エロ漫画を描くときに消し加工を行うのは編集部、だから作家は守られてる?→という思いに冷水を浴びせた「松文館事件」の話

大学の基礎教養で日本の表現規制史やったなあ懐かしい
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後藤寿庵 @juangotoh

エロ漫画家。 三和出版「コミックマショウ」などで描いてます。エロもエロ以外もお仕事募集中。最新単行本「おねショタサポートSEX」発売中

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後藤寿庵 @juangotoh

エロ漫画描くときに、性器は基本的に描きます。それを編集部で消し加工するわけです。そのへんの経験豊富な編集さんがうまく取り締まられない範囲に消してくれる事を期待するのですね。だから事件になったときに罪に問われるのは修正範囲と程度を誤った編集さんや出版社であって、作家は守られてるのか

2021-02-10 18:12:48
後藤寿庵 @juangotoh

という思いに冷水を浴びせたのが松文館事件でした。あの事件では作者も犯人の一味として逮捕された。結構人気のあった作者だけど、罰金50万円が確定ですよ。痛いよなあ

2021-02-10 18:15:09
リンク Wikipedia 松文館裁判 松文館裁判(しょうぶんかんさいばん)とは、松文館から発行された成人向け漫画のわいせつ性をめぐる裁判である。 2002年、「松文館」から発行された成人向け漫画がわいせつ物にあたるとして、同社の社長貴志元則、編集局長及び著者である漫画家のビューティ・ヘアが逮捕された。 原審 東京地方裁判所刑事第2部 平成17年刑(わ)第3618号、控訴審 東京高等裁判所第6刑事部 平成16年(う)第458号。上告審 最高裁判所(第一小法廷)平成17年(あ)1508号。 控訴審では漫画家のちばてつやが証言をしている。 2002 63 users 4
後藤寿庵 @juangotoh

松文館事件、当時として他の漫画より局部修正が薄いということはなかった。他の漫画と同等、劇画タッチの作風でリアルだったせいか、むしろ消しは多い方だった。なのでこれだけ裁かれることはおかしなことだったのだけど、一審判決で裁判長がのたまったのが、

2021-02-10 18:18:11
後藤寿庵 @juangotoh

「今出版されてるエロ漫画全部、摘発されてないだけで違法」

2021-02-10 18:18:40
後藤寿庵 @juangotoh

こんなこと言われたら出版業界萎縮せざるを得ないよなあ

2021-02-10 18:19:08
後藤寿庵 @juangotoh

そもそも松文館事件、警察官僚出身の平沢勝栄議員のところに支援者が「高校生の息子がこんなエロい漫画読んでる、なんとかしてほしい」と投書してきて、平沢議員が司法にぶんなげたことで事件になった。警察がめっちゃ忖度して事件化し、裁判所もそれに従った疑惑が…

2021-02-10 18:26:36
後藤寿庵 @juangotoh

そもそもなんで性器の消しとかあんまし差がないマンガ業界の中でこの漫画が摘発されたのかに関して、検察は「絵がうますぎるから」と説明している。なんだそれ。絵がうまいから罪なのか??

2021-02-10 18:28:55
後藤寿庵 @juangotoh

この事件、なんか一審裁判長がひどすぎるんだよな。「被告人は漫画本を頒布したことを認めてるのにわいせつ性について争い、反省する態度が見られない」と、わいせつ図画頒布では実際にあんまし適用されない懲役刑を宣告している。執行猶予付きではあったけど。

2021-02-10 18:32:29
後藤寿庵 @juangotoh

控訴審で「いや漫画のわいせつ性で懲役刑はやりすぎじゃね?」となって罰金刑になり、最高裁もそれを支持したので、懲役刑は確定せずにすんだけど。

2021-02-10 18:34:01
後藤寿庵 @juangotoh

まあ、僕が平沢勝栄を支持できない理由の大半がこの松文館事件を引き起こしたという事実だねえ

2021-02-10 18:34:53
後藤寿庵 @juangotoh

そもそも最初の段階で、成年向け漫画を高校生が読むなと叱りつければよかった話じゃねえか。高校生に売ってはいけない成年コミックを高校生が読んだから、議員先生、この漫画家を懲らしめてくださいって、あまりにおかしな話だろう。

2021-02-10 18:37:32
後藤寿庵 @juangotoh

なお、電子書籍に援用されているモザイクルールは、その昔、ソフ倫というエロゲーの倫理規定を作っていた団体の、1/100ルールが適用されていると思われる。性器には画面の長編の1/100サイズのモザイクをかけるというやつ。なお、画面が小さい場合は最小で4ピクセルのモザイクをかけることになっている

