ティモワーニュ&レイ「MMT批判に応える」抜粋訳と内容紹介

よくある(非主流派的な)MMT批判について、2013年の時点で既にほとんど答えているTymoigne & Wray (2013) について論じます。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

Tymoigne & Wray 『MMT批判に答える』の抜粋訳と、これを作成した理由|望月慎(望月夜) #note note.com/motidukinoyoru… 周回遅れのMMT批判が輸入される日本の非主流派/異端派経済学界隈の惨状に対するアンサーとして、2013年のティモワーニュ&レイ論文を紹介することとする。

2021-03-27 14:39:45
リンク note(ノート) Tymoigne & Wray 『MMT批判に答える』の抜粋訳と、これを作成した理由|望月慎(望月夜)|note こんにちは、望月慎(望月夜)@motidukinoyoruと申します。 (blog「批判的頭脳」、togetter、noteマガジン一覧) (拙著『図解入門ビジネス 最新 MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』(秀和システム)(2020/3/24 発売)) ティモワーニュとレイによるMMT批判への再反論論文が書かれたのは2013年のこと、今から8年も昔の話になる。 Tymoigne, E., & Wray, L. R. (2013). Modern money theory 101: a repl
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『ティモワーニュとレイによるMMT批判への再反論論文が書かれたのは2013年のこと、今から8年も昔の話』 『この論文は、アメリカにおける非主流派/異端派、特にポスト・ケインジアンによるMMT批判に応える内容……MMTを理解する入門としては有用である……という認識』 note.com/motidukinoyoru…

2021-03-27 14:41:17
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『私自身も……論争のまとめとして読むというより、MMTのポイントを理解するガイドとして利用したというのが実際のところ』 『ところが、日本の非主流派/異端派経済学者界隈では、まさにこの論文での再反論先となったような、一週遅れのMMT批判が精力的に輸入される事態が…』 note.com/motidukinoyoru…

2021-03-27 14:42:46
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『上述のような日本の状況を踏まえ、論文の中でも論争上重要であるだろう部分を抜粋訳してみせた次第』 『私個人にとっては、取り上げた部分は、(当然ながら)目新しいポイントではなく、以前からMMTerらが継続的に主張し、また我々が紹介してきた論点である。』 note.com/motidukinoyoru…

2021-03-27 14:44:03
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『問題は、8年ものラグがあるにも関わらず、こうした再反論を踏まえない形でMMT批判が展開されようとしている日本の非主流派/異端派経済学界隈の惨状にあり、かような悲劇的状況にあっては、このような『退屈な』文献紹介にも意味があると考えた』 note.com/motidukinoyoru…

2021-03-27 14:44:29
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

以上記事について雑駁に語る。 まず、通貨と租税について。 我々が以前から主張してきたように、通貨制度における租税の位置付けとして、単位通りの流通それ自体(租税貨幣論)と、税による購買力抑制(機能的財政論)は次元が異なり、混同してはならない。前者が前提として、後者が可能となる順序である。

2021-04-03 15:54:02
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

Tymoigne & Wray (2013) においても、『税金は、政府通貨が額面通りに流通するのを助け(それによって決済システムがより効率的になる)、国内の経済単位から購買力の一部を奪うことで物価の安定を促進するため、必要不可欠なものである。』と明確に区別して捉えられている。 twitter.com/motidukinoyoru…

2021-04-03 15:56:20
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、MMTが通貨の流通性を租税受領に求めることへの批判については、 ①現実に、全ての現代国家が租税を基礎にした通貨制度を運営している(補足: 無税国家として知られた産油国ですら例外ではない→ togetter.com/li/1493260 ) ②歴史や現実に照らし合わせて十分条件として扱っているに過ぎないし、…

2021-04-03 16:42:05
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

…代替となる歴史的事例が提示されたこともない。 特に最後の点は重要で、 「MMTは租税を通貨制度の十分条件として捉えている(必要条件ではない)」 という主張は常に 「とはいえ、租税(的な何か)に駆動されていない通貨制度の歴史的事例は無い」 という留保とセットで論じられている。

2021-04-03 16:58:06
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『MMTは不可知論者であり、税金(やその他の義務)に代わるものがあるという批判者の信念を裏付ける論理的な議論や歴史的な証拠を待っている。我々は、これまで尤もらしい代替案を見たことがないが。』

