【ノット・ダウン】福間健二 #k2fact278

12月5日から14日まで。日々、やるべきことをやって、最後はお疲れさまと自分に言っておいしい酒を飲む、というふうにすごしたいが、なかなかそうは行かない。なにか、達成感なく、時間がどんどん過ぎていく。それを食いとめようとしながら、気がつくとぼんやりしている。そんな自分を意識しながら、書きはじめた。1に番号を入れわすれ、4を二回やってしまい、7がない。8、9、『パラダイス・ロスト』と『急にたどりついてしまう』が上映される松山への旅のなかで書いた。 音楽は、ずばりタイトルをもらったThe Clash の「I'm Not Down」。 https://www.youtube.com/watch?v=uV6-vY4O5us
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福間健二 @acasaazul

老いた人の声が、機械を通って、聞く者をレッスンの岸辺に立たせる。増幅、休止、つめたい手。どう生きる。そばに来る生きものの息にどう反応するかだ。その機械の中を往復してわかること、まだあった。二人のために書いておこう。二人でいても溺れる。枯れることもある。(ノット・ダウン)#k2fact278

2020-12-05 12:08:09
福間健二 @acasaazul

きのう言ったこと。きょう言うこと。過敏な機械を通って。痛くないこと。痛いこと。気分次第で、つぶれて、それでも生まれる前からの音楽に反発する耳が拾う声の、近未来。星をどこに落とすかだ。終わり方のわからないスプーン、洗った。窓の修理はまだ。晴れている。(ノット・ダウン2)#k2fact278

2020-12-06 14:27:43
福間健二 @acasaazul

明るい南。室内の鉢植えでも元気な植物に聞きたいこと、いくつか頭に浮かび、聞かせたい歌まで生まれそうだ。では、台所の物音なんか気にするな。だれかいても、芸術やめてくれとか言ってないって。この指の隙間を抜ける光。社会を横断するのと別の光ではないはずだが。(ノット・ダウン3)#k2fact278

2020-12-07 16:57:12
福間健二 @acasaazul

白菜とゆで卵と天かす入れた塩ラーメン。光のなかで、ひとりで。助かった。何度も思って、スープを全部飲む。近くの小学校のチャイムの音。CDのあいだから、何十年も前の、返事を書かなかった手紙。どんぶりをていねいに洗う。たまらん坂をのぼってくる友情のために。(ノット・ダウン4)#k2fact278

2020-12-08 10:32:35
福間健二 @acasaazul

反ナチス同盟とクラッシュのライヴ、ロンドンでくらった霊能注射、そしてジーナという女性のこと。書いてある。グラシン紙にボールペンの硬い字、一九七八年十二月のベルリンからの手紙。差出人はその半年後から行方不明。クラッシュをかけようと思うが、一瞬ためらう。(ノット・ダウン4)#k2fact278

2020-12-09 11:20:16
福間健二 @acasaazul

いつのまにか、木に、電線に、屋根に、見張りの鳥たち。いやって言えない。救われて従順になる耳が聞く音、たとえばやさしい雨の音。複雑さのない組曲。必要だからでも楽しいからでもなく爪先で歩むジーナ。きみを見つめた。アゲインスト、状態よりもそのひどい解釈に。(ノット・ダウン5)#k2fact278

2020-12-10 10:36:18
福間健二 @acasaazul

終わりのないダンス。きみひとりが相手ではなく、いまも故郷を追われた人たちの冬の青い氷を踏んでいる。きみがなりたかったもの、よくわからないけど、食器とか洗わない同盟は悲惨だ。いつも明日へと引きのばされる現実。点火する具体的な人生の欠如。言ってしまった。(ノット・ダウン6)#k2fact278

2020-12-11 10:24:42
福間健二 @acasaazul

前の席には座り方が決まらない人。後には沈黙が怖いのか、英語話せるのがうれしいのか、しゃべりつづけるカップル。そんなバス旅。自由がぶつかる気まぐれな現実の、ほんの一部。目つきの悪い司祭がいつも不意に現れて希望の度合いを変化させる。裏道、そこに吹く風も。(ノット・ダウン8)#k2fact278

2020-12-12 09:32:46
福間健二 @acasaazul

どう逃げた。自殺したジルやわりと普通の先生になったアキラのようにではなく、ただ小さな鬼たちとの約束を守る人間として。熱いシャワーにホッとして。二本脚、ときには一本脚。となれば、もうこのぼくの話だ。チャイムのあとの放送を聞く。動く影に囲まれる島を出る。(ノット・ダウン9)#k2fact278

2020-12-13 09:57:51
福間健二 @acasaazul

子どもたちの安全のために。放送の、先生の声。それが光のように横断するフレームに戻る。大過去からのこわばった首すじの、老いた人の、たまらん坂をのぼってくる人の、手紙をくれた人の、何が我慢できないというのか。アイム・ノット・ダウン。機械をいくつ通っても。(ノット・ダウン10)#k2fact278

2020-12-14 09:39:00