佐藤誠市氏によるナムコ80年代ゲーム作品についての証言
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「ゼビウス」前史その2 企画者の退職とナスカの地上絵
さて『シャイアン』の企画が無事通り、いよいよ開発段階に進みました。同期君が仕様書を書いている間、ハードウェアの試作も行われています。『ゼビウス』はあまり会社から期待されていないプロジェクトだったという話も世に出回っていますが、そんなことは無かったと思います。
2011-08-25 10:26:33ハードウェアを新規に起こすプロジェクトが期待されていないはずがありません。例えば『ギャラガ』『ボスコニアン』『ディグダグ』などはそれぞれ『ギャラクシアン』『ボスコニアン』『パックマン』の基板利用と言うことで開始され、すべて入社一年目の企画者である私と同期君の企画でありました。
2011-08-25 10:30:59※http://twitter.com/SugarSeisan/status/106895225179480064 にて「『ボスコニアン』は『ラリーX』の基板応用でした。」と訂正されています
※なお「ギャラガ」に関しては、ギャラガウェブ http://galaga30th.com/ 内の横山茂氏へのインタビュー記事で、横山氏が全ての仕様を決めた旨の発言があります 同記事内に「ボスコニアン」は後輩が全部仕様を決めたとあり、この「後輩」が佐藤氏を指すと思われるので、ここで記述されている内容と少し違う点がありそうです
従ってこれらのゲームに関してはあまり期待されていないといわれても仕方が無いと思います。『SOS』『海底宝探し』『ナバロン』といったものと内製・外製の違いはあれこそさほど変わりはなかったと思います。まあ研修の一環で失敗しても被害が少なければとでも思っていたのでしょう。
2011-08-25 10:35:39『ゼビウス』はこれとは違いはじめから新基板でいくことになっていました。スプライトの色数も透明入れて16色です。この後に出た『リブルラブル』でも透明入れて4色で色数が足りないものはスプライト2枚重ねで対処したりしていました。
2011-08-25 10:39:50大型筐体の『ポールポジション』でもないと許されない贅沢仕様だったのです。ただ贅沢すぎてコストの問題などで最終的には透明入れて8色になり、黒のグラデーションのモノリスが生み出されたりしました。コストを下げる工夫は最初から施されていて特にスクロール面に関してもそうでした。
2011-08-25 10:46:52まず8X8のキャラクタを色分けします。これにバックコードというものを割り付け色の種類を変えます。同じ形のキャラクタでもバックコードを変えることにより緑にしたり土色にしたりできるわけです。キャラクタには水平方向と垂直方向に反転できる機能があり、キャラクタ1個ずつに指定します。
2011-08-25 10:53:32次にこのキャラクタを4つ集めて16X16のユニットを作ります。このユニット全体を水平・垂直反転することができます。最後はこれを大きなマップのどこに配置するかと言うことで作業終了です。この作業を同期君は床にでかい紙をおいて必死に作っていました。私は大変そうだという目でみていました。
2011-08-25 10:58:33この作業が大変なのか、予てからの夢なのか同期君はある日サハラ砂漠を横断したいとか言い始めました。冗談かと思っていたらバイクの輸送の手続きとかいろいろ始めて本当にアフリカへ行ってしまいました。勿論会社の許可は得ていたので、会社に戻ってきたらそのまま仕事を続けるものだと思っていました
2011-08-25 11:04:45ところが会社に戻ってきてしばらくすると辞めることになりました。『シャイアン』の制作が終わったら辞めればと言う話も出たのですが、辞めてしまいました。後で話をしたとき、アニメ好きでオタク的なところのある遠藤氏と話が合わなかったとのことです。何をしゃべっているのかさっぱり解らないと。
2011-08-25 11:09:18同期君はその後拘置所の刑務官をやったり地元に帰って魚市場で働いていたりということをやったりしていましたが最後は高校の先生になったようです。ということで『シャイアン』の地図製作の仕事が私に舞い込みました。データはかなりの部分できていましたのでそう難しくないかなとも思っていました。
