ギガベース日誌 ACT09「REMEMBERED DEATH」01

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「恩に着る」 揚陸能力を有する巨大艤装を備えた神州丸と、確率を歪めているとしか形容しようのない豪運を持ち協働経験もある雪風。護衛艦の選定に、バリーはDfJの気遣いを痛感した。 「相談は終わりだ。そっちの準備が済んだら言ってくれ。俺は今から荷造りを」 「バリー・ブル」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:28:50
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すべき事を終え、足早に工廠を去ろうとしたバリーを呼びかけが縫い止めた。 「何だ」 「礼を言ってなかった。あんたとナイチンゲールがいなきゃ、艦隊は今以上の被害を負っていた。あるいは……俺と不知火の、帰る場所は無くなっていた」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:30:27
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「ありがとう」 その言葉にも、発した態度にも、違和を感じたわけではない。 横須賀の戦闘を経て、DfJは己の出自に直面し、不可逆な変化を、確固たる自分の成立を遂げたと聞き、バリーは心底彼を妬ましく思った。 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:34:04
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知りたくもない事実を知らされた。 依って立つ己の核を傷つけられた。 それはあの戦場にいた全てが経験した事であり、バリー・ブルもまた、例外ではなかった。 それが癒えていない事、あるいはもう癒えぬ事を、DfJは見抜いたのだろう。 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:35:41
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知らないほうが幸せだったとは思わない。 バリーの心中はむしろ「よくも騙してくれたものだ」という、憤怒と復讐心が全てだった。 ここ数年の彼の欲望の対象であった、艦娘の正体について、ヴェールを被せていた者達への怒り。 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:38:07
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彼はもう、決めていた。 次の人生の目標は、その怒りの発散が一つ。 そして二つ目は、己の道化ぶりを知る機会をくれた、無二の悪友への返礼だろう。 「……」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:39:39
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バリーは振り向きも、返事もせず、工廠を去った。 「……最後のは、余計だったかな。で、長門とグラーフは何の用だ」 「直接様子を見に来ただけだ。元気そうで安心したよ」 「お前らが暇そうにしてるって事は、サイセターはそこまで深刻な状態じゃないと思っていいか」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:47:46
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「深刻すぎて逆に何もできない状態にある、が近いな。作戦ファイルを纏めておいた。体調が戻り次第、御一読願おう」 「……俺と不知火が役に立たなかったせいだろう。何隻沈んだかだけ先に教えろ」 「ガンビア・ベイ、沖波、子日の3隻。いずれも敵特殊兵器Livの攻撃により蒸発した」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:53:33
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「……アンジーが、それほど」 被害報告に声を発したのは、DfJではなく、その隣でうなだれ続けていた不知火だった。 「不知火?!」 「大宮技術長!不知火さん覚醒しちゃいました!提督起こす時に不知火さんのほうのボタンも一緒に押しちゃいました!」 #ギガベース日誌

