「ロスジェネ」ブームが終焉した理由と、赤木智弘さんが気づいた「エコヒイキ」問題

2011年度の労働経済白書の発表を受けての議論。前半では、ポストロスジェネ世代では正社員化したあとこそが過大なのではないか、また若者の労働運動がどのような課題を抱えているかをNPO法人POSSEの今野晴貴が論じてます。 その流れから後半では、赤木智弘さんが、社会学者の久保田裕之さんとなぜ自分は若年男性労働者を「えこひいき」するのかを論じています。
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今野晴貴 @konno_haruki

朝日夕刊「「ポスト団塊ジュニア世代」正社員へ転換進まず」 http://t.co/89xvqj5 労働経済白書の分析を通じ、団塊ジュニアは就職が厳しかった一方でその後正社員転換が進み、ポスト団塊ジュニア世代はいつまでも正社員化が進まないというコントラストが示された。

2011-07-08 18:15:40
今野晴貴 @konno_haruki

「ロスジェネ」がブームになり、一部の世代が「割を食っている」という説明が頻繁になされた。だが、実際には「一部の世代」が問題になっているのではなく、社会全体が変化していると見るべきだった。実際、ロスジェネ世代よりも、ポストロスジェネ世代でそうした「変化」の影響はより強く現れている

2011-07-08 18:17:11
今野晴貴 @konno_haruki

若い世代ほど正社員になれなかったことの意味は二つある。第一に、戦後確立された日本型雇用の入り口が新規一括採用であったように、逆に非正規雇用への切り替えも若い世代の採用を媒介にして行なわれた。つまり、若い世代ほど変化が激しくなったのは事実である。

2011-07-08 18:26:14
今野晴貴 @konno_haruki

第二に、学卒採用が「非正規雇用の入り口」となったことは、「雇用の変化」という以上のインパクトを社会に与えた。それは、新規一括採用に基づく「安定雇用への参入」が日本社会の安定に大きく寄与してきたからだ。学卒から仕事への円滑な以降は、経済効率以上に社会統合の要素でもあったのである。

2011-07-08 18:28:50
今野晴貴 @konno_haruki

今からしてみれば、団塊ジュニア世代の雇用変化はそれほど大きいものではない。私たちの世代は4割近くが非正規で、しかも正規化しない。その上正社員の半分近くが賞与か昇給がない「周辺的正社員」である。「安定への入り口」の喪失が、その当時強烈なインパクトを与えた事実が伺える。

2011-07-08 18:31:15
今野晴貴 @konno_haruki

さらにいうなら、ロスジェネ世代(≒段階ジュニア)の方々は、もともと「既得権者」なのである。第三世界から富を収奪し、日雇労働や外国人の労働の上に膨れあがった「バブル景気」を学生時代に謳歌し、これからも謳歌するはずだった。この「権利」の喪失感こそが「ロスジェネ・ブーム」ではなかったか

2011-07-08 18:33:22
今野晴貴 @konno_haruki

もちろん、そうした剥奪感自体は想像にかたくなく、耐え難いものであったろう。だが、二つの落とし穴がある。一つは、ロスジェネ世代の中でも割と高学歴層はすぐに正規化している一方で、低学歴層はそうではない。つまり、彼ら世代の中のリアリティーにも大きな開きがある

2011-07-08 18:35:09
今野晴貴 @konno_haruki

もう一つは、その次の世代についての認識を難しくしている。ロスジェネ世代と私たちポスト世代では生活実感がまったくことなるのである。ロスジェネ世代は「既得権の喪失」と「やっぱりがんばれば正社員になれた」という成功体験だが、私たちの場合は「はじめから何もない」という世代実感ではないか。

2011-07-08 18:36:53
今野晴貴 @konno_haruki

意外とロスジェネの人たちには「がんばれば何とかなる」思想が強い。それは、高学歴層を中心に事実がそうだったからだろう。私たちの場合には明らかに全体として希望がない中で、わずかな「いい仕事」を露骨な競争主義で奪い合う。だから、全体が「どうにかなる」実感などどこにもないのである。

2011-07-08 18:40:43
今野晴貴 @konno_haruki

ロスジェネ世代とポストロスジェネ世代では世界観、生活実感が大きく異なる。それにもかかわらず、メディアではずっと一くくりに論じられてきた。いつも取材されるときに、そこの説明から入らなければならなかった。しかし、これまたいつも結局「ロスジェネの運動の一つ」として紹介されてしまっていた

2011-07-08 18:43:07
赤木智弘 @T_akagi

そもそも「非正規労働を経て正社員になる」なんていうルートがないんだから、転換が進むわけないだろアホか:asahi.com(朝日新聞社):ポスト団塊ジュニア世代、正社員へ転換進まず - 社会 http://bit.ly/oALayK

