コルベットが語る大西洋戦争

@flowerclass 氏による第二次世界大戦・大西洋における通商保護戦についてのメモ書き。イギリス海軍のほかカナダ海軍などについても。護送船団の編制、ヘッジホッグやHF-DFはそんなに早く活用されなかった等々。 イギリスの対潜前投兵器についての派生解説は http://togetter.com/li/178876
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こんぱすろーず @flowerclass

メモ 1942年8月頭における北大西洋の船団護衛部隊の編成。米英加の護衛艦隊は、大きく3つの戦隊(Escort Force)に分割されていた。アメリカ東岸と西大西洋を管轄する西方護衛戦隊、中部大西洋を受け持つ中央護衛戦隊、東大西洋を担当する東方護衛戦隊である。

2011-08-20 22:14:02
こんぱすろーず @flowerclass

西方護衛戦隊Western Local Escort Force 中央護衛戦隊Mid-ocean Escort Force 東方護衛戦隊Eastern Local Escort Force

2011-08-20 22:14:59
こんぱすろーず @flowerclass

各戦隊は6~8個の護衛隊(Escort Group)を麾下にもち、1個護衛隊は駆逐艦2~3隻とコルベットもしくは掃海艇4~7隻で構成されていた。一部の護衛隊には武装トロール漁船も所属。航続距離の長いスループは、この時期基本的に北大西洋には配備されず、主に西アフリカ航路にて運用。

2011-08-20 22:16:36
こんぱすろーず @flowerclass

西方戦隊はボストン・ハリファックスを母港とするアメリカ・カナダ海軍(一部イギリス海軍)の艦艇からなり、アメリカ大陸東岸の沿岸船団と北大西洋船団の航路西端部の護衛を受け持った。1942年8月1日現在の戦力は、駆逐艦18、コルベット33、掃海艇5(ただし英加軍のみ。米軍艦艇は不明)

2011-08-20 22:18:20
こんぱすろーず @flowerclass

カナダ海軍は開戦から約3年で急成長を遂げていたが、まだまだ手が足りずセントローレンス湾の防備も怪しい状況だったのに、アメリカの護衛戦力が弱体だったため、一時カリブ海やメキシコ湾にまで駆り出される羽目に

2011-08-20 22:19:57
こんぱすろーず @flowerclass

中央戦隊はニューファウンドランドのセントジョンズを母港とするイギリス・カナダ両軍の艦艇からなり、北大西洋船団がもっとも激しく攻撃を受ける大西洋中部の護衛を受け持った。護衛区間が長く消耗も激しかった。8月1日現在の戦力は駆逐艦11、コルベット41。トローラーもいたはずだが数不明。

2011-08-20 22:22:06
こんぱすろーず @flowerclass

東方戦隊はリバプール、ロンドンデリー、スコットランドのグリーノックなどを母港とするイギリス海軍の艦艇で構成され、北大西洋船団の航路東端とイギリス西・北岸の沿岸船団の護衛を担当した(ドーバー海峡や東海岸船団の担当は別)。8月1日現在の戦力は駆逐艦20、コルベット39。

2011-08-20 22:23:19
こんぱすろーず @flowerclass

アメリカからイギリス本土へ東航する北大西洋船団(HX・SC)の護衛は以下のように分担して行われた。出港地から西経49度までは西方戦隊の護衛隊が同行(61度以東はカナダ海軍艦艇のみ)。西経49度の「西方洋上会合点」にてセントジョンズから航行してきた中央戦隊の護衛艦と交代して帰港。

2011-08-20 22:25:27
こんぱすろーず @flowerclass

中央戦隊の護衛艦は、エアカバーのなくなる最も危険な海域を進み、西経22度の「東方洋上会合点」にて、迎えに来た東方戦隊の護衛艦に護衛を引き継ぎ、ロンドンデリーへと向かう。そこで給油と数日間の休養を済ませると、イギリスから西航するON・ONS船団に合流し、カナダへ向かう。

2011-08-20 22:26:44
こんぱすろーず @flowerclass

東方戦隊の護衛艦は西経22度以東、船団各船の目的地までの護衛を担当する。北大西洋船団はリバプール港に入港することが多いが、全船がそこで荷を降ろすわけではなく、さらに分散して各地へ向かうので、その航程も護衛する必要があった。

2011-08-20 22:27:51
こんぱすろーず @flowerclass

護衛艦の航続力が不足しており、船団の全行程に同行することが不可能だったため、このような複雑な方式がとられていた。のちに護衛艦の洋上給油が実用化されると、ひとつの護衛隊が出港から目的地到着まで護衛し続ける方式に変わる。

