パイデでオメガの話

アルファでパイロンの龍馬さんとオメガでデッドローンの話だよ
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かむい @sunyaxxx

優しく微笑まれても、ぞっとする冷たさがある。 煙管の先端をいぞーに向け、 「仕事をしても、君がその身体を売っても、身体の臓器を売り払っても返せないほどの莫大な借金があると言ってるんだ、知らなかっただろ」 奥歯を噛みしめる。

2021-08-29 22:17:41
かむい @sunyaxxx

鋭く睨まれても一切動じることもなく、むしろいっそうの優しい笑みを浮かべ借用書の束を卓に置き、 「君が僕から勝つごとに一枚、この借用書を破棄する、大丈夫、夜はこれからたっぷりと時間はあるからね、楽しく勝負をしようか、デッドローン」

2021-08-29 22:17:41
かむい @sunyaxxx

全賭けするために出した札をいったん全て引き下げる。 「逃げやせんき、離れえ」 肩を掴む男を睨む。今のいぞーは丸腰だ。賭場に入る際には基本的に武器の一切を持ち込まない事がルールだ。 それに則って武器の一切は持ち込んでいない。だからもしも何かあればいぞーが使うとしたら己の身体のみだ。

2021-08-30 00:28:47
かむい @sunyaxxx

だがいぞーの場合は全身が武器のようなものだ、それでも一番馴染み好んで使うのは刀。 刀を手にしたいぞーはもはや敵なしだ。相手がアルファだろうか、そのアルファがオメガを従わせる、その力を使われる前にいぞーはそのアルファを息を止めることができる。

2021-08-30 00:28:47
かむい @sunyaxxx

最底辺でりょーまに見捨てられたオメガと噂が立ち、顔立ちが少々幼く見えることから襲われそうになったアルファを何度か叩きのめした、叩きのめしたというのは、まだ可愛い表現だ、半殺しで病院送りにしてやった。

2021-08-30 00:28:48
かむい @sunyaxxx

プライドの高いアルファはそれを隠した。まさか最底辺のオメガにそこまでやられるなんて思ってもみなかったからだ。 その時のいぞーは、もう自分の身の事などどうでもよくなっていたので、アルファを敵に回そうとどうしようともうどうでもよかった。 そこから賭場にも入りびたるようにもなったのだ。

2021-08-30 00:28:48
かむい @sunyaxxx

その後だ、りょーまの子を作る為に借腹になれと言われたのは、その時はさすがにりょーまの子を身に宿したということで大事にされた。抑制剤も飲むこともなかった。

2021-08-30 00:28:48
かむい @sunyaxxx

妊娠したということで食事がとれないなどのしんどさと体調不良などの不便さがあったが自分の体内に腹にりょーまの子を宿したということで耐えれた。 「壺振りは、おりょーさんがやるぞ」 「おりょーが」

2021-08-30 00:28:49
かむい @sunyaxxx

「安心しろ、おりょーさんは公平にしてやる、ま、それでも、お前がりょーまに勝つことなんてないがな」 「ぬかせ、スベタ」 舌打ちし、どうせもうりょーまとおりょーが仕切っているのなら、もういぞーに何も言えない。 「ルール」

2021-08-30 00:28:49
かむい @sunyaxxx

苛つきながら煙草を一本取り出し肺に吸い込むと、それで苛つく気分を落ち着かせゆっくりと吐き出す。 「あ、ごめん、ルールね、えっと、デッドローンが僕に勝ったら一枚借用書を破棄する、一件の借金がなくなる」 「馬鹿にしよって、聞いちゅうきわかっちゅう、わしが負けた場合じゃ」

2021-08-30 00:28:50
かむい @sunyaxxx

煙管の中にある葉を盆の中に捨てて新しい葉を入れて新たに吸い込み長く吐き出す。 「僕の子供が寂しがり屋でね」 いきなりの子供の話に眉間が上がる。 「こんな仕事だろう、なかなか『会えないん』だ、だからね、」 りょーまの子供…どくりと心臓が鳴る。

2021-08-30 00:28:50
かむい @sunyaxxx

周りが静かにざわめき、りょーまは初めて覚えた恋に薄っすらと頬を赤く染め照れている。 「しょう、きか、」 首を横に傾ける。 「いたって正気だけど?僕は本気だよ」 何を言ってるんだと心底わからないと言う表情にぞっとした。

