか、大倉くんが真っ直ぐ目を合わせた。 「やから気になんねん そいつと上手くいってへんのやったら、俺にとってはチャンスやし… って、ごめんな。こんなん最低やけど」 #エイトで妄想

2020-07-20 00:12:52
前へ 1 2 ・・ 8 次へ