ストレイトロード:ルート140(53周目)
- Rista_Bakeya
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外へ逃げたと思われた幼体は、翌朝を迎えてもまだ車内にいた。荷台に積まれた小さな籠を寝床に決めたようだ。薄い翼では到底飛べないだろうが、怪物の個体を飼うなど困難しかない。「このまま居着いたらどうします」「研究でもする?」藍は楽しそうに籠の中をつついた。反撃される可能性もあるのだが。
2020-11-26 18:50:35140文字で描く練習、2624。寝床。 魔女が主人公なら使い魔的小動物マスコットキャラがいてもいいのではVSちゃんと飼えるのかVS各方面の大人から叱られる可能性。
2020-11-26 18:50:36あの家の子供として、年頃の娘として、望ましい選択を。藍に対し伯父が求める礼儀や慎重さの裏には無数の期待と偏見がある。本人は自由を尊重するとも言うが、自身の娘と比較している節はあった。「期待じゃなくて恐怖よ」言われる藍はもっと手厳しい。「わたしのこと化け物とでも思ってるんじゃない」
2020-11-27 19:39:47会食の席に通される前、藍に脇腹を小突かれた。「自分だけ場違いだと思ってる?」屋敷の主の娘が同席するのは分かる。だが私は客人と対面するどころか、別室に控えろと言われてもおかしくない立場だ。「大丈夫よ、どうせ向こうはパパにしか関心ないから」せめて企みの内容を一部だけでも教えてほしい。
2020-11-28 19:45:17怪物が倉庫の外をうろつき、組織の追っ手が中を駆け回る。眠りに落ちた藍はどちらに出くわしても対抗できない。私は管理会社の備品を少し拝借して人間の目だけでもごまかすことにした。ロゴが入った上着に袖を通し、雇い主を清掃ロボットの荷台に隠す。どうか彼女が途中で起きないようにと願いながら。
2020-11-29 18:45:17行く先の地図を見ていた藍が、町の境界の歪み具合に笑い出した。遠い昔に争った部族が決めて以来全く変えていないという。だが現地に着いてみると、橋の下には広い直線の河川があった。「過去を知らない人たちが工事したとか?」「洪水か何かという可能性も」激しい流れは時に岸を削り、歴史を埋める。
2020-11-30 18:52:13深紅のスーツに大きなコサージュ。目立つ女が演壇に立った瞬間、会場の空気は一変した。テレビカメラの前で弁舌を振るう姿には一点の闇もない。今日もその肩書きや功績を知らない人々を惹き付け、野望に巻き込むのだろう。「あのオバサンの悪口が消えてる」藍は演説に背を向け携帯端末をいじっていた。
2020-12-01 19:30:55拾われた直後の私には最低限その日を生き延びる為の持ち物しかなかった。雇い主に命令と予算を出されて身なりを整えはしたが、防寒までは手が回らなかった。「山は寒い、って当然知ってるでしょ」藍が見本のコートを私の胸元に押しつけてくる。暖かそうだが重い。値段以外の意見は聞き入れるだろうか。
2020-12-02 18:57:34140文字で描く練習、2630。防寒。 部下の装備に気をつかうのは当たり前。倒れられたら困るのです。彼女自身が。
2020-12-02 18:57:35一発目から豪速球のサーブ。藍の挑発に乗ったボスの怒りがテニスコートを荒野に変える。次第に厚化粧の肌は汗に覆われ、表情も気迫も一変した。が、獰猛な動きは唐突に止まった。「痛い!今のはナシよナシ!」動き回る間に抜けた睫毛が目に刺さったらしい。「大人って大変ね」藍は息さえ乱れていない。
2020-12-03 19:02:27原因は水飲み場の争奪戦だったという。初めは野生動物の小競り合い。次に近隣の村の人間が近づいてきた。人間同士の争いが道具や法律を持ち込み、空から侵略者が降ってきた。「で、これ?」巨大なクレーターの底にガラクタが見え隠れしている。藍が風に聞いたところでは何かの名前が書いてあるらしい。
2020-12-04 19:24:30花火が打ち上がった。手を叩き歓声を上げた人々が、直後に沈黙する。光の矢は上空で弾ける前に彼らの街へと落ちていった。「色つき火薬の用意はないみたい」藍が差し示す建物の陰に巨大なヒレが見える。一般市民への影響を知りながら攻撃を強行したのか。怪物以上に無慈悲な人物が指揮しているようだ。
2020-12-05 19:05:49本の表紙に使う写真を藍が選ぶ間に、撮影者は個人的に気に入った一枚をポスターに仕上げて店に貼り出していた。無許可で。「ふざけてるの?」目力の強さを全面に押し出した構図はなるほど人目を引いていたが、そのモデルは既に何かを計算する顔に変わっている。まずは迷惑料あたり要求するのだろうか。
2020-12-06 18:47:55山の向こうに立ち上る煙を追い、藍が風に意識を預けた。鳥の目線で確認した発生源は軍による模擬戦だったらしい。地図上のまっさらな土地が演習の用地なら納得だが、問題は仮想の標的だ。「かくれんぼしてる人たちを戦車やロボットが探してる」少なくとも巨大な怪物を意識した訓練には見えないと言う。
2020-12-07 18:59:23140文字で描く練習、2635。模擬戦。 どさくさに紛れる人間にだって備えているはずだから。 なおこのシリーズで彼らが明確にどこの国とか所属とかを決めて書くつもりはないです。話がややこしくなるから。
2020-12-07 18:59:23有能な者が役人に連れて行かれ、村にはわずかな住民と一人の藪医者が残された。『ヤツも早く出て行けとこれから何度願うだろう』藍が読み上げた日記は初日から絶望に満ちていた。先程見てきた廃屋はやはり診療所跡のようだ。「自分も引っ越せばよかったのに」もっともな意見は翌日の記述に否定された。
2020-12-08 20:12:42