湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』読書メモ集

湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか――人糞地理学ことはじめ』(ちくま新書)の読書メモをまとめました。
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荒木優太 @arishima_takeo

湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』。毒にもなれば(伝染病の原因)、薬にもなる(肥料)。ウンコに含まれた糞/尿。なんかデリダっぽいなと思った。逆にいえば、ウンコを知ればデリダの難解文を読まなくてもよくなる!

2020-10-18 18:58:02
荒木優太 @arishima_takeo

関係ないが、「土人」が差別語になるのに「土民」(石川三四郎)がそうならないのは不思議だな。まあ適当な文脈があるんだろうが。

2020-10-18 19:01:25
荒木優太 @arishima_takeo

ウンコがかつてのように農地に還れなくなったのは、ウンコが「汚い」からなのではなく、私たち自身がウンコに含まれる物質を変化させてきたせいなのである。by湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』167

2020-10-18 19:17:52
荒木優太 @arishima_takeo

「人糞地理学」の命名は西岡秀雄『トイレットペーパーの文化誌――人糞地理学入門』(論創社、1987)に由来するそうだ。こちらも読もう。

2020-10-18 20:09:38
荒木優太 @arishima_takeo

私があらためて驚いたのは、オイルショックを経た約半世紀の間に、これほどトイレや下水処理の技術が高度になっても、やはり私たちは、「ウンコは紙で拭くものだ」と信じて疑わずに生きているということだった。by湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』171

2020-10-18 20:12:12
荒木優太 @arishima_takeo

「一九九〇年代後半、大学生だった私はアルバイト先の小さな塾で、同じくアルバイトをしていた都内の女子大生に「あなたって、土臭いわね。あら、本当に靴に土がついているのね、いったいどこから来たの?」と言われたことがある」(湯澤規子『ウンコ』)。すごい時代だ。

2020-10-18 20:14:54
荒木優太 @arishima_takeo

湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』読了。徳富蘆花、火野葦平『糞尿譚』、寺田寅彦「浅草紙」など、ここぞといういいタイミングで好きな文学作品が引かれるのでテンション上がった。

2020-10-18 20:22:31
荒木優太 @arishima_takeo

火野葦平『糞尿譚』については小さな論を書いたことがある。そういえば、これは本には所収してなかったな。puboo.jp/book/57997

2020-10-18 20:24:13
荒木優太 @arishima_takeo

ただ、〈ウンコ=汚物とする近代〉vs〈ウンコと共生するう前近代〉の図式が、あまりにも図式的すぎるのではないか、とは思った。特に、抑圧された後者に「手」や「女性」という他の抑圧項へのスライドを許してしまうと、よく見る近代批判に終わっちゃうのでは。

2020-10-18 20:30:37
荒木優太 @arishima_takeo

たとえば、「素手」への忌避感とウンコ=汚物観の結びつけは(p197)、図式としては分かりやすいのだが、一方、ハンドメイド品が温もりや希少性といった付加価値を与えることを考えると、果たして上手くいってるかどうか。

2020-10-18 20:33:50
荒木優太 @arishima_takeo

「近代は人間の身体を忘れさせちゃってよくないよね~」みたいなところに落ち着くとしたら、私としては余り面白くないのだが、どうだろうか。むしろ本書のなかで批判的に言及されている下肥として再利用できない糞尿を生み出せたことに万歳を挙げたい気がするが。

2020-10-18 20:39:07
荒木優太 @arishima_takeo

糞尿がエコノミーに回収されるということは、我々の身体が固有の土に縛られており、あるべき場所を前もって指定する宿命論に縛られていることの証だから。石川三四郎の「土民」もそうだが、私にはそれは右翼思想にみえる。

2020-10-18 20:44:26
荒木優太 @arishima_takeo

エコノミーの外部を目指さなければ革命はない。ならば、グローバルな食物の混在を介して土との絆を断った、その「汚泥」のなかに改めて立つべきでは。〈本来は汚くないのに近代のせいで汚くされたもの〉ではなく〈どこほど汚くてもいまの私を確実につくるもの〉で。

2020-10-18 20:49:50
荒木優太 @arishima_takeo

『有島武郎』のなかで、地人論(人文地理学)とのアンビバレントな格闘のすえ、『或る施療患者』の「土くれ」を本来の居場所としてではなく、そういう本来性を攪乱する場所として読んだのは、そういう想いがあったからなのでした。

2020-10-18 20:53:28
荒木優太 @arishima_takeo

有島本では、地人論的な発想、国家に先行する土(=アナーキズム)の発想のなかで有島の成長が描かれるわけだが、同時に、最後までこれに屈服しなかった有島像も強調している。拙著の分かりにくさをつくっている原因だろうが、それでも、有島をただのアナキストの一味として描くべきではないと思った。

2020-10-18 20:57:18
荒木優太 @arishima_takeo

いま有島を読むならば、このどっちつかずさをぜひ味わってほしい。そうでもなけりゃ大杉栄とかエリゼ・ルクリュでも読んでりゃいい(そしてそれはそれで重要なことだろう)。優柔不断であることがラディカルである局面がたしかにあるのだ。

2020-10-18 21:00:18
荒木優太 @arishima_takeo

そんなことを明日のイベントで話せたらいいね(すかさず宣伝)。loft-prj.co.jp/schedule/naked…

2020-10-18 21:01:00
荒木優太 @arishima_takeo

あ、一応断っておきますけど、湯澤本はこれはこれで面白かったですよ。『胃袋の近代』とかも良さそう。読みたい。

2020-10-18 21:02:09