2022-11-27 00:59:11
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「普段の我々ならあり得ないヒヤリハットの連続……やはりここは大宮、テルニに続く第3のブレインが必要なのでは?そいつががんばってる間に私はワインをぐぼへっ」 「UIを書いたのは貴方でしょう。さて、おはようございます不知火さん。帰艦以来の覚醒ですが、ご気分は?」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:02:51
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「……水をください」 「水ですか?ちょっとお待ち」 「ああ、これでいいです。いただきます」 「あ、ちょっと」 不知火は自分の直ぐ側にあったボウルを掴み、小さな唇に当て傾けた。 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:04:06
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レイの血と胃液と唾液に塗れた大宮がそれを洗い流すのに使い、そうと知らぬ寝起きのDfJが口をゆすぐのに使った後放置された液体が、音を立てて嚥下される。 「あーあーあー……」 「……はぁ。生き返りました」 涼しい顔で不衛生流体を飲み干した不知火は、顔を真横の男へ向けた。 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:07:36
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「……おはようございます、司令官、長門さん、グラーフさん」 「無事に戻ってきてくれて安心したぞ。お前が死んだら繰り上げで私が秘書艦にされてたかもしれないからな。指揮官代理の時点で面倒くさいというのに」 「誰がお前なんか秘書艦にするか」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:11:10
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「Admiral。我々は貴方の駒であり、共通の目的の為にあらゆる価値観と規範を無視できる同胞だ。故に、極論を言ってしまえば、戦闘において艦隊が負った被害について、誰がどのように影響していようと、作戦の総指揮を請け負っていた私以外に責は無い」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:16:53
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「……グラーフ?」 長門とDfJのやり取りを断ち切ったグラーフの言葉は、次第に震えを帯びていった。 「誰がどのように死のうと、全員がそれに同意した上で戦闘に臨んでいる。この認識に誤りは無い。それでも……」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:19:12
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「私は、貴方達に死んでほしくなかった」 感極まったままに、グラーフは軍帽を外し、 「もう二度と、あんな孤独はごめんだ。どれだけ私が絶対的な指揮権限を持とうと、全ての始まりである貴方達がいなければ、この暴走兵器の集団は瞬く間に瓦解する。ずっと、そう思っている」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:25:06
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「だから、言わせてくれ。戻ってきてくれて、ありがとう。DfJと、不知火のままに帰還してくれて、ありがとう。私は、それで十分なんだ」 「うわっグラーフが泣いてる!!」 「他の艦には黙っていろよ指揮官代理。二人の顔を直接見たら、抑えられなくなっただけだ」 #ギガベース日誌

2022-11-27 01:29:58
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鋼鉄よりも冷たく堅いと多くに見做されていたその目から零れ落ちた弱さに、DfJは少し面食らいながらも、観念したとばかりにため息をついた。 「柄でもないとわかっているが言っておくか。グラーフ、心配かけてすまなかった」 「……全くだ、全くだよ、Admiral」 #ギガベース日誌

2022-12-18 00:58:48
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「心配かけたついでに一つ頼みたい、大宮も聞け。さっきは本人が目の前にいたから言わなかったが、バリーの名取、修復で済ませるな。うちの艦娘と同等になるまで近代化改修をしてやれ」 「えーと……理由を伺っても?」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:01:00
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「改修そのものの理由と、それを持ち主に隠す理由も、だな」 「田舎に隠れ潜むとか何とか言ってたが、おっさんのあの目は何かしらしでかす奴の目だ。孤立無援で戦うなら、ただの艦娘じゃ不十分だ」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:04:02
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「でもってどういうわけか、おっさんは目的と理由を俺に言いたくないらしい。向こうが口を濁すなら、気遣いを大っぴらにしてやる事もない」 「理屈はわかった。だが、提督よ」 長門の声に、DfJは凝視で返す。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:06:29
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「あんたとおっさん、もっとドライな関係だと思ってた。何かあったか?」 「俺とバリーは打算的な関係のままだ。その上で……ただの勘だが、あの男がこれからやろうとしている戦いは、回り回って俺達の得になるような気がする」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:13:22
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このDfJの命令により、サイセター工廠は総力を投じてバリーの機体と名取を改修。 6時間後、バリー・ブルは別れの挨拶もそこそこに、昏睡中のナイチンゲールと名取を連れ、サイセターを去った。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:16:16
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「傭兵さん、短い間でしたが、雪風は何かとご一緒する機会が多かったので少しさみしいです!」 「できればお前の左手でもお守り代わりに持っていきたいんだがな」 「傭兵殿。ちゃっかりサイセターの資産に手を付けるようなら、格納庫を3分ほど海水に沈めますよ?」 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:18:06
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雪風の甲高い声と、掴みどころのない神州丸の態度に挟まれながら、バリー達は無事にサハリン島に到達した。 そして現在、隠れ家代わりにしていた廃工場にて、刺客として差し向けられたかつてのパートナーと対峙している。 #ギガベース日誌

2022-12-18 01:25:09
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