2021-04-03 17:02:53
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『たとえPalleyが、手数料、罰金、十分の一税、年貢、税金なしで動いている何十もの通貨を発見したとしても、MMTが無効になることはないだろう。しかし、不思議なことに、私たちが知る限りでは、真面目な研究者が望む基準で文書化された形では、そうした通貨は一つも見つかっていない。』

2021-04-03 17:03:26
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

次に、統合政府仮説について。 Lavoieを含め、PK界隈からは「MMTの統合政府処理は”記述的”ではない」という批判が多いし、実際、MMTerも統合政府処理が(記述的ではなく)『理論的』なものであることは認めている。 しかしながら、……

2021-04-04 08:42:46
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

……現実の制度構造や制度制約を全て反映したとしても、統合政府的に処理することの妥当性には何ら瑕疵を与えない、というのがMMTerの主張のポイントである。 (Wrayの「MMT 現代貨幣理論入門」の表現を借りると、『政府が自分の両手を後ろ手に縛り、さらに両足を縛り付けても何も変わらない。』)

2021-04-04 08:47:51
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『記述性に欠けるという批判は、的外れである。統合政府仮説は、現在の制度的な取り決めを記述することを目的としているのではなく、現在の通貨システムで作用している因果関係を突き止めるための理論的な単純化である。』

2021-04-04 13:04:54
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『バランスシートの結果は制度的枠組みに関係なく同じである。……財務省の支出、課税、債券発行が金利や総所得に与える影響は、統合の有無にかかわらず同じである。……最終的には、中央銀行と財務省が協力して、財務省が常に債務を履行できるようにし、中央銀行が金利を平滑化できるようにする。』

2021-04-04 13:05:27
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『制度的側面を考慮するのであれば、財務省と中央銀行のオペレーションを制約するものと、財務省がこれらの制約を迂回することを可能にするものと、すべてを考慮する必要がある……例えば,米国では……FRBは一時的なレポ……を通じて……国債購入のための十分な準備預金があることを保証している。』

2021-04-04 13:08:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『財務省と中央銀行の財務運営は非常に複雑に絡み合っており、財政政策と金融政策を円滑に進めるために、両者は常に連絡を取り合っている。……そのため、中央銀行の独立性はかなり制限されており、最終的には何らかの形で財務省を財政的に支援しなければならない』

2021-04-04 13:10:36
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

裏を返せば、財務省と中央銀行がそれぞれ単一で1対1である場合において、財政危機や政府債務不履行を座視することは、必然的に生ずる金融不安・金融危機を座視することと同一となる。 そのような事態を想定することが現実的に妥当なのか、今一度人々は落ち着いて考えてみる必要がある。

2021-04-04 13:17:33
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、これは、Tymoigne & Wray も指摘しているように、ユーロ圏では財政危機が起きる(起き得る)ことを裏返しに説明可能となる分析枠組みでもある。 中央銀行と財務省の切断の有無による質的な差を整理しなければ、なぜギリシャで財政危機が生じる一方で、日本etcで生じないのか、理解不能となろう。

2021-04-04 13:19:39
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

統合政府で処理することが ”妥当” だということは明らかとしても、統合政府処理が ”強調” されるのは何故か? Tymoigne & Wrayは以下のように整理する: 『複雑さが増すことは、経済学者の理解が妨げられ、モデル化を失敗させ、誤った政策選択につながるため、非生産的である』

2021-04-04 13:34:34
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『社会保障制度には潜在的な問題があるが、それは財政的な問題ではなく、人口統計学的な問題』 『社会保障問題の金融面での解決と現実面での解決は全く異なっており、資金をLocked Boxや信託基金に入れることは必要ではなく、問題を混乱させ、実際には現実の生産問題を悪化させる可能性がある』

2021-04-04 13:37:55
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『「政府のプログラムが実行できないのは、政府がお金を使い果たしたからだ」と主張しても意味がない。』 『政府プログラムの賛否を金融的な制約に基づいて議論すべきではない。むしろ、公平性、完全雇用、金融安定性、物価安定性に焦点を当てるべき』 MMTそれ自体は野放図な財政拡大を支持しない。

2021-04-04 13:41:36