まっかなくちべに

よつげ @Eight_os

５０ 最後に付け足された言葉にふふっと笑う。 「ほんっま最低w」 「ごめんて…w」 「…まあ、上手くいってへんのかもね 正直、好きかどうかもよお分からんし」 …正直に言って、最後の一言だけは本当。 高校の頃は、確かに丸山くんのことは好きだった。 #エイトで妄想

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５１ でも環境の変化とともにそれが移ろっていくのも確かに感じていた。 好きの形は、あの頃とだいぶ違う。 「そうなんや…」 好きかどうかも分からない。 わざと主語を抜いた。 多分大倉くんは『丸山くんが私のことを』好きか分からないと取っただろう。そんな顔してる。 #エイトで妄想

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５２ …まあ、確かに丸山くんも好きかどうか分かりづらいとこはあるけど。 「でも心配せんといて？ あの人あれで優しいとこあるし、そう悪いもんでもないよ、今も」 「…まあ、お前がええんやったらええねんけどさ」 どこか腑に落ちない表情で大倉くんは食事を再開した。 #エイトで妄想

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５３ あの頃から 大倉くんは顔に表情が出やすい。 騙す側の私としては面白いくらい。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/iJWqXFvYvy

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５４ あれから 大倉くんはちょくちょく食事に誘って来るようになった。 LINEは『やってない』と言って何とか交換しないで済んでいる。 多分大倉くんはチャンスだと思ってる。 『彼氏持ちだけど上手くいってない』九条早苗に、断られないことをいいことに誘いをかけている。 #エイトで妄想

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５５ 何となくそろそろ食事の『後』がありそうな気がしている。 「…今日も迎えとかないんや」 何回目かの食事で大倉くんがそう言ってきた。 「ええよ、慣れたし」 「嘘つけw」 大倉くんが苦笑して私の頬を摘む。 『聞こえへんって、こっち見て喋って？』 #エイトで妄想

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５６ 昔からよくやるよね、それ。 「無理して笑わんでええねんで」 無理なんか…してない。 ずっと演技してる私に説得力なんてないけど。 「ありがと」 目を伏せて笑って、「じゃあね」と手を振ってタクシーに乗り込んだ。 行先は私の家。 いつもなら。 でも今日は違った。 #エイトで妄想

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５７ 「そこのカラオケで降ろしてください」 駐車場の前に、見覚えのある人影。 タクシーを降りると、スマホを弄ってたその人が軽く手を振る。 丸山くんだった。 「久々に迎え」 「ありがと」 笑いながら俯く。 理由もなしに迎えなんか来る人じゃない。 「…何を迷ってんの？」 #エイトで妄想

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５８ 私の頬をそっと撫でて丸山くんは言った。 「言ってること分かるよなぁ？」 「…」 「弄ぶ言うたら、子どもやないんやから、少しの色仕掛けくらいあってええやろ 僕に遠慮せんでええよ？」 …仮にも彼氏が言うセリフではないなぁ。 そりゃ冷めきってるんだろうけどさ。 #エイトで妄想

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５９ 「大倉くんと寝ろってこと？」 「うん」 「…いいの？」 「ええよ」 たまに、丸山くんが分からない時がある。 人知れず狂っている部分…っていうのかな。そういうのが見え隠れする、こんな時。 「そん代わり」 キスするよりもやらしく私の唇を指でなぞると #エイトで妄想

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６０ その指を自分の下唇に当てた。 その姿の色っぽさに心臓が高鳴る。 「抱かれた時には必ず言うて？ …たまらんくらい酷くして消毒したる」 そんな言葉と共に浮かべられた妖艶な笑みに ドキドキすると同時に背筋の寒さを覚えた。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/25cB9jqo6r

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６１ まあしかし、彼氏張本人に言われてしまったらどうしようも無いわけで 次に会う時にいつもよりちょっといい下着を選んで 可愛らしい服装をしてみる。 別に意識なんてしてない。 唆ってもらわなくちゃ困るから。 「お待たせ」 「お」 #エイトで妄想

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６２ 私の姿を見つけると、大倉くんの顔は嬉しそうな笑顔に変わる。 いつものこと。 並んで歩き出すとそっと手を握られるのも それに対して抗議するように大倉くんを見るとふっと微笑まれるのも。 顔がいいから似合うのが腹立つ。 だけど今日こそは #エイトで妄想

