大事な記憶

いぞーさんがりょーまさんの記憶だけなくった話
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かむい @sunyaxxx

「おまんは、わしを『好き』やと言った、安心しい、わしもおまんが『好き』やぞ、両想いじゃ、わしら兄弟じゃろ」 首に巻いていた襟巻を外し素早くりょーまの手に巻き付けて動けなくなる。 「好き、大好き、愛しちゅう、にゃあ、兄さま、わしを可愛がっとうせ」 「違う!!僕は…!!」

2021-03-21 23:07:47
かむい @sunyaxxx

「目も隠しちゃろうにゃあ、おりょーの顔でも浮かべとれや」 昔、自分を釣りに誘ってくれたのは誰だろう? 昔、よく泣かされていたのは誰だろう? 昔、自分の秘密の場所を教えてやったのは誰だろう? 一つ一つが真っ白なペンキをぶちまけるようにきれいに消されていく。

2021-03-21 23:07:47
かむい @sunyaxxx

それはなにかとても大事なことだったようにも思える、大事な人だった気がする、自分を馬鹿にせず、家族以外、そしてそいつの家族もどうように、そいつも自分の強さと剣技を褒めてくれていたような気がする。 誰?

2021-03-21 23:07:48
かむい @sunyaxxx

泣かないで、大事な人よ、大丈夫、お前の周りにはたくさんの人がいる、自分一人などいなくなっても大丈夫、お前を助け力になってくれる人はいるから。 幸せになれ…お前の幸せを願い続けるから…。 だから、自分の大事な思い出も想いも全部やる、大事なお前の為になら、いくらでも…。

2021-03-21 23:07:48
かむい @sunyaxxx

「いぞーさん」 あの夜から数日経ち後ろから声をかけると足を止められ振り向かれる。 いつもなら足も止めず歩いていくか斬りかかられる、なのだが振り返り自分の顔を見て、 「誰じゃ」 あからさまに警戒した顔で柄を利き手で掴み足を引く。 「……ぁ、の、いぞー…」

2021-03-22 22:16:09
かむい @sunyaxxx

白い手袋に包まれた手を伸ばし肩に触れようとする、が、体ごと後ろに下がる。 「馴れ馴れしい、触んなや」 いぞーが何を言っているのかわからない。 馴れ馴れしいなんて…幼い頃から共に遊んだ仲じゃないか…まだ意識はしてもらってないが体って繋げてる仲だというのに。

2021-03-22 22:16:10
かむい @sunyaxxx

まるで知らない他人を見る目で警戒を…、 「りょーまやないか、わしになんぞ用向きでもあるがか」 何かから覚めた目で先程とはうってかわり近づくことはないが用件を聞く。 「ぁ、え…っと…」 「おんし、用もないがに話かけてきたがか」 眉間に皺を寄せる。

2021-03-22 22:16:10
かむい @sunyaxxx

「いや、よう、じっていうか、食事でもって…」 「は!!誰がおまんと行くか、飯がまずうなるわ」 踵を返しりょーまを置いて行ってしまう。ぬるりとおりょーが二人の会話が終わって出てくる。 「りょーま、いぞーから一瞬お前の『匂い』が消えたぞ」 「どういうこと?」

2021-03-22 22:16:11
かむい @sunyaxxx

「ここ数日それが強い、あいつ何かの霊気異常にでもかかってるんじゃないのか?」 その言葉にはっとする。 カルデアでよく起こる霊気異常になりりょーまの事を一瞬忘れてしまったのだ、そうだそうに違いない。

2021-03-22 22:16:11
かむい @sunyaxxx

昔は仲が良く郷里を駆け回ってもいた、今だって生前の因縁で殺したいほど憎まれているのだ。 「マスター達に聞いてみようか」

2021-03-22 22:16:11
かむい @sunyaxxx

◆◆◆ 一日…二日…三日… 一つ…二つ…三つ… そして何度肌を重ねただろう…、そっと刀を置く。 別になくなったっけ気にならない…気にしない…だってあの自分を置いて行った酷い奴だ。

2021-03-26 20:13:43
かむい @sunyaxxx

幼い頃だって自分のとっておきの秘密の場所を教えてやれば自分の同意もなく勝手に教えてやるし故郷を去る時だって自分に一言だってなくて自分が気付いてほしいと願っていても知ることもなくし知ろうともしない、

2021-03-26 20:13:43
かむい @sunyaxxx

どころか自分が何かをしたい行きたいと言えば連れまわす、自分にとって良いことなんて一つもない…はずだ、はずなのに…胸が苦しい。 壊れた心が痛い気がするのはなぜだろう。 そうか、好きだと言われたからだ、だからまだわずかに残っている心の欠片が痛いのかもしれない。 ◆◆◆

