『宝石の国』カンゴーム変節“の背景”を読み直す／フォスは本当に愛されに執着しているか？

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

宝石の国11巻相当まで読んだ。なるほど、「フォスは地獄を生きている」と表現されているようだが、フォスこそ真の菩薩であり、同時に強く無明を体現する者でもあるな。金剛先生はむしろマニ車のような位置付けだ。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

我執を持つマニ車に「回れよ！！」と言い続ける鬼神ですよ、11巻以降のフォス。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

ただそこに月人側の爛れた欲望も関わっているし、金剛というマニ車を作った人類の都合の良さそれ自体がまだ仏教的に非難されうるところですね。この物語は「生身の人間自身の祈り、他力本願の力」をどういうところに落としていくのだろうか。『阿・吽』とは別の仏教物語になってる。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

カンゴームの変節周り（ヒメ化）がちょっと理屈がよくわからなかったので精読してる人に詳しい解決をしてもらいたい。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

地獄というなら月の国も金剛学校も無間地獄だよ。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

また、フォスの状況を受動的な地獄というのはしっくりこない、千変万化する観世音菩薩（化身の絶えざる更新者）としての試練とか言った方が近いのでは。あるいは英雄的側面を捨ててもっと不幸な方向で見るなら、外装（スリーヴ）の更新が迷妄の象徴としての六道輪廻みたいになってる、とか。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

宝石の国世界観では宝石人（？）に「魂」相当物は希薄みたいだけど、フォスが身体に混ぜ物を増やすたび魂を汚濁させてるのか、それとも魂の核の部分は不変なのか、ちょっとよくわからないな。直近の話では「他者のために祈りを駆動しようとする人間らしさ」により近づいてるが、これは清浄？　汚穢？

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

どうも『宝石の国』は、「清らかな人間が人のために祈るのだ」とは言っておらず、むしろ「救い難く迷妄な、しかし他者の為に祈ることを諦めないのが人間だ」と言いたげな感じがしており、「にんげん」と「祈り」の関係にねじれの構造を看取っていそうな気がしている。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

月人は天人五衰の天人みたいなものだが、宝石人も壊れない限り不死相当物なので天人みたいなものだ。六道のうち限りなく清浄寄りの2種族が（第三の肉もつ海棲生物はいるけど）、それでも解脱させてもらうための大乗のvehicleに乗せてもらってない状況をなんとかする走狗として今フォスが唆されている。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

カンゴーム、フォスの「あまりアホでない時期」に長らく相棒を務めてくれたために、ヒメ化して急に違和感が（読者である自分に）感じられただけで、個人の動きとしては普通に縛られておらず幸せそうであるとは思う。ただあの解呪された過程がよくわからない。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

カンゴームの身体とゴーストの身体の関係がちゃんとわかってないのかも。(1)ゴーストは損なわれたが眼だけ残っていて、眼さえ失ったら完全にゴーストの意志から逃れた（これはわかる） (2) ゴーストの眼はカンゴームにアンターク的な振る舞いを要求し続けた（これは作中では確かにそうだがなぜななのか

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

単にゴースト/カンゴームがアンタークに似ていた、以上の印象をゴースト/カンゴームはフォスに与え続けていたみたいだけど、それが単に「たまたま似ていた」から以上のものについては、「（主にゴースト成分が）フォスにとってのアンタークであろうとする」モチベがよくわからなかった。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

「たまたま似ていて、未亡人ぽく振る舞ってるからまあつきあってやるか」→結果として相棒として仲良し　までならわかるんだけど、急に「そんなにゴーストの指示がつらかったのか、カンゴーム」と言われてスポポーンと抜けるような強制力のある付き合いだったとはあまり思ってなかったのよね。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

カンゴームの変節に厳しい人の気持ちはわからんでもなくて、あそこから急に『宝石の国』では慎重に排除されていたヘテロセクシャルな性愛を具現する存在が（にんげんとして不完全な者同士であれ）出てきて、それがそれまでの『宝石の国』のノンバイナリ感に破れ目をつくってるんだよな。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

宝石の国の地上側の初期セッティングにはノンバイナリ的、擬似同性愛的なものがあり（なぜなら肉持つ種族以外ほぼ無性であるから）、それがある種の読者にとっても作中でも「戦いがあるヒリヒリとした楽園」要素になってた。月人の暮らしと新カンゴームはそこからの離脱を大いに含む。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

作品は「元々完全な人間があり、月人の実態がああである以上、にんげん文化の残滓としての異性愛規範はこの世界にも実はあった」と示唆しており、その象徴的存在として王子と新カンゴームは配せられている。地上側の秩序に部分的な居心地の良さを感じてきた読者にとってはあまり見たくない展開である。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

その上で作品は地上にも、月にも、海中の「肉」にも、どれにも肩入れしておらず、ましてや完全な「にんげん」文化にも肩入れしていない。なので、空疎な文化的模倣としての結婚が繰り広げられることにも特に肯定的な評価はついてこない。地上の金剛たちの秩序の描かれ方と同等に冷徹で突き放されている

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

だから新カンゴームがああであっても特に読者がそれを肯定も否定もする必要はないんだけど、個々の読者が月側、地上側のあり方に外側から肩入れして読むとすると、新カンゴームの評価はだいぶ浮沈するだろうなと思う（ネガポジどっちでも咎はないとも思ってるが）。

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

自分などは秘密開示後の金剛を中心とする共同体の秩序に若干のロリータ感を感じて居心地が悪い（初期はそういう秩序として様式的に見ていたので気にならなかったが、ここに至りしっくりこなくなった）。ただこれは自分がロリータを得意でないだけで、自分、つまり作品の外からきた要素だと自認している

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

こういうことを3000字くらいでまとめたら多少はなんかの貢献があるのかもしれないが今そういう元気ないですね

路木 @rrrokio

カンゴームの厭らしさ、どこまでが計算づくなのかよくわかんないとこがあるんだよな〜（キャラ萌え読みをどこまで想定してたかわかんないな〜の意）

tricken（まだ術後だるい週末研究員） @tricken

後自分はカンゴームの変化自体より「目の奥に潜んでいたゴースト」が「なぜフォスにとってのアンタークらしく振る舞おうと決断し続けてきたのか」が、一読しただけではよくわからなかった（ので目からゴーストを取り除いてやっとアンターク的ふるまいからの解放を喜んだ経緯がわからなかった。）

路木 @rrrokio

私はあれ男に騙されたというか、ほんとうにゴーストが命令してないことまで、ゴーストのこととして演出をエクメアに加えられた、みたいに読んだんだけど（自由というものを演出の上で与えられている）、この辺は人による読解の気がするな

路木 @rrrokio

アンタークが命令してたことって「フォスを守れ」くらいだったはずで、フリフリを嫌がってたのとかまで本人の意志がゼロとはとても思えんというか、過度なわざとらしさを感じるんですよね……

路木 @rrrokio

初期宝石の国が無性でハッピーかというと、実は全然そう思えたことがなく、著者個人サイトにあったプロトタイプ版よりもかなり少女性（ロリータ性）が過剰なんですよね　なのでだんだん脱落していった……