2011-08-25 11:15:00ところがハードをが完成し画面に表示してみるとさあ大変、複雑なデータの作りからなのでヒューマンエラーがすごい量で画面はぐちゃぐちゃでした。そこを一つ一つ修正する作業が続きました。一カ所の修正にファイルをいくつもいじり、3個のROMを焼き直すという作業を一日中続けていました。
2011-08-25 11:19:18でも幸いなことに端末の数が多かったので3台の端末を同時に使って時間短縮を図れました。でも一カ所どうしても修正をしたくない部分がありました。そうナスカの地上絵の部分です。あそこには山を出す予定でした。ぐちゃぐちゃになってはいるのですが、これを修正しても山には見えないなと感じました。
2011-08-25 11:23:33なんか茶色のパッチワークの様なモノができ立体感のある山にはならないだろうなと。キャラクターの容量を見ると節約の効果が出ていてあそこにそれなりの絵が出せることもわかりました。その頃には遠藤氏の『ゼビウス』的世界観のキャラクタができていました。ならばと思いついたのがナスカの地上絵です
2011-08-25 11:28:31私の学生時代、デニケンの『宇宙考古学』と呼ばれうるブームがありました。若い人は知らないと思いますが、最近ではハンコックの『神々の指紋』が同じような説をとなえています。『ゼビウス』の世界観に合いそうだと思い資料を探したけれど手元にはありませんでした。実家に置いてきたのです。
2011-08-25 11:37:34そこで困っていたところデザイナーの方が買ってきた商品の包み紙に印刷されていたというのはなんとも嘘くさい話ですが事実です。それで一番有名なハチドリの地上絵をキャラクターにおこしてもらい表示したところ好評でした。山の修正が面倒であるという手抜きからうまれたものでした。
2011-08-25 11:43:51※「(地上絵が)デザイナーの方が買ってきた商品の包み紙に印刷されていたというのはなんとも嘘くさい話ですが事実です」のくだりについては「ゲームサイドvol.23」所収のMr.ドットマン(小野浩)氏へのインタビュー記事で言及されています そこではこのときまで何を描くかまったく決まっていなかったというようなニュアンスの話になっています
面倒くさがりでなければ山の絵を完成させ、どうしたら立体的な山に見えるか工夫したと思いますが、まさしく瓢箪から駒のできごとです。途中で引き継いだ形になったので山にそれほど思い入れもなかったのも一因でしょう。思い入れというのは開発者に大事なものですが、時として逆に働くこともあります。
2011-08-25 11:51:39基板の応用、再利用と「ボスコニアン」前史
なるお/ドリミン・ウナギヌンさんから指摘がありましたが『ボスコニアン』は『ラリーX』の基板応用でした。訂正させていただきます。そこで今日は予定を変えて基板応用について。同じ基板を使ってROM交換のみで新規ゲームが作れれば、安い費用でお客様を呼べるのでお店は喜びます。
2011-08-26 10:06:22開発側も新規基板を起こす必要が無く、開発費の低減が図れ失敗したときのリスクが下がります。従ってみんな喜ぶはずなのですが、ROMだけだとコピーの問題が発生します。一台分買っておいてあとはコピーしてという人も出てきます。開発側の販売部門にとっては死活問題になります。
2011-08-26 10:12:24また、販売部門で売り上げ目標を達成できなくなる事も起こりえます。それは筐体売り・基板売りであればそれ相応の価格を付けられますが、ROM交換では高価格にできません。必然的に売上高は下がって予算未達と言うことになってしまいます。いや本当はROMこそがゲームの要なのですが。
2011-08-26 10:16:00でもROM一式は見た目で何十万という気はしません。私自身、昔ダウンロード販売で買った800円の小説が数十キロバイトだった時高いなと感じてしまいました。理屈では分かっているけど感覚的には違うという良い例でしょう。ROM交換で始まった企画が基板新規起こしになったりするのでしょう。
2011-08-26 10:23:40