元になった話
高校の頃友人に言われた「緑は何を混ぜても緑だから永遠の色なんだ」という言葉が記憶に残っている。色は色でしかなかったぼくにとって、緑に「永遠性」を見出した友人の感性が素敵だと思ったし、うらやましかった。それまでなんとなく決めていた色や形の「意味」を考えるきっかけになった体験でした pic.twitter.com/eQq6RYWAPD
2022-02-25 17:03:53関連まとめ
この「緑に何を混ぜても緑」ってのは 目の特性のせいなんだよね。 緑の光を検知する目の緑錐体、実は青や赤の光にも反応する。 なので多少混ざっても問題なく緑に見える。 nig.ac.jp/color/barrierf… twitter.com/takuyanokaiga/… pic.twitter.com/5UxKxOuoMH
2022-02-26 18:39:35これはよく考えたいやつ。 人間の視覚は緑の分解能が高い。 例えば、図は有名なCIE1931色空間で、単色光は外側の馬蹄に対応しているが、490nmくらいから570nmまでは「緑」といってもいい。 ここでは緑に対応するM錐体がメインに反応している。 twitter.com/hedalu244/stat… pic.twitter.com/EaFGKkzeHY
2022-02-26 22:06:15これ、私は言語の視点から考えて、緑周辺を呼び分ける色の名前が発達していない(「緑」の一語が指し示す色域が広い)からだと思ってたけど、さらにその原因としてこういうのはあるのかな twitter.com/rei_software/s…
2022-02-26 18:46:11(赤は570~630、青は490~470くらい) 残りのL、S錐体の反応の具合が「緑の色味」を作り出している。 長波長側では赤に反応するL錐体が少し反応し、 短波長側では青に反応するS錐体が少し反応する。 赤の色味の場合、緑に反応するM錐体は少し反応するが、S錐体は遠すぎて反応しない。 青も同じ。
2022-02-26 22:17:42当たり前だが、3つ錐体の反応の強弱を比較できるほうが、2つの強弱を比較するより区別がしやすい。 なので、人類は「緑」に対して分解能が高い。 様々な「緑」を区別できるはず。 これは twitter.com/hedalu244/stat… 「緑周辺を呼び分ける色の名前が発達していない」 というのと一致しない。
2022-02-26 22:21:44植物は緑。 人類が緑を分析できる能力を身に着けたのは3000マン年前、人類の祖先が森の中で暮らしていた時代。 緑の分別、特に果物の分別にに有利だったろうといわれている。 言語の獲得はその遥か後、狩猟採集の時代になる。
2022-02-26 22:30:30緑は当然、もともとは色の名ではなく、植物の事。 日本人は緑を区別していなかったのか? 他の言語はどうなのか? 文化による緑認識範囲の違いは? と考えるときりがなくて興味深い。
2022-02-26 22:32:26もうちょっと分光の範囲でちゃんと説明してみるか。 2種の違う光を混ぜたとき、どの色になるかというのは上で出した「CIE色空間」で求められる。 例えば図のように、520nm当たりの緑と600nm当たりの赤を混ぜると、その色は混ぜた割合に応じて、CIE色空間で2つの色をつなぐ直線のどこかにのる。 pic.twitter.com/K1wtnva4EY
2022-02-27 09:04:26緑:赤=9:1なら結んだ線を10等分して緑から1、赤から9の場所に。 緑:赤=1:9なら緑から9、赤に1の場所に。 これはCIE色空間が線形な混色系の色空間だから。 なのでLCDやCRTモニターとかでとても便利。
2022-02-27 09:09:10次。 「近い2色をどのくらい区別できるか」というのを示した「マクアダムの楕円」と呼ばれるものがある。 図はCIE色空間に「マクアダムの楕円」を書いたもの。 楕円より内側の色は、真ん中の点の位置の色と並べたときに、区別ができない。 青や赤より、緑のほうが特に縦に伸びてる。 pic.twitter.com/l23cP3TbJU
2022-02-27 09:09:42この二つを理解すると「緑に色を混ぜても緑」というのがよく理解できると思う。 混色すると、色はCIE色空間上で混ぜた割合に応じて比例して移動する。 もともと緑なら、マクアダムの楕円が大きいので多少移動しても緑だが、 もともと赤や青だと、少し移動しただけで別の色になってしまう。
2022-02-27 09:11:27「色の差」を具体的に数字で表す方法もある。 Lab色空間というのがそれ。 この色空間だと、色を混ぜたときのどの色になるのか簡単にはわからないが、 色を色空間上に並べたとき、比較的「均等に変化してる」ように見える。 ja.wikipedia.org/wiki/Lab%E8%89…
2022-02-27 09:18:24なので、このLab色空間での距離を測ると二つの色の差が(だいたい)わかる。 XYZ色空間で混色して、Lab色空間に変換して、その距離を測ることで、知覚的にどのくらい違う色になったのかがわかる。 計算してみたい。 が、ここに書くのはめんどくさいな…
2022-02-27 09:21:52同様に、赤に青、青に緑、緑に青…と全パターン試してみても、緑に混色するとLab色空間上ではあまり動かない=混ぜても色が変わらないのがわかる。 このLab色空間での距離はあまり精度がよくなくて、より詳細に色差を計算する方法もある。 この辺に。 ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2…
2022-02-27 09:33:38ここで提案されてるCIE94やCIEDE2000は「知覚的不均一さ」を導入してる。 これは分光分布ではなく、生理学的なメカニズムの効果で、これをいれるとさらに「混色で緑が変化しづらい」という結果になる。
2022-02-27 09:38:09まぁそういうわけで。 錐体細胞の感度だけを見ても、「混色で緑が変化しづらい」という結論が出る。 もちろん、言葉としての「緑の定義」の問題もあるだろう。 が、絵具に深く親しんでいたり、 少しずつ絵具を混ぜて色の変化を見てみたり、 そういう人は「緑の変化しづらさ」は体感していると思う。
2022-02-27 09:47:33「どこからどこまでを緑にふくめますか」という言葉の問題、文化の問題、「緑の範囲」の話ではなく。 色を混ぜたとき、目に見える「色の変化量」が小さい。 赤や青に比べて。
2022-02-27 09:50:58元の話にもどると、 この「混色による変化量の小ささ」に「永遠性」を見出したんだろうと思う。 ちなみに俺は小学校の頃、「緑は強い」と表現していた。 感受性の違いが恥ずかしい。
2022-02-27 09:52:02