兵隊文庫で大人気のHなヒストリカルロマンス『永遠のアンバー』

海鷹 @SakrelBahr

"ああ、ほんとに、私共、王様をお迎えして大喜びでございますよ、全く。こん畜生ですよ、殿様！私共が、當地でどんな目に會つたか、御想像もできますまい！トランプはダメ。賭けはダメ。芝居もダメ。酒がダメ。踊りがダメ。それに、あろうことか！奴らは密通を死罪にしようとまでしたんですからね！"

海鷹 @SakrelBahr

ヒロインの人生双六 ※16歳の田舎娘がふらりと通りかかったイケメン貴族にくっついてロンドンに行き囲われものになる ※妊娠して捨てられ手近な男と結婚するが金を持ち逃げされる ※ニューゲート監獄に収監されるが悪名高い盗賊の情婦になって脱獄

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※陋巷で美人局をやりつつ出産するも情夫の盗賊が縛り首になり逃亡 ※放蕩学生を誘惑して同棲、堕胎 ※女優になってパトロンに囲われるが、パトロンが決闘で死亡 ※湯治場で清教徒の老富豪をひっかけて後妻に収まり、遺産ゲット （ペスト禍で一回休み）

海鷹 @SakrelBahr

※爵位狙いで貧乏貴族と結婚、義理息子との姦通がバレて殺されかけるがロンドン大火のどさくさで逆襲、夫を殺害 ※富豪の伯爵未亡人として宮廷に乗り込みチャールズ二世の愛妾になり、庶子を妊娠、形式上の夫には公爵位が与えられ、ヒロインは26歳にして権勢並びなき公爵夫人に

海鷹 @SakrelBahr

主人公の男遍歴を軸に1660年～1670年のロンドンを描いた娯楽小説としては非常に面白いけど、ロマンス小説というより『悪女聖書』とか倉科遼のネオン街ものに近い、というか、ほぼほぼダーク梶原一騎だわ「人間の性、悪なり！」

海鷹 @SakrelBahr

『アンバー』とともに戦地の兵士たちから熱望された"Tiffany Thayer's Three Musketeers"は『三銃士』のミレディを主役にしたエロス＆バイオレンス増量版の再話なんだそうで、アンバーも悪女ものノワールの系譜としてとらえた方がいいかも

海鷹 @SakrelBahr

70年代ヒストリカルロマンスの祖として見るのも、やはり色々と違う気がする ボディスリッパー小説のヒロインはさらわれて凌辱されるパターンが圧倒的に多く、常に自分からグイグイ男を喰いにいくアンバーに比べると保守的受動的

海鷹 @SakrelBahr

ていうか、ロマンス小説定型にあてはめると『アンバー』の終盤は「放蕩無頼に生きてきた男が天使のように善良な少女と出会って真実の愛を知る」話で、その結果として清算される強欲愛人が主人公なわけですが

海鷹 @SakrelBahr

最終盤、臨月の恋敵（正妻）の元に乗り込んでマウントとろうとする愛人 数多あるロマンス小説に登場する性悪当て馬女の中でも、ここまではっちゃける奴はそうそうおるまい #だがこいつがヒロインだ pic.twitter.com/w8WQa7d6Ca

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海鷹 @SakrelBahr

このヒロイン、関わりあってきた男たちが提供してくれるもの（物品や保護される立場、賞賛や快楽）が好きなだけで相手の男自体には興味がなく、初恋のイケメン貴族にしても「運命の人なの」と執着しつつも、その男を理解しようともしない、どう見ても相手そのものを愛してはいない

海鷹 @SakrelBahr

つまらない日々を過ごす少女の前に突然あらわれて、ここではない別のキラキラした世界に連れて行ってくれる美しい男、という意味ではそのイケメン貴族は「王子様」ではあるのだけど、あくなき上昇志向で金と身分と権力を手に入れた今、その「王子様」に如何ほどの価値があるのかという…

海鷹 @SakrelBahr

エゴイストのヒロインがこの男の何に執着しているのかというと、多分「あの日彼が見せてくれたキラキラしたあこがれ」なんじゃないかと 向き合っているのが生身の男ではなく「見果てぬ青春の夢」だから執着から解放されない厄介案件

海鷹 @SakrelBahr

映画版のラストでアンバーは別れを受け入れてるけど、原作では「あの男の正妻は船旅の途中で死んだってよ」という嘘を真に受けて新大陸まで追っかけて行くのを政敵のバッキンガムが「馬鹿な女だなー」と見送ってEnd フォーエバー・アンバーってそういう意味か

海鷹 @SakrelBahr

ヒロインのせつない恋心に紅涙を絞るような要素は一切ないけど、お騒がせ悪女の出世物語と難事が多すぎるクラレンドン政権下のイングランド（ペスト禍、首都大火、オランダ艦隊侵入が連続で起こるって…）を並行して描いたジェットコーター小説としては文句なしに面白い作品でした

海鷹 @SakrelBahr

訳者あとがきより著者情報 新訳で復刊は無理だろうなー pic.twitter.com/j7X6N1Xtm3

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