140字小説

2020.5.29より毎日投稿してる140字小説のまとめです。
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月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

朝から気分が良くてお天気も良くて好きな人に会えて幸せいっぱい 「今日は何だかふわふわしちゃうね」 隣に座る彼に話しかけるとそうだねと手を握られた 「もう帰ろうか」 手を引かれて病室に戻る、きっと明日も良い日だ 目が覚めると知らない部屋だった 「あの病室の子7日毎に記憶がなくなるらしい」

2020-10-11 17:34:18
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

額に冷や汗が流れる、手の震えは止まらない なのに目の前の天使はにっこり笑顔を浮かべて問うてくる 「私の1番のお気に入りなの、きっと美味しいよ?」 「君の好きな食べ物なら……食べれる……はず」 目の前の赤く煮立つ激辛鍋にを掬って一口、頭の中に終了のゴングが鳴り響いた 「美味しいのになあ」

2020-10-11 12:50:31
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「ちょっと待って」 良い雰囲気になってキスをしようとした直後の静止の声 出会って1年付き合って3ヶ月、そろそろキスを許してくれたっていいじゃないだろうか? 「……マスクについちゃうからリップ塗ってないの、塗るからちょっと待って」 そう言ってマスクを下げた彼女の照れた顔のなんと可愛いこと

2020-10-11 11:38:55
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

豪華客船が沈む映画を見た 救助を諦めた親子が狭い客室で抱き合っているシーンが印象的だった 「親子は今も海の底に沈んでいるのかな」 初めて映画を見る息子がぴったりとくっついてきた、手に持つタオルはグショグショだ 「2人は一緒に天国に行けたと思うよ」 抱き締めると、彼の瞳の悲しみが薄らいだ

2020-10-10 22:52:12
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「僕にはもう星が見えないよ」 その言葉はただの逃げにしか聞こえなくて無性に腹が立った 「引きこもりがバカなこと言ってるんじゃないわよ」 息を飲む音がしたが、返事はなく通話は切れた 「出てこないならこっちから行ってやる」 あいつの家まで駅5つ分、今から急げば星が出てる時間に間に合うはずだ

2020-10-10 22:11:55
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

近くに大きな日本屋敷があった 友達と探検したかったけど、怖いおじいさんがいるので入ることは出来なかった だけど僕が1人の時は中に入れてくれるのだ 美味しいお茶と和菓子 なんで僕だけ家に入れるのか1度だけ聞いたことがある 「坊やだからさ」 表札が母の旧姓と同じだと知ったのはしばらく後だった

2020-10-10 22:00:35
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「秘密だよ」 人差し指を口に当てて4歳になったばかりの娘に言うと「ひみつ」と唱え始めた そんなことをしていればもうすぐパパが帰宅する頃でただいまーの声に娘が駆けていく 「あのね!今日ママとパパのお誕生日ケーキ作ったのはひみつなんだよ!」 ニコニコな4歳に明日秘密の意味を教えてあげなきゃ

2020-10-10 17:53:11
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

世界にヒビが入る音がした、偶々音が聞こえたのが僕と君だった 君は世界を救いたいと言った、僕は世界なんてどうでもよかった、君と一緒にいれればそれでよかった 「あなたが、選んだことなんだよ?」 眠ったままの君の声が脳に木霊する 救う力を持っていたのは僕で君ではなく世界を選んだのは僕だった

2020-10-10 17:40:21
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「これ、落としましたか?」 地元のスーパーで声をかけられ振り返ると見知った男がいた、幼馴染だついでに手酷く振ってきた元彼 彼が差し出しているのは古いハンカチ 「ありがとう、さようなら」 「ねえ、今でも好きだよ」 「はあ?信じられると思ってるの?」 少し胸が高鳴ったのは昔の恋が残りのせい

2020-10-10 17:29:22
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「雲が止まってるみたい」 見回りをする同僚が呟いた、雲は我々が住む天空の街を外敵から守る障壁だ、回遊する街と共に雲も動いていないと隙だらけになる 「制御室に問題かもしれない」 今思えば気付いたのが運の尽きだった 数時間後、僕らは制御装置破壊という無実の罪で街から追い出されることになる

2020-10-10 17:15:40
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

姉が明日結婚式を挙げる 年子の私達はいつも一緒だった、だからお祝いの気持ちよりも寂しさばかりが募る、共用の部屋で姉はベッドに腰掛けていた 「隣にいてもいいよ」 表情で察したのか、隣を示すから大人しく座る 「マリッジブルー?」 「いやあ、あんたが心配なだけよ」 私もだよ、とは言えなかった

2020-10-10 17:00:20
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

ずっと一緒にいようと誓った君が亡くなっていくつもの季節が通り過ぎていった 抜け殻になった僕は空白を埋めるみたいに君に似た子にばかり愛を囁いた そんな頃慕ってくれる後輩ができた 君と違って賑やかな彼女といる時だけは、君の笑顔がどこかに行ってしまって 薄情な自分に涙が出た #君を忘れた日

