改めて、「ゴシック」について考えてみよう。

「ゴシックとはこういうものだ」という呟きがたまにあるので、専門書3冊から引用してみました。(自分自身の言葉で説明すると、客観性を欠いた持論に終わってしまうため) ゴシックについて考察する時に参考になれば幸いです。
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「ゴシック」と「ゴス」

墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

「従って、特別な喜びをもって、本書の日本語版を私は歓迎している。だが、私がそうするのは、以下のことを知っているからである。日本人の『ゴシック』に対する理解と向き合うためには、→

2020-11-01 17:12:37
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→『ゴシック』と『ゴス(Goth)』とを明確に区別しなければならないということである。『ゴシック』とは、文学的及び文化的な一つの伝統と言ってよいだろう。一方『ゴス』とは、もっと限定した形で、ファッションや、ライフスタイルや自己表現の様々な選択を指すものである。」→

2020-11-01 17:13:06
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→(「恐怖の文学 その社会的・心理的考察 ~1765年から1872年までの英米ゴシック文学の歴史~ 」デイヴィッド・パンター 著 石月正伸・他 訳 松柏社。日本語版出版に際して書かれた前書きより)

2020-11-01 17:13:18

で、「ゴシック」って?

墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→「色ならば黒。時間なら夜か夕暮れ。場所は文字通りゴシック建築の中か、それに準ずるような荒涼感と薄暗さをもつ廃墟や古い建築物のあるところ。現代より過去。古めかしい装い。温かみより冷たさ。怪物・異形・異端・悪・苦痛・死の表現。損なわれたものや損なわれた身体。身体の改変・変容。 →

2020-11-01 17:10:49
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ 物語として描かれる場合には暴力と惨劇。怪奇と恐怖。猟奇的なもの。頽廃的なもの。あるいは一転して無垢なものへの憧憬。その表現としての人形。少女趣味。様式美の尊重。両性具有・天使・悪魔など、西洋由来の神秘的イメージ。驚異。崇高さへの傾倒。 →

2020-11-01 17:11:10
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ 終末観。装飾的・儀式的・呪術的なしぐさや振る舞い。夢と幻想への耽溺。別世界への夢想。アンチキリスト。アンチ・ヒューマン。  こうした要素によってゴシックの精神は構成される。すべて決まっているというのではないが、基本となる表象・意匠・道具立てなどは相当歴史的にできあがっている。」

2020-11-01 17:11:39
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

「ゴシックハート」(高原英理著 講談社 2004年)より

2020-11-01 17:12:02

ただし

墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

「『ゴシック』という用語は、西洋近代の創造力における、不吉な一隅に対する名称として確立されてきた。けれどもその用語は、指示対象を正確に合意しているというよりも、直感的な思いつきによって機能しているように見える。言葉そのものの用法に関わる、困難な点もいくつかある。なかでも、→

2020-11-01 17:15:05
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ こんにち最も明白であるのは、文学における意味合いと建築におけるそれとの不一致である。建築の文脈では、『ゴシック』は、12世紀後半から15世紀にかけて花開いたヨーロッパの建築と装飾の様式を指すのであるが、文学や映画を論じる際には、 →

2020-11-01 17:15:31
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ まったく異なった媒体に数百年後に現れた作品を指すのである。このように、大きく時代が異なった二つの産物に対して同時に適用された用語は、何らかの修飾語をくっつけてくれと要求しているように思える。実際、建築史家たちが、中世後期のゴシックを、 →

2020-11-01 17:16:07
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ 19世紀のネオ=ゴシックやゴシック復興様式と区別したのは、賢明である。より論理的な世界においてなら、現代の文学や映画の『ゴシック』に対して、この種のより明確な命名を適用することを、我々は学んでいたのかもしれない。とはいえ、我々が受け継いできた混乱を御破算にするには、 →

2020-11-01 17:16:31
墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

→ もちろんあまりに遅すぎる。たとえそれが可能であるとしても、『ネオ=ゴシック・フィクション』であるとか、不十分な命名を行って、より困難な状況に陥るだけであろう」 (「クリス・ボルティック選 ゴシック短編小説集」序論より)

2020-11-01 17:17:23

例外

「今更、新しく『○○ゴシック』と名付けたりするのは困難」とあるけれど、ある分野だけ例外があります。
それがファッション。
ゴスファッションだけは、ゴシックロックに伴ってTrad-Gothなるスタイルが登場して以降、新しいスタイルが現れるとそれに名前がついて、ゴシックロリィタもその一つ。(海外ではJ-Gothと呼ばれている)
以下はDebiantArtでTrelliaさんという人が書いた、ゴシックファッションの相関図。
https://www.deviantart.com/trellia/art/The-Goth-stereo-Types-Family-Tree-410089839

もっとも、この図も2013年に描かれたものなので少し古く、またEmoファッションのようにゴシックの枠組みから脱け出しているものや、ゴスの中でもかなり少数派、はたまた誰もやっていないスタイルも含まれているので、そういった点は注意。あくまで参考に、というところで留めておいてください。

以上。

オマケ

そもそもゴシックの歴史って?ということで、TEDが投稿したYouTube動画へのリンクを貼っておきます。英語での解説ですが、画像右下の歯車マーク(設定)をクリック→字幕→日本語で日本語字幕が表示されるようになります。

墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

ゴス(ゴート)の歴史を手短に ― ダン・アダムス youtu.be/STOJftffOqs @YouTubeより

2020-11-04 13:59:17
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コメント欄に「メタルの話じゃないの!?」とあったんで、その解説をしているYouTube動画を紹介しておきます。(前編と後編に分かれている)

墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

Metal Guitar TV【ゴシックメタルアルバム5選・前編 アナセマ・パラダイスロスト The Best 5 albums of Goth... youtu.be/ymFE405wDB0 @YouTubeより

2020-10-29 18:55:02
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墨田狗夷@複垢 @InuiSumida

Metal Guitar TV【後編ゴシックメタルアルバム5選・アネク ギャザリング Vuur サード・アンド・ザ・モータル Best 5 a... youtu.be/nKwI0JHG_RA

2020-10-29 18:57:26
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