ギガベース日誌 ACT09「REMEMBERED DEATH」01

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

無理もない。 自分はギガベースと通じすぎた。横須賀における戦闘から生還してしまった。 それはつまり、艦娘とファンタズマビーイングの起源という、企業支配体制下における禁忌の情報に触れたということである。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:27:54
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「これでいい」 降り注ぐ砲火の下に在って尚、男の判断は揺らがない。 「覚悟しろ、バリー!」 元パートナー、レイ・シャークは、戦闘を決定づけるべく、バリーが潜む瓦礫の中へと機体を前進させる。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:31:25
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バリーの機体は艦娘達の砲撃に縫い留められている。突発的な離脱と艦娘の攻撃がままならない位置にいるからこそ、任務を黒字で終えるにはここで決めるしか無い。 シャークでなくとも、多くの傭兵がそうするだろう。それはバリーにとっても読みやすい思考だった。 「今だ、名取」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:33:49
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突如、倉庫前に積もった雪が、爆音と共に舞い上がる。 その下で駆動を始めたMTでなく、より小さい、洗練された一つの兵器が雪原へ躍り出た。 「何っ?!」 随伴する艦娘からの警告。新たな敵は入口付近まで交代していた艦隊とリーパーバードの中間を目指し駆ける。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:44:09
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

艦娘だ。 MTでもACでもなく、そのサイズ故に最初のスキャンを免れた伏兵が、リーパーバードのコアに照準を重ねた。 直後、艦隊の砲撃の対象は、雇い主の首を取らんとするその艦娘へ向け直される。しかし、球状の粒子膜が砲撃を弾いた。 「プライマルアーマー……!!」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:48:21
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破壊の為に洗練された機構が産む、金属と火薬の交合と絶叫。同時にリーパーバードのメインブースターが火花を散らしながら砕け散り、その機動力を激減させた。 「艦娘が、俺に当てたのかっ?!」 「そういうわけだ。失礼するぜ、シャーク!」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:53:43
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リーパーバードから的確に移動能力を奪った軽巡名取は、クイックブーストでバリーの機体に接近。両者はリーパーバードを無視したまま、工場の入口から最も遠いタンクの脇を通過し、逃走を試みる。 「ナイチンゲール!発破しろ!」 「はぁいーっ!」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:58:36
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

シャークがひと目見て見抜いた通り、タンクにはバリーの仕掛け───正確には罠ではなく、逃走のための策が仕込まれていた。 警備室として使われていた離れの小屋に潜んでいたナイチンゲールが、合図を受けるや否や起爆。タンクに詰め込まれていたチャフが、雪と共に散り落つ。 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:06:48
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名取は小屋から飛び出したナイチンゲールを、彼女がしがみつくソリの紐を引くことで回収。二人の傭兵と一隻の艦娘は、極寒の白の中へと消えていった。 「追いますか、ミグラント」 「メインブースターを片方やられた。今の俺の速度だと、お前らと足並みが合わない」 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:11:54
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「では……」 「ミッションは失敗だ。クソ、俺も焼きが回ったもんだ」 リーパーバードが名取に背後からの攻撃を許した理由は、第2世代ノーマル同士の破滅的撃ち合いから艦娘を離し、黒字を守り切ることだった。 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:14:33
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

だがそもそも、ミグラントの仕事の大半は、命の奪い合いなのだ。 何よりも優先されるべき死と生の駆け引き。そこにけちな打算的心情を持ち込んでしまったが故に、命は拾ったものの得られるものは無かった。 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:16:33
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

艦娘の被弾を承知で常に自分の機体の周囲に展開させていれば、あるいは。 意味の無い後悔を胸の奥底に押し込むが、シャークの心は次に浮かんできた疑問に支配された。 「あいつ……どうして艦娘から先に潰さなかった?」 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:20:03
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

シャークはバリー・ブルという男の価値観に知悉しているわけではない・ しかし、世に轟く悪名高き"艦娘殺し"の蛮行を知っていれば、防戦一方を良しとしたバリーの今日の立ち回りには違和感を抱かずにはいられなかった。 #ギガベース日誌

2022-12-18 02:22:31
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

疑問は新たな疑問を呼ぶ。 バリー・ブルが企業にとって排除すべき存在となった事に違和感は無い。しかし、隠れ潜むのならこの極寒の中以外にも、より適した場所はある。 地中海の深海棲艦の大規模攻勢にかこつけてか、各地で反体制勢力の活動が活発化しているのだ。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:07:03
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

彼らの多くは力に困窮し、ミグラントであれば大した障害も無くグループに身を置く事ができるだろう。 そういった森の中の木になるような努力はせずに、バリーはあえて単独で、この辺境の地に隠れ潜む事を選んだ。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:09:16
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「……考えてもしょうがねえか」 シャークは操縦桿を握り直し、撤退の準備に入った。 あれこれを考えなければいけない面倒な人生において、重要な判断を己の獣性に委ねられる。 そういった意味で、シャークは自分とバリーが同種の人間だと思っていた。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:11:46
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

けれど、もう違うのだろう。 5分に満たない命のやり取りを経て、傭兵はかつての相棒がルビコン川を渡ってしまったのだと痛感した。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:12:56

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「名取!!!絶対そいつから手離すなよ!!」 「うーん、もしかしたら力負けしてしまうかもしれません」 「主人をおちょくりやがって……!!」 刺客を撒いたバリー一行は、その日の夜、森林の中での野営中に、別種の脅威に直面した。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:17:02
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

名取は艤装を解除した状態で、襲撃者の丸太のような双腕をどうにか押さえつけている。 艦娘の重機にも等しい膂力を以て尚、名取と組み合う筋肉の塊を御する事は叶わない。 「ヴ、オ、オオ」 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:24:53
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

黒々とした表面から覗き、一際目立つ牙の群れが、名取の頭蓋を噛み砕こうと急降下する。 名取は、両腕の拘束はそのままに首の可動域を限界まで使って頸部断裂を回避。そのまま自分の頭部を鈍器代わりに、敵の下顎へと叩きつけた。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:29:29
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「ヴア、オォォオッ!!!」 人間に対して同じ事をすれば歯が全て砕けていたであろう名取のカウンターは、効いていない。 バリーは二者の闘争を注視したい欲を堪え、雪中で気絶するナイチンゲールの身体を踏むのも気にせず、数十メートル先に停めておいた自らの愛機へと駆け出した。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:33:14
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「あー、負けてしまいます、あー、ヒグマは時速60km以上で移動できて、この個体の大きさを鑑みると、今私が拘束を解いたら間違いなくマスターに追いついてしまいます」 晩餐を襲撃してきた頂点捕食者ヒグマを前に、名取は軽口を叩きつつ実際追い詰められつつあった。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:43:03
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

その獣の体躯は、一般的な同種の個体と比較して二回りほど巨大であり、体毛の脱落と皮膚病を思わせる体組織の形成異常が見て取れる。 ヒグマが言葉を語らぬ故にバリー達が知る経緯は無いが、この個体は拡大したコジマ汚染が齎した突然変異の産物である。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:49:03
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

傷つけられた二重螺旋の絡み合いは、彼に他者を圧倒する巨躯と、どれほどの暴虐でも取り払う事が出来ない皮膚組織の異常を与えた。 体表が剥がれ落ちる苦痛を攻撃性へと替え、ヒグマはこの森に住む同族を鏖殺し、ただ一匹の支配者となった。 #ギガベース日誌

2022-12-25 02:53:40
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