【ある冒険者の装備】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の装備46】「お主のハルバード、名器とお見受けする。それほどの見事な逸品は国王か領主より授けられしものだろうか。さぞや誉れ高き騎士の如き偉業を為したのであろうな」 「いや野晒しの死体から頂いたんだけど、木の実引っ掛けたり物干しに使えたりで便利だよな」 「誇りはないのか！」

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【ある冒険者の装備47】『選ばれし者の剣』ある国の岩に突き刺さっていた、抜いた者に所有権が与えられる抜身の剣。これまでに数回抜かれたが、ただ重いだけの剣だとわかると多くの者は静かに元へ戻した。剣は長らく雨風に晒されていたが刀身は未だに輝きを放ち続け、劣化する気配はない。

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【ある冒険者の装備48】「おやおや、お前らしくない完全武装だ」 「ああ」 軽口を返す余裕はなく。 「失敗しても笑ってやるから安心しな」 「他人事だと思って」 心に一切のゆとりもなく。 「よし、死ぬ気で行け！」 「死ぬかもしれん」 剣を花束に、鎧を礼服に。プロポーズの行方は誰にもわからない。

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【ある冒険者の装備49】『物干し竿』錆びず曲がらず折れない、特殊な金属で作られ神の加護が与えられた槍。"物干し竿"とは元々その長さからくる呼称だったが、今では文字通りの実態に即した呼び名となっている。これが本来の用途として振るわれないことを願い、名前とともに代々受け継がれている。

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【ある冒険者の装備50】「キミの作った保冷箱、旅人さんたちに好評みたいだね？」 「そうなんだよ。話が広まったからか、最近は大型の製作依頼も来ててさ」 「きっと食堂や酒場で使われるのかもね。こりゃ町も賑わいそうだ」 「うむ、やはり死霊術が定着するまでの保管庫としてピッタリだな」

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【ある冒険者の装備51】「前から気になってたんだが、いつも酒瓶持ち歩いてるな。そんなに酒が好きなのか？」 「酒は冒険者の必需品だろ。消毒に気付けや燃料、そして何より」 「美味い、だろ？」 「それもあるが、酒瓶がまた丈夫で殴りやすいんだ。喧嘩にゃぴったりでな」 「そもそも騒ぎを起こすな」

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【ある冒険者の装備52】『邪心祓いの宝玉』持ち主及び持ち主に近付く者の邪な心を祓い清める、希少な石で造られた宝玉。過去に窃盗を試みた賊も一人残らず宝玉の力により無力化されたが、これを目当てとする輩は後を絶たないため、宝玉の持ち主が長く滞在する町は治安が悪化すると言われている。

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【ある冒険者の装備53】「雪山装備か。うちを選ぶとはお目が高い」 「おっとボウズ、こんな高い劣悪装備買うならうちの店にしな！」 「何!? こっちはもっと安くできらぁ！」 「こっちはもっと上質だぞ！」 「いいの見つかった？ って大分立派なの買ったね」 「何もしてないのに値切れた」 「は？」

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【ある冒険者の装備54】『邪気集めの魔石』近くに存在する邪悪な存在を引き寄せる力を持った魔石。その性質から地中深くに封じられていたが、ある冒険者が「悪人退治が楽になるから」と持ち出してしまった。持ち主の高い実力も相まって、その冒険者が長く滞在した町は治安が好転すると言われている。

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【ある冒険者の装備55】適切に扱うことができるなら、毒は大きな効果を発揮する。強靭な斧も長大な槍も不要、毒を仕込んだ小剣で軽く傷を負わせるだけで、行動制限はおろか死をもたらすことすら容易いのだ。 「適切に扱えなかった例って？」 「毒を塗ったナイフの刃を自分で舐めてしまったそうです」

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【ある冒険者の装備56】『金運お守り』名前のとおり金運を招くお守り。それは貨幣のみならず、ありとあらゆる金属――金貨や銀貨に装飾具を始めとした貴金属や簡素な武具に用いられる卑金属にまで作用する。多くの鉄屑から金を掴み取る努力ができるなら、これを身に着ける価値はあるかもしれない。

