- rouillewrite
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それは危険から逃れた安堵でも、生き残れた安心感でもない。 助けられた命を見捨てたことへの、一種の罪悪感から来る後悔のため息。
2022-04-21 21:05:37デアダームは消火活動を行うと言い残し、いつの間にか全員の前から姿を消していた。 あれでは遺体も回収するのは困難であろうが、いずれにせよ自分たちではどうにもできないことである。
2022-04-21 21:06:19炎の中に消えていった2人を見送って、泣きじゃくる者たちを宥める一方、メノンは腕の中で大人しいままのナタリアを見つめた。
2022-04-21 21:07:54ゴーグルを頭の上にしたまま、俯いて前髪で目を隠しているその子。 普段明るく元気な彼女からは想像出来ないほど弱々しい姿に、眉が下がる。
2022-04-21 21:08:53そう小さく呟く声がして、メノンはナタリアを優しく降ろす。 探るように地に足をつけ、少しよろめいたところを彼の大きな手に支えられた。
2022-04-21 21:11:11彼女は前髪がかかる程度、ほんの少しだけ顔を上げ、見えないはずの目を前髪の間からうろうろさせる。メノンの顔色を伺っているのだろう。 そして、努めて明るい声で続けた。
2022-04-21 21:13:50「………宇宙だって、言ったよな。 そっか、宇宙か。 ずーっと遠くにあると思ってたのに、こんなに近かったんだな、馬鹿みてえ……」
2022-04-21 21:14:23その小さな声は、段々と、震えていった。 ぽたぽたと、透明な雫が赤い絨毯にシミを作る音が静かな廊下に響いた気がした。そのまま、ナタリアは両腕で目を隠すように覆うと…泣き出した。
2022-04-21 21:17:34「ちゃんと…っ、みんなの顔くらい………見とけばよかったなあ……っ!」 「……ナタリア」 pic.twitter.com/jG8ZdjYfbS
2022-04-21 21:18:00わんわんと年相応に泣く姿に、胸が痛くなる。 この年で視力を失ったのだ。 光のない世界でこの先長い人生を生きるのがどれだけ苦痛か、想像に難くない。
2022-04-21 21:19:50そのうち、少女たちが彼女の元に寄ってきた。 共に泣いて優しく抱きしめるマリン。 横から肩に手を置いて慰めるオリヴィア。 ただその腕に触れてそばに居るアシェル。 背中に寄り添って下を向くエリーゼ。
2022-04-21 21:21:21…しばらく泣いたあと、ナタリアはふっと顔を上げる。 ゆっくりと、頭の上に乗せていたゴーグルを着けて、周りにいる少女たちに「もうだいじょうぶだ」と声をかけた。
2022-04-21 21:23:26「…本当にもう大丈夫かい?手でも握ってようか?」 「いんや、もう大丈夫。ちょっと落ち着いたし、疲れたから部屋帰りたいな」
2022-04-21 21:24:34ナタリアはオリヴィアの申し出を笑顔でやんわりと断ると、未だ心配そうな目で見てくる者たちに「先に行ってて」と告げる。
2022-04-21 21:25:05