表層的な対策には限界が有る。

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中村利仁 @rijin_nakamura

自分は7年前まで日本の医療体制を専門分野の一つとする研究者の1人だった。病床不足が課題になっているが、見当違い。確かに集中治療室のベッドは不足しているが、半年あれば倍に出来る。病院によっては第4波の中で工夫して一般病棟を転用したところもある。問題はそこじゃない。

2021-08-06 07:04:41
中村利仁 @rijin_nakamura

ベッドに寝かせておけば患者が勝手に良くなるわけじゃない。集中治療室の患者は手を放せば死ぬ。活かしているのは看護職員。点滴を途切れなく繋ぎ、時間通りに注射をし、人工呼吸器を監視し、痰を吸引し、排泄の介助をして寝返りを打たせる。身体を拭いて清潔を保つ。看護職員が患者を活かしている。

2021-08-06 07:10:46
中村利仁 @rijin_nakamura

中等症の患者も程度は違うが看護職員の手を必要としている。自分ではほとんど何もできなくなって入院するんだから。病気の種類や重症度を平準化して看護職員1人当たりで入退院できる患者は、急性期大規模病院では月3人前後に過ぎない。そして慢性期病院ではその数はもっと少ない。

2021-08-06 07:15:25
中村利仁 @rijin_nakamura

看護師が1人で担当する患者の数を少なくすると、患者の在院日数は減る。しかし、看護師1人が月当たり入退院させる患者数は変わらない。重症患者のベッドを増やすためには看護職員を増やさねばならない。

2021-08-06 07:19:28
中村利仁 @rijin_nakamura

四年制大学を含めて、看護職を養成する学校の定員は拡充されてきた。しかし、定員割れが深刻化している。一つには少子化の影響は確実にある。同時に貧困化の影響もある。高校卒業後進学するためには金がかかるだけでなく、働けば得られるはずの収入も失われる。貸与制奨学金制度を拡大してきた。

2021-08-06 07:23:51
中村利仁 @rijin_nakamura

学費が賄えたとしても、失った収入を取り返すのが容易じゃないのは18才にもわかる。卒業時に借金があるんだから。日本の医療政策の10年は、こういう形で失われてきた。ここ数年、看護師国家試験の合格者数は増えている。関係者の努力は多とすべき。しかし、ニーズに対して充分ではない。不足している。

2021-08-06 07:28:04
中村利仁 @rijin_nakamura

団塊の世代が高齢者の仲間入りをして、病人が増えている。次の団塊ジュニアの波も見えている。その中でカツカツで回っている病院には金が回ってこない。医療費抑制政策が続いているから当然の結果だ。行政も経営者も看護職の増員と処遇の改善が必要であることはわかっている。しかし金がない。

2021-08-06 07:31:18
中村利仁 @rijin_nakamura

国民の貧困化も進んだ。しかし消費税収が空前の金額を記録したのを見てわかるとおり、課税と再配分のアンバランスもまた深刻化し、増え続ける社会保障負担に生産年齢人口は不満を抱き、そのはけ口として医療者叩きと医療費抑制が続いている。結果が医療崩壊。表層的な対策には限界がある。

2021-08-06 07:35:11