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【ある冒険者の装備57】「トム、鍋を盾にするのはやめてくれ。不潔じゃないか」 「ところがサム、このドワーフ謹製の合金鍋は塗料が汚れを弾き、魔術が消臭効果を発揮するんだ！」 「何!? でも高いんだろ？」 「安心しろ！ 今なら特別価格だ！」 「大変だ！ 俺は売り切れる前に今すぐ買いに行くぞ！」

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【ある冒険者の装備58】『錆びた剣』 「そんなボロボロで刃も欠けてる剣、処分しちゃえばいいのに」 「このほうが斬られると痛いらしいので」

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【ある冒険者の装備59】「吟遊詩人？ 楽器が見当たらないようだけど」 「この棒があれば十分なのさ」 「ああ、単純そうに見えて実は色々な音が出る打楽器って――」 「鳴るのは打撃音、奏でるのは悲鳴、適切に叩けば"弾き語り"もできるよ。裏稼業の奴らは特にね」 （深く関わらないほうが良さそうだ）

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【ある冒険者の装備60】『可動調理器１号』野外でも不足ない調理を可能とする、炊事場と同等の機能を備えた移動式大型装置。馬車による牽引型の１号と装置をゴーレム化した自立型の２号が存在するが、いずれも気軽に手が出せる額ではないため、金持ちの娯楽用に使われるケースがほとんどである。

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【ある冒険者の装備61】あなたが子供の頃、どこかで長い木の枝を拾ったとしよう。そのとき、あなたは聖剣を携えた勇猛果敢な剣士になったかもしれないし、神秘の力を秘めた杖を巧みに操る魔法使いになったかもしれない。あなたが心に思い描いたその瞬間から、あなたは既に冒険者となっていたのだ。

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【ある冒険者の装備62】武具も道具も性能が良ければいいってもんじゃない。それを俺たちは持ち歩くんだからな。重すぎず、嵩張らず、必要なときにすぐ使うことができるかどうか、という視点も大事だ。あ？ 8個までなら何でも持てるんじゃないかって？ どこのどいつだ、そんなこと言った奴は！

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【ある冒険者の装備63】『スローイングナイフ』 「もしかして投げたやつ全部回収してるの？」 「使い捨て前提じゃないやつなら、そりゃできるだけ拾うさ」 「なんか貧乏臭いね」 「ほっとけ」 「ならダートにすれば？ あれならナイフより安いでしょ」 「……いや、多分拾う」 「貧乏性」 「うるせえ」

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【ある冒険者の装備64】「キミがくれた術師の杖、何もしてないのに壊――」 「手入れもせず放置して壊れたのは"何もしてないから壊れた"と言うのですよ」 「オチの先回り反則！」 「他に何も言うことがないなら、あなたも"何もしてないのに壊れる"かどうか試しますか？」 「壊してごめんなさい」

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【ある冒険者の装備65】『鞭』 「剣とか槍とか、他と比べてどう？ 強い？」 「殺傷能力だけで武器を語るものではありませんよ。町中や酒場で喧嘩の"仲裁"には大変有効でして」 「あー……大の男があんな情けない声で泣くなんて驚きだったよ」 「実に平和的な武器と言えるでしょう」 「平和かなあ」

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【ある冒険者の装備66】『蛇腹剣』元々は大道芸の小道具だったが、演舞を見た一部の冒険者たちが感化され使い始めた。耐久性に劣り、使用する場所を選び、複雑な機構は手入れを要するなどの問題から流行は瞬く間に途絶えた。少数の冒険者が虚仮威し用に、刃のついた鞭として扱うことがある。

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【ある冒険者の装備67】東国で見た中でも最高だったのは、やはり目にも鮮やかな剣技だな。船に乗ってたら、それはもうデカい魚に襲われてな。だが船乗りたちは何をどうしたのか魚の動きを抑えると、一人の男が片刃の剣を取り出して瞬く間に解体しちまった。ありゃきっと名のある剣士様に違いないさ。

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【ある冒険者の装備68】『オークソード』オーク樹を加工して作られた木剣で、加工のしやすさから練習用の道具として広く使われている。当然ながら金属製の剣に比べ殺傷力に劣り、暴徒鎮圧にも用いられるが、使い手の技量や当りどころによっては致命傷を負わせることもあるため扱いには注意されたし。