高橋健太郎さんのブルーズ論考 1. (2014-10~2020-08)

「健太郎が語るアメリカ音楽史」シリーズ その2 「その2」というか、「その1」たる https://togetter.com/li/1140179 は、このまとめ内に収まっている感じです。。。
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kentarotakahashi @kentarotakahash

ボビー・チャールスのこれは、12小節のブルーズ進行からはかけ離れているし、ブルーノートの一つすらメロの中にはない。そういう意味でも、日本的な「……ブルース」に近い世界。 Bobby Charles - Tennessee Blues youtube.com/watch?v=dFzBmP…

2014-10-08 16:47:26
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kentarotakahashi @kentarotakahash

アメリカでも、「……ブルーズ」というタイトルの曲で、12小節進行なのは何割くらいだろう? ある時代のブルーズとジャズでは大半を占めたが、それ以外の場所では違うもの多いよね。

2014-10-08 16:52:33
kentarotakahashi @kentarotakahash

マリオン・ハリスの「パラダイス・ブルーズ」は1917年。ブルーノートは満載だが、形式は12小節進行にはまったく囚われていない。 Marion Harris - Paradise blues youtube.com/watch?v=79juKd…

2014-10-08 16:56:22
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kentarotakahashi @kentarotakahash

W・C・ハンディの「メンフィス・ブルーズ」について、細馬さんは書いていた。実は僕もサンレコ連載の中で書いている。あの曲が12小節形式だけではないこと、ルイ・アームストロングなどの歌ものヴァージョンは16小節の部分から歌い出していること、など基本認識は共通する。

2015-03-18 21:45:12
kentarotakahashi @kentarotakahash

そこから先に指摘することは、それぞれ違うんだけれど、でも、細馬さんもまっさらな状態で耳を澄ましたから、それが書けたのは分かるんだよね。そして、「メンフィス・ブルーズ」から「セントルイス・ブルーズ」への飛躍と、後者の中にあるタンゴ・パートの分析には悔しくて、舌を噛みました。

2015-03-18 21:55:26
kentarotakahashi @kentarotakahash

ブルーズというのは、ブルーノート・スケールにしても、12小節進行にしても、どこか落ち着かないものを残す。で、それは1900年代位まで、米国の黒人の大多数にとっても、そうだったように思えるのだよね。W・C・ハンディなどにしても、戸惑いながら、それを扱っていたのではないだろうか。

2015-03-19 20:57:04
kentarotakahashi @kentarotakahash

フィスク・ジュビリー・シンガーズの1909〜1911年の録音を一生懸命聞いたんだけれど、ブルージーな感覚というのは見出せなかった。ということは、その頃の黒人霊歌にはまだ、ハーモニーの内部でもブルーノートの使用というのは、ほとんどなかったのではないかと思われる。

2015-03-19 21:03:04
kentarotakahashi @kentarotakahash

これがヴァージニア・ジュビリー・シンガーズの1926〜27年録音になったりすると、ベース・パートがブルーノートをしばしば取るようになっている。 amazon.co.jp/gp/product/B00… でも、その頃にはブルーズのレコードが人気を博している訳で、その影響である可能性もある。

2015-03-19 21:06:24
kentarotakahashi @kentarotakahash

もっと早い時期から、バーバーショップ・ハーモニーの中でブルーノートが使われていたことを示す音源(でなければ文献でもいいけれど)はあるのだろうか? トップノートに使われるブルーノートではなくて、コードの中に潜んだそれ(下部構造の濁り感を示すもの)が出てくるのはいつ頃か、が知りたい。

2015-03-19 21:12:04
kentarotakahashi @kentarotakahash

南アフリカのムブーベにブルージーな要素がほとんどないことから、そこに影響を与えたオルフェウス・マクドゥーのミンストレル・ショーにも、ブルーノートを入れたコーラスはなかったと考えて、間違いないだろう。

2015-03-19 21:15:05
kentarotakahashi @kentarotakahash

ちなみに、僕が知る最も古いブルーノートが聞こえるレコードは1897年録音のこれだ。 Poor Mourner - Cousins and Demoss youtube.com/watch?v=IvyYx2… でも、この二人はニューヨークで活動していたシンガー/コメディアンのようである。

2015-03-19 21:28:38
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kentarotakahashi @kentarotakahash

チューリップ(さいたさいた、の童謡)のアレンジをしてるんだが、これって、12小節進行だったのな。この曲歌って育った日本人は、実はブルーズの12進行耐性が強いのかもしれん。