2021-03-26 20:13:43
かむい @sunyaxxx

「マスター、すまない、ちょっと聞きたいんだけど」 ブリーフィングルームから出てきたりつかを待ち伏せて捕まえる。 「はい、なんでしょうか?」 今の二人がどんな状態にあるか知らないのでりょーまの顔を見ても普通通りに変わらない態度で接してくる。

2021-03-26 20:13:44
かむい @sunyaxxx

だ・ヴぃんちもマスターには言ってないのだ、いや、それもいぞーとの約束の一つであり、そして気付かれぬ前になんとか二人を治そうと考えていた。 それも一つの賭けではあったが…やはり来た…。 りょーまと立香が話をする横で静かに聞いている、知らせるべきが教えるべきか…。

2021-03-26 20:13:44
かむい @sunyaxxx

だがそれは約束を違えることになる。 「だ・ヴぃんち女史、貴方もこれはただの霊気異常だと思いますか?」 りつかと話終えて横で静かに聞いていただ・ヴぃんちに聞いてみる。 「霊気異常が起こったとは聞いてないし見てないなあ、う~ん、ちょっと調べてみるよ」

2021-03-26 20:15:58
かむい @sunyaxxx

お道化た態度で話を交わせば、少し目を伏せ悲し気な笑みを浮かべる。 「そう…ですか、…」 いぞーの中からの記憶がなくなるのが予想よりも早すぎる、それだけりょーまに渡しているのが多すぎるのだ。

2021-03-26 20:15:59
かむい @sunyaxxx

多いということは、それだけりょーまの傷が癒えるのが早く、そしてカルデアからの魔力を必要としなくなり、また世界からの魔力を渡せてもらえることになる。 そんなにも早く抑止に戻したいのか…いや、その逆か、早く抑止の任をおろすために必要以上に早く渡し治し解放させたいのだ。

2021-03-26 20:15:59
かむい @sunyaxxx

そして少しずつ削られていく記憶の中で…相談を受けてから数日と経たぬうちに恐れていたことが起こってしまった。 珍しく穏やかに話をしていた。 本当に穏やかに昔の話に話を咲かせていた。ようやくいぞーと普通に話ができたと喜んでいた。

2021-03-26 20:16:00
かむい @sunyaxxx

それでも違和感はあった、その都度変わりはないかと細心の注意を払っていた。 空になった杯に注いでいた途中で、その杯が手から滑り落ちたのだ。 お互い飲みすぎたかなと落ちた杯をとり、違う杯をとって注いでやろうと思った、が、その手首を掴まれ、 「おまん、誰じゃ」

2021-03-26 20:16:00
かむい @sunyaxxx

冷たい声に見も知らぬ他人を見るその瞳に、恐れを抱く。 りつかもだ・ヴぃんちも霊気異常はないと言っていた。 手首を掴まれる力にさらに力が加わり捻り上げられる。 「わしは、どういて、見も知らんおまんなんぞと酒なんぞ飲みよる」 「い、…」

2021-03-26 20:48:22
かむい @sunyaxxx

「記憶がなかぞ、おまん、何者じゃ」 掴んだ手首を払い、すぐさま距離をとられる。 霊気異常はないと言われたんだ。信じる…りつかの事を信じてはいた、ただ、あの時、だ・ヴぃんちの様子が明らかにおかしいと思っていたのだ。

2021-03-26 20:48:22
かむい @sunyaxxx

それでも珍しく追及しなかったのは…言いも知れぬ恐怖を覚えていたからだ。 理由を追及して『知って』しまったらと、だから目をそらせ耳を塞げ口を開くなと自分の中の自分が囁いたからだ。 喉を鳴らし唾を飲み込む。 「僕は、いぞうさんの幼馴染のさかもとりょーまだよ」

2021-03-26 20:48:22
かむい @sunyaxxx

胃の腑から吐き気がこみ上げてくるのを堪え震えそうな声を押し殺し、いつものように穏やかに声をかける。 だっていぞーが自分の事を絶対に忘れるわけがない。

2021-03-26 20:48:23
かむい @sunyaxxx

冷たい『ふり』をしながら、いつだって自分を大事にしてくれているのを、よくわかっているから。 だから、今だって悪い冗談を言っているのだ…。 「わしに幼馴染みなんぞおらんわ、わしを馬鹿にしゆうがか」 「嘘だ…」 「あ?」

2021-03-26 20:48:23
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