- alkali_acid
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帽子男
@alkali_acid
「ア゙…ア゙ォー…カー」 色事師はがっかりしたようすで笑みをこわばらせた。 「外れか。僕の頭もこの苦しい虜暮らしで鈍ったらしい。では僕等はともにここで死ぬしかないようだな」 「グワ?」 「この酒蔵は、あの壁や床をすり抜ける化け魚が生き餌を閉じ込めておくために使われている」
2021-01-03 22:19:15
帽子男
@alkali_acid
「ォァッ」 「どうやら外へは出られないし、食べるものも飲むものもない。だがあまり長く飢えや渇きに苦しむこともなかろうさ。化け魚がおやつを平らげに戻ってくるからね」
2021-01-03 22:20:56
帽子男
@alkali_acid
「グエーッ」 「まったくグエーッだ。やれやれ。死ぬときは美しい女の胸の中と決めていたのに。ところで…君、ひょっとして面頬の下は男装の麗人ということはなかろうね?そら歌物語には、騎士に身をやつした乙女があるだろう…」 鳥籠の騎士は首を傾げてから、面頬をはねあげた。
2021-01-03 22:22:50
帽子男
@alkali_acid
鎧武者は何か返事をしようとしたところで、虫が知らせて踵を返した。酒甕に巨大な魚の影の一部が映っている。 間もなく、なまぐさい匂いとともに暗い顎が音を立てずに迫ってくるだろう。
2021-01-03 22:26:49