2020-10-09 18:00:36
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

その種族は老いと共に視力を失っていく、遙か遠くまで見通した瞳はいつしか宝石に変わるのだ 「宝石はその者が見てきた中で最も美しいものの色になるの、死んだら1番親しい者がそれを持っている決まりなのよ」 そう話してくれた老婆の煌く瞳は明け方の空の色だった 自分の瞳は何色になるだろうと考えた

2020-10-08 18:01:21
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

片思い中の彼とは月に1度だけ委員会で帰りが一緒になる 方面は同じだけど私は特急で彼は各停 前はまだ暑かったのになあと思っていると、不意に彼からカーディガンを渡される 「あのさ、今日言いたいことあるんだ、次の各停乗ってよ」 赤い耳を見て内容が容易に想像つく 特急は目の前を過ぎ去っていった

2020-10-07 18:00:34
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「私、男の子みたいな貴方が好きだったみたい」 そういうと彼女は繋いだ手を離してお揃いのピアスを私に返してきた 去る彼女を見送ることしかできない 約束を違った彼女が残酷なのか、気まぐれな彼女を愛した私が愚かなのか お揃いの髪型にしたくて密かに伸ばしていた襟足がうなじに張り付いて鬱陶しい

2020-10-06 18:01:15
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

絶賛追い込み実験中の友人に好物の葡萄を差し入れた 3徹中の彼はいつもより饒舌だ 「葡萄はすごい、種は油が取れるし皮は肥料にできる、実は疲労回復効果もあって含まれている化合物から通信機器を作った時代もあったんだ」 今度無人島に1つだけ持っていきたい物を聞かれたら迷わず科学者って答えよう

2020-10-05 18:00:53
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

妹とは生まれた時から正反対だ 私が右利きなら彼女は左利き、私の好きな食べ物を彼女は嫌いで私は国語が得意で彼女は体育が得意 お腹の中では1人の人間だったみたいに助け合って生きてきた だから今日が恐ろしい 妹が白いドレスを着て祝福されている時私は2人共好きな空色のドレスの裾を握り締めていた

2020-10-04 18:00:54
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

パートで品出しをしていると何かに引っ張られたような気がして、袖を掴む小さな紅葉が一つ 会計待ちの母に抱かれた赤ちゃんだった 顔を見ると犯罪級の笑顔、声をかけないわけがない ひとしきりお母さんと話して赤ちゃんに構って別れた スーパーを出て行く親子を見ながら、私はもう誰もいない腹を撫でた

2020-10-03 18:01:02
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

「あんた不敗のまじないはずるでしょ」 騎馬戦を眺める少女に友人が声をかける、咎められた少女は呆気からんと言う 「みんなが使えないから禁止なんてそれこそずるよ、呪術師は不利じゃない」 反省の色も見えない天才の少女に友人は頭を抱えた ロボットを見事に操る少年は厄介な女に好かれたものである

2020-10-02 21:32:07
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

魔法高校の体育祭 魔法教育のエリート達が美しく強力な魔法を駆使して競技に挑む姿は世界中の人が注目する 中でも魔法駆動ロボットによる騎馬戦は見せ場だ 会場の隅の緊張で死にそうな少年の元に少女は駆け寄る 「見つけた」 と自らの両手で冷え切った手を包んだ 「絶対に負けないおまじないかけるよ」

2020-10-02 21:00:21
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

うちの父は無口で頑固でハゲている 母は可愛くて小さくて私の姉に間違われたら浮かれちゃうような人 馴れ初めが想像できなくてお母さんに聞いたらびっくり、告白もプロポーズもお母さんからだって 「結婚の理由?デートして別れる時寂しそうな顔するお父さんともっと一緒にいたかったの」 ご馳走様です

2020-10-02 18:01:21
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

友人が彼氏と別れたという、慰めるよと食事に誘った あわよくば長年の片思いを実らせたいという思惑もある 彼女は気丈だったが、以前は一滴も飲まなかった酒を驚くほど飲んでいた 「お酒を飲めば忘れられると思ったけど、そんなことないのね」 その時、彼女の傷が癒えるまでこの思いは伝えないと決めた

2020-10-01 18:01:18
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

蝉の声が鈴虫の音に変わり待っていた涼風が冷たく思えるようになった 夏が逝ってしまったこと知りながらも、目を閉じて夏をなぞることを辞められない 鮮烈に克明に、それでいて儚く終わりを迎える季節 私たちは何度でも夏を夢見よう、思い出そう、懐かしもう それがあの夏への餞になると信じているから

2020-09-30 21:01:45
月並海🌔繁忙期が終わるまで休眠 @badED_

彼は文字通り清廉潔白の人だった シャツには汗染みも皺もなく話すことに矛盾がない だから彼からのラブレターを見て驚いた 小学生女子が書いたような丸文字だったのだ 「ふふ」 思わず笑ってしまい彼は頬を赤らめて怪訝な顔をした でも完璧な彼の可愛らしい普通なところに心を奪われてしまったのである

2020-09-30 18:03:12
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