2021-08-30 00:28:51
かむい @sunyaxxx

「子供は何人いてもいいんだ、いぞーさんが僕の子供を産み続けてよ、ね」 なんて綺麗な顔で笑うんだろう。いぞーは本心からぞっとした。 落ちた煙草を拾うこともできずに。 「大丈夫、いぞーさんとの子は大事に育てるから、ね」 いぞーは、その場で…胃の中のものを全て吐き出した。

2021-08-30 00:28:51
かむい @sunyaxxx

勝負は一時休戦、りょーまのあの無邪気な気持ち悪さに胃の中のものを全て吐き出し場が静まり返った。 吐瀉物は、すぐさま片され、裏でいぞーを休ませ落ち着いたところで改めて勝負を始めることとなった。 絶対に負けられない、この勝負だけは絶対に。

2021-08-30 15:39:24
かむい @sunyaxxx

りょーまの元にいるのは自分との子だ、それをりょーまは知らない、噂に聞いたところりょーまは屋敷に戻っていないらしい。 番になったオメガと子供を放置し仕事に没頭しているというのを聞いた。

2021-08-30 15:39:25
かむい @sunyaxxx

それを噂で聞いた時に、なぜだとわからなかった。番のオメガを好きなのではなかったのか?子供がいれば大事に育てると思っていた。確かに人に恨まれることを生業とする稼業だが…それでも…わからない、りょーまが考えていることがまるでわからない。

2021-08-30 15:39:25
かむい @sunyaxxx

丁半の小さな賽の目が壺の中に入り音をたて卓の上に伏せて置かれる。 壺振りのおりょーと名を馳せているほどに、その壺振りは一種の芸術とまで言われるおりょーのさばきは見事だ。 壺を振るのがおりょー、まずいぞーが賽の目を選んで、二分の一の後をりょーまが選ぶ。

2021-08-30 15:39:26
かむい @sunyaxxx

まだ十回程度だが、順調にいぞーが勝ちをもっていく、そしてりょーまが目の前で借用書を破り捨て次を促す、が、 「壺振りを変えさせえ」 十枚目の借用書を破ったところで、いきなりそんな事を言い出す。 「どうしたの?」

2021-08-30 15:39:26
かむい @sunyaxxx

先程の気持ち悪い発言が本当なら、りょーまがいぞーに安易に勝ちを譲らせのはおかしい。 二人の間にある借用書はえげつな量だ、それをこんな勝負を一回ごとにやるにしろ一晩でおわらないのは明白だ。 「まあ、一晩で終わる量じゃないよね」 「わしが振る」

2021-08-30 15:39:27
かむい @sunyaxxx

「信用してないのか?おりょーさんは振ってるだけだ」 「りょーま贔屓のおりょーを信用できるかよ」 いぞーを調子づかせて一気に落とす、そこまでを考えられてもおかしくないような気がする。 実際、先程から背中がぞわぞわとして落ち着かないのだ、こんな時のよくない勘は当たる。

2021-08-30 15:39:27
かむい @sunyaxxx

「いいよ、その代わり条件がある」 そうだろう。いぞーが勝利した時の条件は随分と破格だ、いぞーを手にした時の条件を思い出せばまた吐き気がするほどの気持ち悪さだが、壺振りを変えさせるのだ、条件の一つや二つだされても不思議ではない。 「勝負は、お互い全賭けだ」 「おん」

2021-08-30 15:39:27
かむい @sunyaxxx

おりょーから賽の目と壺を受け取り、まず賽の目を卓に転がすそれには重石のような音もない。 いぞーは目もいいが耳もいい、色々な賭場に顔を出していただけにイカサマの手順もわかっている。 壺にも賽の目にも細工がされていなければ、この勝負、いぞーの勝利だ。

2021-08-30 15:39:28
かむい @sunyaxxx

イカサマの仕方もわかっている、その振り方も。 「一発勝負じゃ」 賽の目を壺の中に放り込む。 からりと小さな音をたて転がる軽やかな音、そしてそれを勢いよく卓に叩き置いた。

2021-08-30 15:39:28
かむい @sunyaxxx

知ってるかな?ついてない勝負を勝ったと判断したら、それは負けなんだよ

2021-08-30 15:39:29
かむい @sunyaxxx

音はしないはずだと言うのに目を宣言する前に微かな音が鳴った。 本当に微かな音、ころり…かたん…っと。 「丁」 静かに立ち上がり壺の上に手を置くいぞーの手に手を重ねる。 「丁だよ、デッドローン」 選べる選択肢はない、りょーまは確信してそう言っている。 壺から手を動かせない。

2021-08-30 15:39:29
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