2011-08-20 22:29:24
こんぱすろーず @flowerclass

なおこの3戦隊のほかに、アイスランドを経由してイギリス本土へ向かう軍需品輸送船団(一部はアイスランドからソ連に向かう)を護衛するアイスランド戦隊 (ほぼ全艦アメリカ海軍からなる)や、援ソ船団や大規模な兵員輸送船団を護衛する特別護衛戦隊が存在していた。

2011-08-20 22:35:38
こんぱすろーず @flowerclass

1942年夏の北大西洋船団の出港頻度は、1ヶ月12船団程度(東航・西航それぞれ6船団ずつ)。

2011-08-20 22:34:15
こんぱすろーず @flowerclass

コミケで買った「大西洋の戦い」(サークル名失念)の本、初心者向けということでよくまとまっているが、参考文献に並ぶ「Uボート」の文字…しょうがないんだけどね日本語で読めるイギリス側視点の大西洋の戦いに関する資料なんてないから(ビスマルク追撃戦を除く)。

2011-08-20 23:35:13
フォースの力に取り込まれただよもん @V2ypPq9SqY

@flowerclass ちょっと正確な名前は忘れましたが、イギリス海上護衛船モノでイギリス側をすごい調べてたやつが依然ありましたよー。 船団を組むようになるまでのやつで

2011-08-20 23:38:01
こんぱすろーず @flowerclass

@V2ypPq9SqY WW1のやつですよね。冬に買った覚えあります。わたしも書名覚えてないんですが(笑)

2011-08-20 23:41:04
こんぱすろーず @flowerclass

昨日だよもんさんが言及してたの、この本だね。いぎしちじ『近代船団護衛方式の誕生 第一次世界大戦1917-1918』。昨年の冬コミで購入しましたが、大変な良書でありました。

2011-08-21 22:55:15
こんぱすろーず @flowerclass

イギリス海軍はヘッジホッグを使いこなせず、大西洋の戦いにはそれほど寄与してない(44年後半ぐらいまでキルレートが爆雷と変わらなかった)、なんて話も、日本ではあまり知られてないよね。

2011-08-20 23:48:02
こんぱすろーず @flowerclass

ヘッジホッグをやっと使いこなせるようになったころには、遥かに効果的なスキッドが実用化されていたわけで。ヘッジホッグでがんがん戦果を上げていたのは太平洋のアメリカ海軍。

2011-08-20 23:54:23
ALF874/八為あるふ @alf874

@flowerclass あ、そうなんですか。 いかにもな恐怖の新兵器的叙述がついてまわりますけど、探知装置なり戦術機動なりがセットになるまで時間が必要だったのですね <ハリネズミ

2011-08-20 23:54:41
こんぱすろーず @flowerclass

@alf874 いくつか理由はありますが、指揮官が積極的に使用しなかったことが大きいようです。攻撃前に敵の目前で減速しなければならない、外れると爆発しないので士気にかかわる、制圧や威嚇に使えない、ということで使い勝手が悪いと思われていました。

2011-08-21 00:10:33
こんぱすろーず @flowerclass

あと、HF-DFも脅威の新兵器扱いをされるが、探知しただけでは役に立たず、コンタクトに対して船団から分派できる高速護衛艦(高速じゃないと船団復帰が大変)の増勢とか、船団に同行しないフリーの対潜掃討グループ(Support Group)の編成によって、有効に活用できるようになった。

2011-08-21 00:20:08
こんぱすろーず @flowerclass

そういえば前投式対潜兵器といや、ヘッジホッグに敗れて採用されなかった(正式に競争試作してたわけじゃないが)ソーニクロフト社製の対潜迫撃砲"Five Wide Virgins"がなかなか面白いんだが、眠いんで明日にしよう。

2011-08-21 00:32:34
山猫男爵 @baron_yamaneko

※Five Wide Virginsについては、派生編として「5人の処女とイカ臼砲―ロイヤルネイビー的前投式対潜兵器発達小史」をトゥギャりました。 http://t.co/vibbsc0

2011-08-25 00:01:29
こんぱすろーず @flowerclass

昨晩触れたヘッジホッグのキルレートが爆雷とあまり変わらなかったという話、数字見つけたので転載しておこう。1943年上半期における爆雷攻撃の成功率5.0%に対しヘッジホッグ攻撃の成功率8.5%。同年下半期では爆雷3.7%に対してヘッジホッグ8.2%。一応爆雷より有効、に見えるけど…

2011-08-21 11:47:51