3分間スピーチ

高校の現代文の授業であった、転校生の出来事
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ひよって呼んでいいか? @hiyo_p

1:高校一年の現代文の授業で、3分間スピーチというのがあった。テーマは自由で、みんなの前に立ち、とにかく話すというもの。生徒によって話しもスポーツのことから、部活動のこと、家庭のことなど様々で時間が短かったり長くなったりはご愛嬌だった。

2011-09-10 06:59:41
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2:国語教師の意図はおそらく人前で話すというのに慣れること、自分の話したいことをまとめる技術を身につけることだったと思う。何を話しても、途中言葉に詰まっても、教室の後ろで穏やかな顔で立っていた。

2011-09-10 07:02:40
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3:夏休みが明け、二学期の授業が始まり、クラスには転校生がやってきていた。公立高校での転校生はとても珍しい。彼はとてもおとなしく、あまりみんなとわいわい騒ぐタイプではなく、でも校風が穏やかでもあったので、クラスには馴染んでいるように思えた。

2011-09-10 07:05:38
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4:ある現代文の授業の日、転校生の彼にスピーチの順番が回ってきた。彼は教室の前に立ち、少し下を向いてから口を開いた。夏休みに父親の転勤が決まり、横浜から大阪に出てくることになった。横浜の高校に残りたいと思ったがそれは家庭の事情で許されなかったこと。

2011-09-10 07:09:59
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5:彼は横浜でも公立高校に通っていたので、大阪の公立高校の転入試験を受けることになった。しかし、転入試験に落ちたらもしかしたら元の高校に戻るしかないかもしれない。転入試験は1つしか受験できないから。

2011-09-10 07:12:37
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6:転入試験には合格し、家族と共に大阪にやってきた。でも、試験に落ちたらと思うと、横浜にいる友達にお別れを言えなかった。それがずっと心残りだ。彼はゆっくり、言葉を選びながら、話した。3分はとうに過ぎていたが教師も生徒も誰も途中割ってはいることなく聞いていた。

2011-09-10 07:15:58
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7:スピーチは30分近くになっていたが、教師はよく話したねと一言だけ言って、その後普通に授業を始めた。転校生は相変わらずおとなしかったが、誰となく声をかけ、秋の遠足ではみんなと一緒に映画村ではしゃいでいた。

2011-09-10 07:20:07
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8:冬になり、私の高校では学年末にクラスごとに薄い冊子(同人誌ではない)をだすことになっていて、みんなから一言ずつメッセージを集めていた。出来上がった冊子にあった転校生の彼の言葉は「このクラスにきてよかった」だった。スピーチの時間がなければこの言葉はなかったかもしれない。(終)

2011-09-10 07:25:45