2021-02-10 18:45:04
後藤寿庵 @juangotoh

このソフ倫ルールは、エロ実写ビデオ業界のビデ倫にならってデジタルゲームに対応できる基準を決めたもので、特に根拠などないものなのだけど

2021-02-10 18:47:07
後藤寿庵 @juangotoh

同人CGなどの販売サイトとして老舗だったDLsiteがこれを採用して、サークルに1/100モザイクルールを要求しだし、他のデジタルエロ配信サイトも次々採用して、いまでは金科玉条となっている。

2021-02-10 18:49:09
後藤寿庵 @juangotoh

刑法175条に基づく事件として、戦後主に小説作品のわいせつ性が争われた。チャタレー事件、悪徳の栄え事件、四畳半襖の下張事件。小説の文言が問題となり、その多くが有罪となった。でも時代の変遷で、いまでは小説でどんなエロいことを書いてもまずそれで逮捕されることはない。

2021-02-10 19:36:52
リンク Wikipedia チャタレー事件 チャタレー事件(チャタレーじけん)は、イギリスの作家D・H・ローレンスの作品『チャタレイ夫人の恋人』を日本語に訳した作家伊藤整と、版元の小山書店社長小山久二郎に対して刑法第175条のわいせつ物頒布罪が問われた事件。日本国政府と連合国軍最高司令官総司令部による検閲が行われていた、占領下の1951年(昭和26年)に始まり、1957年(昭和32年)の上告棄却で終結した。わいせつと表現の自由の関係が問われた。 『チャタレイ夫人の恋人』には露骨な性的描写があったが、出版社社長も度を越えていることを理解しながらも出版 30 users 5
リンク Wikipedia 悪徳の栄え事件 悪徳の栄え事件(あくとくのさかえじけん)とは、1959年に日本で翻訳出版された書物がわいせつの文書に当たるとして翻訳者・出版者が刑法175条により起訴され、有罪とされた刑事事件である。 被告人澁澤龍雄(筆名・澁澤龍彦)ならびに現代思潮社社長石井恭二は、マルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』を翻訳し、出版した。しかし、同書には性描写が含まれており、これがわいせつ物頒布等の罪に問われたものである。 第一審はチャタレー事件の審査基準(詳細はチャタレー事件の項を参照)を引用し、3要件のうち1点が該当しないとして無罪を言 21 users 4
リンク Wikipedia 四畳半襖の下張事件 四畳半襖の下張事件(よじょうはんふすまのしたばりじけん)とは、性的描写のある文学作品を雑誌に掲載したことによりわいせつ文書販売の罪が問われた刑事事件。わいせつの概念が問題となった。 月刊誌『面白半分』の編集長をしていた作家野坂昭如は、永井荷風の作とされる戯作『四畳半襖の下張』を同誌1972年7月号に掲載した。これについて、刑法175条のわいせつ文書販売の罪に当たるとされ、同年8月21日に野坂と同誌の社長・佐藤嘉尚が書類送検され、その後に起訴された。 被告人側は丸谷才一を特別弁護人に選任し、五木寛之、井上ひ 15 users 75
後藤寿庵 @juangotoh

写真や映画の実写作品では、長い間陰毛はわいせつとされて取締対象だった。でもヘアヌード写真ブームが起こってなし崩しに公認されて以来取り締まられることはない。

2021-02-10 19:38:16
後藤寿庵 @juangotoh

もちろん警察署も裁判所も、「小説は175条の対象外です。陰毛は取締対象外です」と公言したことはない。でもいまで取り締まられない。

2021-02-10 19:39:30
後藤寿庵 @juangotoh

気持ち悪いのは、小説のわいせつとか裁判ではみんな敗訴しているので、判例として認められてはいないのですよ。でもなんかペンクラブががんばったらしいとか、いつのまにか文章ではわいせつ認定されなくなってる

2021-02-10 19:41:54
後藤寿庵 @juangotoh

ヘアヌードに関しては、あれ篠山紀信の芸術性が世論として高まったので、なんか文句言えなくなった感じ。大手出版社おかかえ写真家だったしな。同時期にヘアヌード出しては怒られてた荒木経惟との扱いの差がひどい。

2021-02-10 19:45:28
後藤寿庵 @juangotoh

そんな感じで、わいせつ表現に関して時代とともに緩和されているのは事実なのです。だから漫画の局部修正も摘発されなければ徐々に薄くなっていく。でも定期的に警告や摘発が入って消しが大きくなる。この繰り返しです。

2021-02-10 19:48:28