- sunameri2015
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薄紅天女は輝と闇の神の力が及んでいた最後の時代の話で、この話の後からは完全な人の世が始まる。で、この転換点に居合わせた苑上、転換点を超える皇に重要な働きかけをしてる
2020-07-21 00:00:44伊勢に賀美野を助けに行ったこと、そして彼の前で物の怪と対峙して、「この子は、あなたの仲間にはならない。わたくしが誇りにかけてそうさせない。たとえあなたがわたくしたちの一部でも、それが全部ではないのよ」と言って、物の怪に対峙したところですね
2020-07-21 00:00:45この台詞のちょっと前から読み返すと分かるんだけど、しがらみがなく皇太子になることがない立場だからという彼女の立ち位置はあるにしても、苑上、自分の意志の力のみで皇の一族にかけられた「兄弟殺しの呪い」に打ち勝ってるんですね。橘の姫の救いなしに、剣の呪いの残滓を振り払ってるんですよ
2020-07-21 00:00:45彼女にも呪いが影響を及ぼしてるのは、苑上の章の最初の方で「どうして弟を可愛く思えないんだろう」と悩んでるところでうかがえます。んで、(この子にすがるものが必要なうちは、わたくしが差し伸べたらいいのだ〜もらうもののことばかりを考えていた……)という一節。
2020-07-21 00:08:11チキサニが「女神の御技はこうして手を差し伸べることにあったの」「わたしの手は小さい。大勢を憎むことも、大勢を愛することも、この手には余ってしまう。もっと身近なことからはじめなくてはならなかったのだわ。」と言っていたのとよく似てませんか?
2020-07-21 00:08:11でまあ薄紅天女本編中では苑上が怨霊に切った啖呵ってその後に影響を与えるようなこと起こしてないんですけど、実は本編終了後の史実に重要な意味を残してます。ミソなのは彼女の啖呵を「賀美野」、つまり後の嵯峨天皇が聞いていたことです。
2020-07-21 00:18:11阿高がやったのは修復、つまり兄弟殺しの呪いに剣の最後の力が絡んで制御不能になってしまった状態を消滅させただけなのね。皇の血筋の中に制御ができなくなるほどの剣の力はこれでなくなったんだけど、藤原薬子の変、安殿と賀美野の争いはまた起こってしまうのは確定してる
2020-07-21 00:31:14薬子が毒をあおって自害する、という一文があるので、勾玉三部作の世界線でも薬子の変は起こるのです…。ただ、薬子の変では平城天皇は出家はするけど命は奪われないのね。兄弟の 争いは起こったけど、兄弟殺しの連鎖は止められたわけです。
2020-07-21 00:36:29阿高は修復をしたけど、皇の心を救って兄弟殺しの呪いの傷口が再び開くのを防いだのは実は苑上が神代の力に頼らず自力で考えて掴んだ答えなんですよね。阿高がやったのは本当に修復だけで、神から人の時代への転換点、神の力の庇護からの卒業は実は苑上がやってのけてるんですよ。
2020-07-21 00:37:02伊勢以降、苑上の視野って一気に広がるんですよね。賀美野の世話を焼くのもそうなんですけど、阿高の力は阿高自身にとっては救いではない、じゃあ彼の救いはどこにあるのか、とか、阿高と別れることになった藤太はどんなに切ないだろう、とか
2020-07-21 00:42:11それまでの阿高の一番の理解者って藤太なんですけど、阿高の運命に付いていく人間が、このあたりで藤太から苑上にバトンタッチされます。で、これって物語の上でも重要な転換点で
2020-07-21 00:44:08藤太が阿高に向けてる愛情って、阿高と藤太の結びつきを主体にしてる、皇を含む他の人間より阿高が大事だっていう、阿高を特別扱いする愛情なんですよね。で、苑上がこの時点で阿高に向ける愛情ってそれとは質がちょっと違うんですよ
2020-07-21 00:49:13「誰かを絶望させて救ってもらう救いがあるだろうか、もしも阿高が救いの主なら、彼自身が望みをなくすことなどはありえないのではないだろうか」っていう一文。皇が救われるなら、阿高も救われないとおかしいのではないか、っていう視点ね。これ、藤太にはたどり着けない答えなんですよ。
2020-07-21 00:53:29「皇が救われることを望むなら、その救いである阿高だって救われなくてはいけないのではないか」っていうことを彼女は思ってるんですよね。阿高と皇を対等なもの、対等に扱って然るべきものだと自然に思ってる
2020-07-21 01:00:30阿高の力のおかげで賀美野を助けられた、賀美野を救えたことで自分の中にも巣食っていた皇の呪いに勝るものがあった、だから自分は怨霊にならない、って言ったあたりとか。阿高の力って阿高にとっては周囲を傷つけるもの、周囲に利用されるものだったんですけど、
2020-07-21 01:13:40ちょっと前に、為政者の資質は賀美野>苑上>安殿の順って言ったんですけど、苑上、とにかく視野が広いんですよね。 阿高をただ利用しようとした蝦夷や仲成、田村麻呂…はちょっと微妙だけど(彼は蝦夷の未来のとっかかりに阿高を使おうとしてるので性質がちょっと違う)と違って、
2020-07-21 01:21:48彼女が知ってる社会、つまり皇とそれを取り巻く人々と、阿高達、全員に最善の結果をもたらせないかって考えて動くんですよ、特に賀美野を助けた後は。自分が影響を及ぼせる範囲全体にできるだけ最善の結果をもたらせないかって思考、これ為政者の考えなんですよね
2020-07-21 01:21:49全体最適を考えて動く、自分が関わる人々全員をできるだけ幸せにしようとするっていう彼女の考え方と行動が、つまり阿高のいうところの「鈴は人を幸せにする力を持っている」の正体です。
2020-07-21 01:25:11阿高が藤太や大事な人を置いて安殿と対峙するけどそれは皇のために必要で動かせない、藤太には故郷に大切な人がいて帰らないといけないから阿高にはついていけない→せめて皇宮に居場所がなくて失うものがない自分が彼と一緒に行く
2020-07-21 01:34:02仲成との差が一番顕著で分かりやすいかな。阿高をあの時点で殺そうとする仲成は「数多の民より安殿皇子が大事」なんですけど、苑上は「これ以上多くの民を巻き込まないために、怨霊に取り込まれてしまった安殿皇子を阿高と供に葬る」ことを選んでる。
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