兵隊文庫で大人気のHなヒストリカルロマンス『永遠のアンバー』

「ボストンで禁止」に指定され、ヘイズオフィスも激おこだった1945年全米ベストセラーForever Amberについて
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海鷹 @SakrelBahr

復刊運動するほどの情熱はないしけど死ぬまでに読んどきたいなーとボンヤリ思ってるのがキャスリーン・ウィンザーの『永遠のアンバー Forever Amber』 『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』の中で言及されていた、当時戦地の兵隊さんに大人気だったエッチなヒストリカルロマンス小説

2020-06-25 21:50:14
海鷹 @SakrelBahr

反対をおして兵隊文庫のラインナップに入れた戦時図書審議会に世界各地の兵士が感謝したという逸話 books.google.co.jp/books?id=ov8-D…

2020-06-25 21:57:05

"結局、戦時図書審議会は兵士に送る作品の種類を制限せず、多様な作品を提供すべきだという判断を下した。アメリカ軍は自由を守るために戦っているのだから、どのような作品でも――くず同然の代物でも、兵士が自由に読めるようにすべきだと考えたのである。

 戦時図書審議会は、「『永遠のアンバー』とStrange Fruitを兵隊文庫として出版します」と兵士に伝えた。戦時図書審議会の決断に世界各地の兵士が感謝した。また、作品を独自に選定し、物議を醸している作品も進んで出版する戦時図書審議会の姿勢に、多くの兵士が敬意を表した。出版させまいとする宗教組織などの圧力に屈するな、と励ます兵士もいた。ある歩兵はこう訴えている。「どこかの組織が選定に口を挟んできたら、無視してください。断固として無視してください。もしも、矯風団の人間が近づいてきたら、いかにも馬鹿にしたように横目でみながら、失せろと言ってください」"

[『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』著: モリー・グプティル・マニング、 訳:松尾恭子(東京創元社)](http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070786)

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊) (創元ライブラリ)

モリー・グプティル・マニング,松尾 恭子

海鷹 @SakrelBahr

美貌のヒロインが金持ち老人の後妻になったり盗賊の情婦になったり女優になったりと男性遍歴を重ねた末にチャールズ二世の愛妾にまで成り上がるけど、そんな莫連女にも忘れえぬ初恋の男がいて…というような話らしい 1945年アメリカ合衆国ベストセラーリストで一位になってる en.wikipedia.org/wiki/Publisher…

2020-06-25 22:04:54
海鷹 @SakrelBahr

1947年にポスト『風と共に去りぬ』をあてこんで映画化したけどイマイチに終わった。監督がオットー・プレミンジャーだから悪くなさそうだけど製作上の制約がありすぎたか Forever Amber youtu.be/g4YYYVCJWtA

2020-06-25 22:09:02
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海鷹 @SakrelBahr

ピューリタン的道徳に反する内容だから、いわゆる「ボストンで禁止」に指定されたけど、それが宣伝になりハードカバー本の初週実売が10万部(最終的には300万部超)、映画化権が売れるより前にヘイズオフィスから非難を受けた

2020-06-25 22:19:45
海鷹 @SakrelBahr

映画が公開された日の翌朝のミサで、「あんな映画を見に行ったら地獄に落ちるぞ」と説教した牧師もいたとか

2020-06-25 22:21:56
海鷹 @SakrelBahr

そんな逸話ばっかりだからキワモノなのかと思ったら、執筆時のウィンザーの夫は王政復古期スチュワート朝の研究者だったから時代考証は正確で、物語の方もエンタメ性が高くて大衆小説としては文句なしに面白いらしいんだ

2020-06-25 22:28:24
海鷹 @SakrelBahr

肝心の(?)エロ描写については、あくまで1944年の一般小説基準なので…晩年のインタビューで作者は「みんなが思ってるほど検閲でひっかかった箇所ってないのよ~。でもどうしても削れって言われたとこは三点リーダーで切り抜けてやったわ」とかおっしゃってました。つよい

2020-06-25 22:37:28
海鷹 @SakrelBahr

アメリカのペーパーバック小説界では70年代から80年代にかけて「ボディス・リッパー」というエロ要素の強いヒストリカルロマンスがブームになるけど、親に隠れてアンバーを愛読していた少女たちが長じてボディスリッパー小説を書くようになったとかなのかな

