【ある冒険者の最期91】クラス:重斧使い Lv51 陽光の祠地下37階にて、食事中に喉を詰まらせ力尽きる。それは慢心だったと誰が責められようか。聖水で清め十分に加熱した細切れの魔物が尚も生きているとは空想物語でも耳にしない。胃の中で融合を果たしたそれは、何事もなかったかのように這い出した。
2019-08-13 07:33:47【ある冒険者の最期92】「家族も失い友も失い金も失い、何もかも無くした僕から命まで奪っていく。運命は残酷だねえ」「親も子も親友も仲間も財産も残したまま命を落とすほうが辛いと思うがね」「否定はしないよ。確かに僕に未練はないさ」「冥土の土産に私が恋人になってやろうか」「喜んで死ねるね」
2019-08-14 04:12:50【ある冒険者の最期93】「肉が食いたい」「今なら食べ放題だよ。ほらほら~」「やめんか」「私は喉が渇きました」「飲み放題~」「結構です」「遭難して死にそうになっても、そういうのこだわるんだ」「まあな」「そういうものです」「……じゃあ逆に、僕が二人を飲み食いしちゃっても、いいよね?」
2019-08-14 04:13:25【ある冒険者の最期94】クラス:ハンター Lv53 草原にて野営中に冒険者に襲われ力尽きる。魔物を解体し食材として売ることで生計を立てていたが、魔物を食べ続けると魔物になるという噂が流れ商売が行き詰まる。自分が食べていく分には困らなかったのだが、食事中の姿を目撃されたのが運のツキだった。
2019-08-14 04:13:52【ある冒険者の最期95】道は悪意で切り拓かれ、善意で舗装された。商売敵を蹴落とすために流された無根拠の噂は、何も知らない人々の手によって正義の名の下に拡散され、今やそれは事実として語られる。そのまま商売敵が引退しようと『断罪』されようと、噂の出どころたる彼にとっては同じことだった。
2019-08-15 05:10:32【ある冒険者の最期96】「君と出会ってからだいぶ経つけどさ」「うん?」「『もう一人の自分に会ったら死ぬ』なんて噂は嘘だったみたいだね」「ああ……ふふ、そうだね」「僕とそっくりな君を見たときはびっくり――」「逆だよ」「え?」「出会ったから死ぬんじゃない。殺すために会いに来たんだよ」
2019-08-15 05:11:10【ある冒険者の最期97】クラス:情報屋 Lv13 群衆の前で、呪いにより力尽きる。「情報は鮮度第一」を信念とした彼は、真偽などお構いなしに情報を流し続け、やがて非難されるようになる。謝罪を要求された彼が謎の死を遂げたことについて、原因が「謝ったら死ぬ病」であることには誰も気付かなかった。
2019-08-15 05:12:03【ある冒険者の最期98】「見舞い客皆無で寂しそうだったから私が来てやったぞ。ほら、土産だ」床に臥した男に好物を渡す。かつては遺跡荒らしとして名を馳せた男も、今となってはこの有り様か。「せいぜい味わって食え。じゃあな」死と孤独に怯えるお前の姿など見るに耐えない。もう楽になってくれ。
2019-08-16 07:27:54【ある冒険者の最期99】「改めて見てみると、めっちゃ恥ずかしいなコレ……」「個人情報に配慮してるとは言っても、ねえ……」「しかも生徒の前で朗読されてるしね」「朗読!? 何それ俺聞いてない!!」「あー……注意喚起というか反面教師に使われてるらしいよ」「マジ死体蹴りじゃねえか……」
2019-08-16 07:28:41【ある冒険者の最期100】クラス:編纂師 Lv75 自宅にて書物を完成させた後、病により力尽きる。多くの冒険者に同行した彼女は、その記録を一冊の本に仕上げることを最後の仕事とした。それを目にした人間は決して多くなかったが、彼女は読者に感謝し、満足しながら現世を去った。
2019-08-16 07:29:15