【ある冒険者の最期】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の最期69】「おっと危ない助かったよ君がすぐ手を伸ばさなければ私は崖から真っ逆さまだったねでももうちょっと速かったら腕が伸びきって痛むこともなかったしそもそも君がこの道を選ばなければ私がよそ見して足を滑らせることもなかったし実は君が原因じゃないかと思うのだがいかがかね」

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【ある冒険者の最期70】クラス：踊り子 Lv3 町の大通りにて馬車に衝突し力尽きる。どうしても踊りが上手くなりたい。その気持ちは日増しに強くなり、衝動的に『死ぬまで踊り続ける靴』を履くまで多くの時間を必要としなかった。人々を魅了する踊りを最期に踊れたことは、幸せだったのかもしれない。

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【ある冒険者の最期71】「やっぱり魔法使いなら巨大隕石を降らせてみたいよね！ 素人はここで自分まで巻き込まれてしまうんだけど、僕は多重詠唱ができるから防御用の魔法障壁もバッチリ！ ここは絶海の小さな孤島だから邪魔が入る心配もなし！ それじゃ、詠唱入りまーす！」彼は泳げなかった。

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【ある冒険者の最期72】「どうした、ご自慢の豆鉄砲でも撃ってみたらどうだ！」「挑発してどうする！」これだから素人は。怒りで狙いが定まらない銃は射線から少し動けば当たりはしない。二発目が来る前にこちらはすかさず接近、慌てて隠し持っていた短剣を出しても手首を掴んで無力化という寸法さ！

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【ある冒険者の最期73】クラス：運び屋 Lv64 首都検問所にて病を発症し力尽きる。依頼の荷は問題なかったが、彼に渡された食糧に遅効性の毒が仕込まれていた。それは媒介者の死とともに周囲へ拡散される手筈だったが、彼の容態を奇妙に思った兵の念入りな検査により被害は検問所のみで食い止められた。

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【ある冒険者の最期74】「ふう。怪我はないか？」「大丈夫だよ」――「しっかり食べたか？」「うん、大丈夫」――「冷えてきただろう」「大丈夫だから」――「大丈夫、大丈夫……もうすぐ町だから……」ああ、お前の『大丈夫』が大丈夫だったことなんて一度もないよな。よくもまあ生きてるもんだな、俺。

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【ある冒険者の最期75】よくも裏切ったね――「生まれた瞬間から、死ぬ瞬間まで僕たちはずっと一緒だ」――あんなことを言っておきながら、怪物に遭遇した途端、兄さんが僕を見捨てて……怪物を道連れにするなんて。でも、その後に僕がどうするか、解らなかったのかな。それとも、解っていたのかな。

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【ある冒険者の最期76】クラス：長槍使い Lv8 魔獣の洞窟最深部にて洞窟の主の攻撃により力尽きる。奥に進むほど敵が強くなる洞窟へ再挑戦した一行は以前の経験を糧に最深層へ到達。しかし彼が最奥の宝に近付いた瞬間、正体不明の一撃を見舞われる。それが足元のウニの仕業だとは誰も気付かなかった。

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【ある冒険者の最期77】死後アンデッドとなった彼は生前の日々が忘れられず、正体を隠して人間の生活に紛れた。再び冒険の毎日に心を躍らせるも、不注意から重傷を負ってしまう。「大丈夫、大丈夫だから！」「遠慮するな。彼女は国でも有数の回復魔法の使い手なんだ」「一瞬で痛みも除いてみせますわ」

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【ある冒険者の最期78】「敵ながら見事であった。手向けとして墓標には何でも貴様の望むままに刻んでやろう」「勇敢にも強大な敵に立ち向かい死闘の末追い詰めるも慈悲を与え命は奪わず背を向けたところを刺され力尽きた冒険者 多くの仲間たちに惜しまれながらここに眠る」「長い上に誇張が過ぎる！」

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【ある冒険者の最期79】クラス：幻術師 Lv50 東海の孤島にて、自らの幻術により力尽きる。平凡な人生を歩んだ彼が術師の修業を始め、短期間で才能を開花させた様を目の当たりにした者は、皆が将来に期待した。彼自身の、将来に希望を見出だせず幸せな幻影の中で最期を迎えるという望みに気付かずに。

