- rouillewrite
- 1990
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デアダームに言われて礼拝堂から急いで本館に戻り、図書室へと駆け込むとそこは惨憺たる状況だった。 遺体回収前だったのか、レイラの遺体の前にデアダームがしゃがんでいる。そっと彼女の瞼を優しく閉じさせて、寂しそうな視線を向けていた。
2022-06-02 21:30:29イーライが瞠目したまま、静かに呟く。 隣にいるエリーゼは、呆然としたまま無言でレイラの方へと歩き出した。「エリーゼ、」と声を掛けられても、止まることはない。
2022-06-02 21:32:17血溜まりの中のレイラ。 何度も何度も腹部を刺されたような傷が痛々しく、時間が経って広がっている血が黒く酸化し始めていた。 エリーゼは彼女のそばにしゃがみこみ、頬を撫でる。 もう涙も何もかもが枯れて、ただ目の前の少女の死を受け入れるのに必死、といった状態だ。
2022-06-02 21:33:26ぼんやりとした雰囲気で、どこかに消え入りそうな少女。 なにか声をかけないと、とイーライが足を1歩踏み出した時…彼女の方が先に口を開いた。
2022-06-02 21:35:45「あなたも、私も…。 こんなふうに………… ギルやレイラみたいに… ………みんなみたいに……」
2022-06-02 21:37:58ポツポツと呟くそれに、感情はない。 ゆっくりと振り向いたエリーゼの片方だけの碧眼は、今や光などなかった。輝く青い海のようだったその瞳は、暗く沈む深海のように、生気がない。
2022-06-02 21:39:19イーライはもう一度少女の名前を呼んで、そっと近づいた。 自分を見上げて何も言わない彼女に、彼は続ける。
2022-06-02 21:42:14突然なんだ、と言うように、エリーゼは首を小さくかしげた。 エリーゼの前まで来た彼は、ゆっくりとした仕草で彼女と目線を合わせる。 そして、優しく彼女の肩に手を添えると、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
2022-06-02 21:43:42「マリンちゃんのように優しい子だったり、ミス・ユースティアのように引っ張ってくれる子だったり、アシェルの様に明るい子だったりするかもしれない。 そして、何よりいい男と出会う。 きっと年上だ」
2022-06-02 21:45:10「俺なんかよりずっといい男で、きっと君の卑屈な性格すら包み込んでくれる奴だろう。 いいか、これは近い未来の話だぜ?」
2022-06-02 21:46:50