『蔓延期の院内防疫と検査について』とホロジック社パンサーシステムの性能と国内の動向。そして抗原定量ルミパルスG600IIの性能について(2021.5.4作成) #新型コロナウイルス

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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②reverse transcriptaseとRNA polymeraseを併用した等温増幅(TMA)であり、PCRではない。 まずRNA精製の段階がユニーク。polyTを植え付けた磁気ビーズに検体溶解液を混ぜる際に、ターゲット相補シークエンスにpolyAをつけた"capture oligomer"を介在させる。 pic.twitter.com/86ZKj8rGVV

2021-01-11 15:57:39
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③そして、結合しなかったものを洗い流す。検体由来の夾雑物、宿主のDNA/RNA、ウイルスのターゲット以外のRNAも。 特筆すべきは【この段階で既に鋳型のセレクションがかかっている】こと。鎖長は公開されていないし、DNARNA2本鎖のミスマッチ許容の程度も分からないが、特異性向上はありそう。

2021-01-11 15:57:40
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④そこにreverse transcriptaseとRNA polymeraseを投入して反応スタート。 仕組みは同社の動画で説明されているが、これだけではDNAの切り貼りに慣れた私でも『なんのこっちゃ』なので、次の絵で説明する。 youtube.com/watch?v=qQQtq1…

2021-01-11 15:57:40
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⑤この絵の黄色い塩基鎖はRNA、緑色の塩基鎖はDNA。鋳型RNAに逆転写をかけてRNAseで1本鎖DNAにするところまではPCRの前段階と同じ。 ここからが面白いところで、動画にあるように2本鎖DNAができたところでこれが二次鋳型になって(2本鎖のまま開裂するのか?!)RNAアンプリコンが大量に作られる。 pic.twitter.com/XruRVeCSlX

2021-01-11 15:57:42
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⑥このRNAアンプリコンからRNADNAハイブリッドを経て1本鎖DNAができて、2本鎖DNAも追加でどんどん作られる。 ここまででお分かりいただけると思うが、黄色い塩基鎖がたくさん。なんと【大量生産されるのは1本鎖RNA】である。

2021-01-11 15:57:42
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⑦これにDNAに蛍光ラベルAE(acridinium ester)をつけたプローブをピッタンコして蛍光を見る。正しくRNADNA2本鎖が形成されれば、AEは2本鎖の間で加水分解試薬から保護される。 リアルタイムではないのでCt値は得られない。陽性/陰性の判定のみになるが、検査者が迷うことがない(人的要素の排除)。 pic.twitter.com/XQvyw8RALw

2021-01-11 15:57:43
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⑧温度の上げ下げをしないので早い。8検体ずつ流れに乗せていくので随時検体追加が可能でありながら384検体をセットして帰ってオーバーナイトラン可能。 特異度については最初のキャプチャーオリゴ、2本の増幅プライマー、検出プローブの、計4本の塩基鎖でバリデーションしている。

2021-01-11 15:57:44
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⑨厳しい条件が揃わないとシグナルが出ないようなので、もしかすると蛍光プローブのリアルタイムPCRよりも特異度は高いかもしれない。 2ヶ所マルチのアンプリコンの位置もユニークで、EやMではなくORF1aと1bにあり変異に強いと謳っている。

2021-01-11 15:57:44
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⑩そして何よりも圧倒的に優位なのは、上述のビーズで補足する仕組みの恩恵として、【ロードできる検体量が500uLすなわち0.5mLと大量】なのだ。 大量の検体の中にビーズを泳がせて捕捉して、特異度を厳しくすることで、鋳型濃度の低い検体からでも正しく陽性を拾う。

2021-01-11 15:57:44
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⑪以上のように、標準的に使用されている蛍光プローブのリアルタイムPCRとは似ても似つかない仕組みではあるが、検査性能の点で遜色ないというか、もしかすると上を行く可能性がある。 一般臨床医がここまでマニアックに考える必要はないが、誰かの参考になればと思い、解説してみた。

2021-01-11 15:57:45
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

続けて、パンサーシステム関連の報道から日本国内での動向を見る。 ①前ツイのリンク記事によると新コロ以前の国内販売は30台程度。もともとはクラミジアと淋菌の検出に用いられていた。 以前から保有していた福岡県は8月から新コロに使用。 pref.fukuoka.lg.jp/press-release/…

2021-01-11 16:54:51
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②なお、これは前年の2019年に1500万円で購入されている。今となってはこれが大当たりだったことになる。 b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.pa…

2021-01-11 16:54:52
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③新コロ以降は日本国内でも導入が増えてきた。10月には民間検査会社が2台まとめ買い。 innervision.co.jp/sp/products/re…

2021-01-11 16:54:52
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④昨年末には大手病院経営IMSグループの検査会社が導入。医療機関がこれを手にする意義は大きい。見る目のある方がおられるのだろう。さすがである。 innervision.co.jp/sp/products/re…

2021-01-11 16:54:52
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⑤他方、かわいそうだったのが熊本市。 8月に発注して10月末までに納品されなかったことで11月半ばに契約解除。 「熊本市は「市医師会PCRセンター」(中央区)に導入実績がある日本製(555万5千円)への変更を決定。」 kumanichi.com/news/id20030

2021-01-11 16:54:53
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑥この記事では何を代替品として選定したのか書いていないうえに、一見、PCR機を買ったとも取れる擁護スタンスの書き方をしている。 熊本市議会の記録を見るに、代替品はPCRですらなく、抗原定量機ルミパルスG600II。 「遺伝子増幅法に比べ※やや※感度が低い」ですと。 kumamoto-shigikai.jp/common/UploadF…

2021-01-11 16:54:53
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑦抗原定量の性能を再掲。国際感染症学会誌10月号。 蛍光プローブのリアルタイムPCR陽性者の45%を陰性と判定。 迅速ざっくり診断を要する診療現場(同時採取のPCRの結果を待つ)で使うのならいざ知らず、社会防疫でこれは使えないだろう。 かわいそうだが失敗だと思う。熊本市の動向を注視したい。 pic.twitter.com/PFc9juoGJm

2021-01-11 16:54:54
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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑧追記。入れ忘れた熊本市議会の記録。まことに残念。 pic.twitter.com/KmT47gdryZ

2021-01-11 16:58:54
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