ギガベース日誌 ACT08「PHANTASMA BEING」09

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

作戦中、突如として展開中の艦娘達を襲った激しい不調。その不調の正体が、かつてギガベースに所属していた鳳翔にあると、武蔵は作戦終了後にようやく知るに至った。 「さて、そろそろ食堂も復旧しているだろうし、間宮で酒でも飲んで忘れるか！」 「……なぁ、那智よ」　#ギガベース日誌

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「なんだ……ちょっと顔が、怖いぞ、武蔵」 「そのAFGノイズとやらの影響に、個体差のようなものはあるのか？」 「あー……いや、観測した範囲では、艦娘であれば例外は無いらしいぞ。鳳翔が死んだ今、確かめる術は無いが」　#ギガベース日誌

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「……そうか」 武蔵は、確かに聞いていた。 いまだ戦場が鳳翔によるAFGノイズの影響下から抜け出せていたかったであろうその時に。 提督の機体が撃墜された際、珍しくも取り乱し、彼を呼び続ける不知火の声を。　#ギガベース日誌

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「……まぁ、愛が成せる技、としておくか」 「何？今なんて言った？」 「独り言だ、気にするな」　#ギガベース日誌

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───あるいは、ほんの一ヶ月半ほど前にも。　#ギガベース日誌

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「艦娘？遅れてきた子が……って、あれ不知火じゃん？！」 「何だと？」 オーメル本社から奇跡的に生還した直後。 地中海の安全な海域で、ギガベースの艦娘が集結していた時。　#ギガベース日誌

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乗機を失った不知火は、コックピットに隠していた艤装を装着し、提督を安全な箇所まで背負い味方がいるエリアまで航行した。 その時の不知火の動きはあまりにも辿々しく、天龍と武蔵が息も絶え絶えの状態でやってきた不知火を支えた、その時に。　#ギガベース日誌

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武蔵は、不知火の船体と艤装を接続するコネクタを見た。 それは、ギガベースや海軍指揮下の艦娘で共通化されている艤装コネクタの、いずれにも一致していない未知のものだった。 酷く劣化していたそこに、無理矢理艤装を繋いだために、不知火はこのような状態に陥ったのだろう。　#ギガベース日誌

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武蔵はその高度な判断能力を以て、すぐにその結論に辿り着いた。 そうだ、そうであれば、これまで抱いた全ての違和感が解消される。 だが、それが意味するものは何だ？ サウードはそれを自分達に、不知火に告げて、何をしようとしている？　#ギガベース日誌

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「どう、いう」 「不知火、やめろ……聞くな！！」 届かない。■■■■■と不知火にはもう、耳を塞ぐという選択肢は無い。 「単純な話だ。我々は、史上初めて建造された艦娘について、正しい記録を遺さなかった。後の艦娘運用を、正しく管理するために」　#ギガベース日誌

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「この地上で初めて"艦娘"と呼べる存在に成功したのは我々だ。そして、そのプロトタイプ……駆逐艦不知火を、我々は最重要機密として取り扱い、秘匿し続けた。レイレナードにも、メリエスにも、GAにも、ローゼンタールにも、その後の君の運用方法について悟られぬように」　#ギガベース日誌

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「プロ、ト、タイプ……？？」 「ああ。君は全ての艦娘の祖。"船の魂を人格として宿す存在"という、企業が自らの失敗を隠すためだけに作り上げた荒唐無稽な御伽噺を、人々に信じ込ませる為の舞台装置。その原点が、君だ」　#ギガベース日誌

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「さて、重要なのは此処からだ。君の帰還を我々が求めた最大の理由は……この行いもまた、私にとって大きな過ちであるという事だ」　#ギガベース日誌

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「最初の艦娘を建造するにあたって、最も大きな障害は肉体面の確保だった。妖精から回収した艦の情報を自我という形にするまでは良かったのだが……それを書き込む為の人間の身体が必要だった」　#ギガベース日誌

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「ただの人間に艦の自我を"上書き"する手法は、その全てが元々存在した自我との競合を引き起こし、失敗した。そこで我々は、AMSによって個人の自我を肉体から消去し、そうして出来た空欄に再度AMSを用いて艦娘の自我を刻み込むという手法を考案した」　#ギガベース日誌

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「結果は成功。駆逐艦不知火の来歴を記憶として保持する"艦娘不知火"は人の肉体を得て誕生した。君の素材になった人間は、既に成熟していたデザインド計画の被験者だった。ジョシュアという極端な成功例の登場によって、存在価値を疑問視され始めていた者達の一人だ」　#ギガベース日誌

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「彼女の名は、アンジェリカ」 「そうだ。お前のその身体は」 「アンジーが喪った、彼女の身体」　#ギガベース日誌

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「……当時の我々は、深層情報の理解が浅かったと認めざるを得ない。AMSによって記録され、電子上で蘇ったアンジェリカの自我は、肉を持っていた頃とはかけ離れたものに変貌していた」　#ギガベース日誌

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「深層情報が物質に付随する性質を持つ以上、それは必然だった。我々はアンジェリカの失敗を重く受け止め、電子化された被験者達の保全と安定化技術を研鑽していった」 「だが、お前は変わっちまった」 「そう。プロジェクトに身体も脳髄も……つまり心も捧げてしまった」　#ギガベース日誌

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「不知火。大変心苦しいが、君はその席を退いてもらう」 「アンジー。お前がそれを、望まなかったとしても」 「我々は、ただ己が使命と信じたものを果たす」　#ギガベース日誌

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「私が、全て間違っていた。人を貶め、かつてあった、いや……あったかもわからないものを、その枠に押し込んだ。ただ例外を作る、それだけの為に」 「我々には、お前が必要だ」 「ヴ、ウゥ、ア、アンジ、ィ」　#ギガベース日誌

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「ジョシュア、アンジー。君達に全てを返す。君達の上に被さった幻想（ファンタズマ・ビーイング）を、全てこの場で払い除ける事で」 「アンジー。お前にとっての敵を全て討ち滅ぼそう」 「その為に、我らは生まれ変わったのだ」　#ギガベース日誌

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ACT08「PHANTASMA BEING」完 ACT08.5「POLARIS」に続く　#ギガベース日誌