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６３ 私はそっと大倉くんの方に身体を寄せてみた。 驚いたような顔でこちらを見る彼。 「なにー？たまにはええやろ？w」 そう見上げて言うと 「ええけどさ…びっくりしたぁw」 なんて、照れたように笑ってる。 うん。 今日の雰囲気はちゃんと、どこかいつもと違う。 #エイトで妄想

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６４ その日も、二人でご飯を食べる。 大倉くんの飲むお酒の量は、いつもより少なかった。 反対に私は少し多めに飲む。 「早苗ちゃん」 「んー？」 「…彼氏と何かあった？」 「…何で？」 「今日ペース早ない？」 まあ、ああいう人だから 根本からして何かある状態ではあるけど… #エイトで妄想

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６５ 「…まあ、ないこともないけど 日常茶飯事やし、これくらい」 そう言って黙ってお酒を口に含むと、大倉くんは痺れを切らしたように言う。 「なぁ、何でいつもそんなん言うん？ もうちょい俺に頼ってくれてもええやん」 何でって、誤魔化すのが一番演技的には楽だからだけど… #エイトで妄想

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６６ 「…ごめんね？」 それだけ寂しげな笑顔を作って言うと、大倉くんははぁ…とため息を吐く。 とりあえずはその場では「こっちこそごめん」と謝ったけど、まだ気にしてるっぽい。 しばらく一緒に呑んだ後、お会計を済ませて、外に一歩出ると 「なぁ、お前今日も帰るつもり」 #エイトで妄想

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６７ そう聞かれた。 「え…そう思っとったけど」 そう返すと、困ったように後ろ髪をかいてから 「お前いつもより飲んどったやん？ 俺ん家近いし休んでったら？」 そんな風に言う。 …どうせさほど近くもないくせに。 「…でも、悪いし」 #エイトで妄想

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６８ 「そんなん思わんでええから …俺がしたいだけやから」 そっと握られた右手が、ほんのりと熱かった。 「今のお前一人にしたないだけ …何もせえへんし」 その言い方は絶対するでしょ…w あからさまなセリフに思わず笑いそうになる。 揺らがないって思ってたのにな。 #エイトで妄想

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６９ 「じゃあ…大倉くんがええんやったら、ちょっと寄ってこうかな」 そう言って、屈託のない笑みを浮かべる。 今だけは 簡単に男の言葉に騙される 馬鹿な女になっておこう。 「…こっち」 罪悪感を覚えたかのように大倉くんが目を伏せて それでも焦ったように私の手を引いた。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/FBoFkzVUWA

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７０ 大倉くんは最初、ちゃんと水を飲ませてくれたけど 「…隣、座ってええ？」 そう言うとこっちがいいよと言い終わる前に座って しばらくじっと見つめた後、そっと、重ねるだけのキスをした。 「…何もせえへんって」 形だけそう言うと、苦く笑って「ごめん」と言って #エイトで妄想

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７１ 今度はさっきより長くキスを落とした。 そこから…ベッドに移動して、流されるまま身体を重ねて 「お、おくらくん…あっ、」 「…忠義って呼んでやっ…、お願いっ」 その夜はひたすら大倉くんに溺れた。 #エイトで妄想

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７２ 終わると大倉くんはすぐ寝ちゃったし 私も疲れてたから ほんとはこっそり家を抜け出そうとか思ってたんだけど そのまま眠りについた。 …朝、目を覚ましたのは五時前。 まだ腰の辺りに怠さが残るけど 行かなきゃ。 情が湧かないうちに。 そう思って服を着て #エイトで妄想

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７３ 荷物を持つと 「…もう行くん」 いつの間に起きてたのか、大倉くんが私の手を掴んでいた。 「うん、昨日はごめんね」 「すぐ謝んのやめてや… 昔から悪い癖やで、それ」 「…そーだっけ？w」 笑い飛ばそうとしたけど、大倉くんは身体を起こしてぎゅっと抱きついてくる。 #エイトで妄想

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７４ 「…俺はいつでも待ってるから」 「…」 「しんどい時はいつだって飛んでくし ほんまに…好きやから」 私が嘘をついてるんだから ある意味この言葉だって嘘になってしまう。 なのに こんなに心臓が音を立てるのは何でだろう。 「…もー分かったって！ とりあえず今日は帰る」 #エイトで妄想