2011-07-08 17:01:30
今野晴貴 @konno_haruki

ルートがない@T_akagi いや、この点についてはこの間研究で、意外と転換が進んでいる事実が明らかになっています。まあ、全面的に、というほどの規模ではないですが。問題は、どの部分が転換しているのかと、転換後にどのような労働になっているのかでしょう。正社員万能論も危険ですから。

2011-07-08 18:49:28
赤木智弘 @T_akagi

.@golgiasu 具体的な研究内容が分かれば教えていただけるとありがたいです。

2011-07-08 18:55:55
今野晴貴 @konno_haruki

@T_akagi 例えば、昨年目にしたものですと、玄田有史『人間に格はない』で論じられています。非正規雇用が正社員化への一つのルートであると分析し、その内実を統計を元に考察するという趣旨です。同一企業内で正社員化した場合の働条件があがらない傾向など、興味深い指摘が見られますよ。

2011-07-08 19:29:59
赤木智弘 @T_akagi

@golgiasu あとでチェックしておきます。ありがとうございました。

2011-07-08 21:11:52
斎藤幸平 @koheisaito0131

「ロスジェネ」は結局社会構造を分析しないで、言説上で対立軸を作り出すことで社会のルサンチマンを解消しただけで、実践的には全く役に立たなかったということ。

2011-07-08 18:25:01
今野晴貴 @konno_haruki

いや、言説上で対立軸を作り出すことはむしろよかったのだが、自ら創り出した「空虚なシニフィアン」に逆に支配されてしまった。全く即自的なんですよ@koheisaito0131 「ロスジェネ」は結局社会構造を分析しないで、言説上で対立軸を作り出すことで社会のルサンチマンを解消しただけ

2011-07-08 19:14:50
NPO法人POSSE事務局長/川村遼平 @kwmr_posse

そもそも今の就活生はロスジェネって言葉知らないですしね。ポストというかロストロスジェネ世代。 RT @golgiasu: いや、言説上で対立軸を作り出すことはむしろよかったのだが、自ら創り出した「空虚なシニフィアン」に逆に支配されてしまった。 @koheisaito0131

2011-07-08 23:40:13
斎藤幸平 @koheisaito0131

そうか、確かにあれは2年くらいの一過性の現象だったものな。「空虚なシニフィアン」の意味がただ内容的に空虚だったという。 RT @kwmr_posse: そもそも今の就活生はロスジェネって言葉知らないですしね。ポストというかロストロスジェネ世代。 RT @golgiasu

2011-07-08 23:51:17
今野晴貴 @konno_haruki

@koheisaito0131 どちらにもいきえた。私も世代間の利害対立や、言説はかなりのっかりました問題は、運動が世代間の対抗を梃子に、個人加盟ユニオンなどの組織化がすすんだのか、知識人はその次の戦略を企図できていたのかということです。両方進まなかったから問題なんですよ。

2011-07-09 01:41:18
今野晴貴 @konno_haruki

@koheisaito0131 実際、後藤和智君や雨宮処凛さんに見られる論者が、世代間問題をてこにして、「格差」の問題を主要な問題として引き上げたのだと思います。ですから、「若者と格差」がキーワードになった。その後の実践問題については『若者の現在』に寄せた論考で考察しています。

2011-07-09 14:26:29
今野晴貴 @konno_haruki

今野晴貴「格差問題をめぐる若者たちの政治的実践―「異議申し立て」から参加へ―」『若者の現在<政治>』 http://t.co/4vM1vwO この論稿では、格差問題の本質を若者の「労働政治」からの排除であると分析しつつ、「若者の運動」の限界と展望について論じました。

2011-07-09 14:30:41
今野晴貴 @konno_haruki

最近よく「マスコミで格差が扱わなくなったが、どう思うか」と聞かれるようになった」「メディアの関心の退潮と同時に「下火」になったと受け止められるような取り組みだとしたら、これまでのさまざまな報道や取り組みはなんだったのか? と自問せざるを得ない」『若者の現在<政治>』論稿より

2011-07-09 14:35:41
今野晴貴 @konno_haruki

「格差問題をめぐる若者の取り組みがどのように成功し、また現在どのような課題を抱えているのだろうか」 こうした問いを立てつつ、実践的問題の限界は、明らかに運動の一過性の「ブーム」敵性質にあると分析しました。労働組合やNPOなどの具体的な運動作りが、私たちの世代はまだまだ弱い

2011-07-09 14:37:14
今野晴貴 @konno_haruki

こうした傾向はあらゆる場面でいえます。現在私は被災地での継続的な支援活動を行なっていますが、「継続的なボランティア」組織が他ではなかなか育っていないように見えます。やはり、ボランティアや運動は一過性のものと見られがちです。そういう方がいても、組織として継続性を持つことが大切です。

2011-07-09 14:38:52
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