2020-06-25 22:51:58
海鷹 @SakrelBahr

分厚い原書 "FOREVER AMBER" [ 1st ] Hardcover – January 1, 1945 日本語版は『風と共に去りぬ』の夢をもう一度と1952年に三笠書房が全三巻で出してるけど古書だと微妙に高い…しかし市内の図書館には所蔵してない…ううむ pic.twitter.com/jRTYf5sa5s

2020-06-25 23:21:12
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ボストンでは禁止

Vatanabeus @nabe1975

ボストンでは禁止(Banned in Boston) 19世紀末から20世紀中頃までボストンで使われた慣用句。19世紀後半、市当局によって執筆物や楽曲、演劇など「いかがわしい」作品の展示や公開が禁じられていたことに由来する。民間団体も協力し、検閲や発禁、拘禁が行われた。

2020-02-15 11:05:51
Vatanabeus @nabe1975

ボストンは厳格な清教徒によって建設され、その後にアイルランドからやはり保守的な道徳規範を持つカトリック教徒が移住してきた経緯を持つ。19世紀に猥褻な内容の郵便物を禁止するコムストック法を成立させた「道徳的な十字軍」アンソニー・コムストックによってキャンペーンが開始された。

2020-02-15 11:07:58
Vatanabeus @nabe1975

19世紀末の段階で、ボストン市当局は彼らが「猥褻、不適切、不快」と感じるあらゆるものを規制する権限を有していた。そのうち「ボストンでは禁止」とは刺激的な作品を指す慣用句となり、販売業者はむしろ「ボストンでは禁止」を受けると格好の宣伝材料になると喜んだという。

2020-02-15 11:10:51
Vatanabeus @nabe1975

アメリカにおける最後の検閲論争は1960年代に行われ、1965年にボストンでウィリアム・バロウズの「裸のランチ」が禁止されている。「ボストンでは禁止」を進めた民間のウォッチ・ウォード協会はニューイングランド市民犯罪コミッションに改名し、論点は出版物から賭博・薬物に移行していった。

2020-02-15 11:14:18

キャスリーン・ウィンザー著『永遠のアンバー』

海鷹 @SakrelBahr

思いがけなくご恵投いただいた キャスリーン・ウィンザー著『永遠のアンバー』(訳:佐藤亮一、三笠書房1952年刊)を読了しました。 #失われた書影を求めて pic.twitter.com/qh2et2skD4

2020-07-26 17:59:04
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海鷹 @SakrelBahr

作品の周辺事情は以前こちらのツリーに書いた通り 嗚呼、こんな罪深い本を読んでしまったら天国にいけなくなってしまうわ!#ボストンでは禁止 #ウチは曹洞宗だから無問題 twitter.com/SakrelBahr/sta…

2020-07-26 18:01:48
海鷹 @SakrelBahr

兵隊文庫(Armed Services Editions)版 T-39 "Forever Amber" が"Condensed for wartime reading(戦時下の読書のため要約)"にされているのはエロシーンに検閲が入ったのかと思ってたんですが、カットするほどエロ描写ないぞ? pic.twitter.com/x9v9HgZghH

2020-07-26 18:02:49
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海鷹 @SakrelBahr

一番長い濡れ場(ヒロインの初体験シーン)でこの程度 他はベッドインした次の行で「情熱の嵐が去ると~」みたいに事後描写になるのがほとんどで、実質朝チュン。ポルノグラフィとして読むのは厳しいのでは これで満足だったの兵隊さんたち?! pic.twitter.com/hgU3wcDYIH

2020-07-26 18:03:58
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海鷹 @SakrelBahr

「性行為そのものの描写」自体は思ったほどじゃないけど、「性道徳の描写」については、確かに当時の保守層が血相変えて怒るのはわかる。 作中でヒロインは婚外子を3人生んで2人堕胎してるので、キリスト教倫理的には完全にアウト 婉曲表現だけどオルレアン公フィリップの男色にも触れてるし

2020-07-26 18:04:51
海鷹 @SakrelBahr

そもそも王政復古直後の話だから、清教徒革命の反動で作中人物の大半が「お堅いピューリタン的道徳」をディスりまくってるし ↓宿屋の主人の台詞

2020-07-26 18:05:51