2015-05-22 14:56:42
kentarotakahashi @kentarotakahash

というのも、二十世紀初頭に作曲されたブルーズ作品には、作曲家がブルーズの12小節に違和感を抱き、四苦八苦した跡が見て取れるからだ。それは白人の作曲家、黒人の作曲家を問わず。

2015-05-22 15:04:10
kentarotakahashi @kentarotakahash

W・C・ハンディの「メンフィス・ブルーズ」も「セントルイス・ブルーズ」も、あるいは、それより早い1908年にニューオルリンズの白人作曲家、アントニオ・マッジオが発表した「アイヴ・ガット・ザ・ブルーズ」も純粋な12小節進行ではない。12小節進行と16小節進行が組合わさっている。

2015-05-22 15:14:14
kentarotakahashi @kentarotakahash

これはフォークロアから拾い上げた12小節のブルーズに、作曲家から展開を書き加えたが、12小節では上手く作れずに、12+16のような形式になってしまったのだと考えられる。白人、黒人を問わず、大多数のアメリカ人にとって、12小節進行は辻褄の合わない感覚を残すものだったのだろう。

2015-05-22 15:14:31
kentarotakahashi @kentarotakahash

サイタ サイタ チューリップ ノ ハナガ ナランダ ナランダ アカ シロ キイロ ドノ ハナミテモ キレイダナ まさしく、20世紀初頭のアメリカで「奇妙だ」とされた12小節の3行詩の形式だ。これを子供の頃から歌ってれば、ブルーズの12小節進行に違和感などないはず。

2015-05-22 15:19:04
kentarotakahashi @kentarotakahash

しかも、ブルーズの場合は12小節で一回りするが、次の一回りに踏み出す直前、12小節目にドミナントのコードを入れる。ここでV→Iの重力を利用して、13小節目は次の一巡りのアタマだ、と意識づけする訳だ。ところが「チューリップ」の場合は12小節目はトニックに戻る。

2015-05-22 15:23:36
kentarotakahashi @kentarotakahash

「チューリップ」は12小節目でトニックに解決。二番のアタマになる13小節目もトニックだから、I→Iの何の重力も働かない状態だが、日本人は違和感なく、13小節目で二番を歌い始める。これが違和感なくできる感覚があることは、結構デカイかもしれない。

2015-05-22 15:26:34
kentarotakahashi @kentarotakahash

でもって、こないだ見つけたボブ・ディラン唱法の源流ともいえるこの曲のことを調べているんだけれど。幾つか興味深い点が。 "Just Because She Made Dem Goo Goo Eyes" youtube.com/watch?v=ZKZyCj…

2016-10-15 08:18:01
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まとめ ボブ・ディランのような崩した歌い方の源流 「高橋健太郎 Just Because She Made Dem Goo Goo Eyes の旅」 12960 pv 82 15 users 209
kentarotakahashi @kentarotakahash

というのは、この曲、Aメロが12小節進行なんですよ。サブドミナントには進行しない、ドミナント→トニックの解決部分だけが三行目に来る変形ブルーズとも言える。しかし、この曲は1900年には楽譜出版されている。W・C・ハンディがブルーズを発見する3年前です。

2016-10-15 08:24:24
kentarotakahashi @kentarotakahash

曲は元々はミンストレル・ショー由来のクーン・ソング(黒人の振る舞いを面白おかしく歌ったもの)です。その中にブルーズ的な12小節進行があり、それをボブ・ディラン的な崩した歌唱法で歌っていた歌手がいた訳です。1900年代には。これ、アメリカ音楽史を書き換えてしまわないか?

2016-10-15 08:28:37
kentarotakahashi @kentarotakahash

と思ったら、ちゃんと研究されてました。『Long Lost Blues: Popular Blues in America, 1850-1920』という本の中で、12小節ブルーズ進行の先駆として、譜面入りで取り上げられている。 amzn.to/2dQH4Bm

2016-10-15 08:34:10
kentarotakahashi @kentarotakahash

「Just Because She Made Dem Goo Goo Eyes」の作曲者はヒューギー・キャノン(こないだ間違ってウォルター・ウィルソンと書いた)。作詞はジョン・クイーン。さっきの本の中には二人の写真まであった。 pic.twitter.com/idgvQyNQXz

2016-10-15 08:43:28
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