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【ある冒険者の最期80】「ダメだ、脱出装置もやられた」『諦めるな、何か方法があるはずだ！』「浸水も始まってる。ま、この蒼い海底の寝床で最高に贅沢で優雅な昼寝と洒落込むさ」『もう少し耐えてくれ！ かな――』「通信機もイカれた、か……嫌だ、嫌だイヤだいやだ死にたくない！ 誰か、誰か助け――」

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【ある冒険者の最期81】「真っ先に命を落とすのは馬鹿と相場が決まっているものだ」「さすが天才は言うことが違うね」「そもそも少しでも知恵があるなら冒険者になどならん」「で、我々も馬鹿の仲間入りを果たしたわけかな？」「最後の二人になるまで生き残った、少しはましな馬鹿だ。さあ、ゆくぞ！」

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【ある冒険者の最期82】クラス：祈祷師 Lv13 巨山の祭壇にて、祈祷の最中に力尽きる。災害に見舞われ、生け贄により事態の解決を図る村に訪れた青年。彼は生け贄の代わりに祈りの力で対処しようとした。祭壇で一睡もせず祈り続けた結果、彼は力尽き魂は無事に天へ捧げられ、災害は鎮まったという。

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【ある冒険者の最期83】「惜しい奴を亡くした」「将来有望だったのにね」「ほんとなら今頃は世界中に名声が轟いてたかな？」「案外、一国一城の主になっていたかも」「いい奴ほど早く逝く。昔からそうだよ」「世知辛いなあ」（でも、お前たちは誰一人あいつを止めようとも助けようともしなかったよな）

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【ある冒険者の最期84】「君はもう少し現実を見るべきではありませんか」「夢を見続けて何が悪いんだ」「君にもやれることはあるはずです。例えば」「結構だ、聞きたくない」「……いいでしょう、それが君の選択ならば。現実の君は、もって半日です。良い夢を」「最期まで世話になるな。感謝するよ」

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【ある冒険者の最期85】クラス：吸血鬼 Lv8 月水の神殿にて心身異常により力尽きる。吸血鬼と融合し、人間でありながら吸血鬼の特性を持つことができると目論んだが、長所を発揮するには余りに非力だった。陽の下を歩くことも夜の闇を駆けることもできず、黄昏の中で何者にもなれないまま灰になった。

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【ある冒険者の最期86】この剣は俺の命だ――あくまで比喩だろうと、誰もが思った。彼が身を挺して剣を庇い、体を両断される様を目の当たりにするまでは。仲間たちはその場で彼を弔い、剣を墓標に見立てて突き立てた。――「仕方ない、ここで次の体を待とうか。せめて私を町に連れ帰ってくれればなあ」

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【ある冒険者の最期87】「あんたツイてないな。この国で捕まるなんて」「なあに、すぐに脱獄してやるさ」「解ってるのか？ 警備の問題じゃない。脱獄したところで、外に待つのは死だけだ。熱波、猛毒、化け物、あらゆる環境がお前に牙を剥くんだぞ」「解ってるとも。だから、ここを最後にしたんだ」

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【ある冒険者の最期88】クラス：商人 Lv21 街道で野営中、野盗に襲われ力尽きる。『品を運ぶなら護衛を雇え』初めこそ師の教えを守っていたが、一度も襲撃に遭わなかったことから護衛への報酬を惜しむようになった。彼は気付いていなかった。護衛がいたからこそ襲われなかったということに。

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【ある冒険者の最期89】「でかい化け物にわざと食われて中から倒す。一度やってみたかったんだよ」

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【ある冒険者の最期90】「悪霊だろうと巨竜だろうと物ともしない俺様が病に負けるとはな……後のことは任せた……」「初めての熱だからって弱気になりすぎじゃない？ 町で休めば治るよ」後に世界に蔓延する流行り病の始まりである。彼女は気付くべきだった。彼ですら倒れるほどの重病、ということに。