石工の魔女と飛ぶ鉄を駆る空の賊
- motikinako_kuzu
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嵐の乙女が呻くと、膨大な量の白濁が魔女に降り注いだ。風が一滴も余さずに白濁を魔女に擦り付け、滴らせることさえ許さない。 「ん……♡」 魔女は目を閉じ、恍惚として白濁を身に受け、身体をその上から撫で付けて、擦り込みさえした。
2022-08-09 15:32:12嵐の乙女は言葉を発する余裕もなく、また魔女の胴体ほどの大きさもある怒張を魔女の股の間にあてがう。 「あっ♡」 魔女が期待に声を漏らしたと同時に、魔女の下腹部を突き破るような勢いでそれは突き込まれた。 「いぎっ……ーーー♡♡♡♡」 幾日も、それは続いていた。
2022-08-09 15:34:01そうした感情は嵐の乙女の前身となった女には存在しなかったものであった。 つまりそれは嵐の乙女が元の女とはやはり、別の存在であることを示していた。
2022-08-09 15:34:37「アンタさぁ! 速いんだって? 飛ぶのがさ! アタシと競争しようじゃん!!!」 雷の乙女は嵐の乙女の行く先に度々顔を出した。 力ある者、あるいはその似姿同士として、敬愛とはまた別に競争心のような何かを持っていたようだったが、
2022-08-09 15:36:40「あぁ……あたしは、別にいいよ、ごめんな」 嵐の乙女は物憂げに答えて、一人空を飛ぶのだった。 それを見送るたびに雷の乙女は悔しいやら、切ないやらで、いつものように雷鳴として天上にかけ上がることもせず、ただ見送るのだった。
2022-08-09 15:37:38ある日に、嵐の乙女はまた、一人で天を漂っていた。ぼう、と空のかなたを眺めていたので、隣に黒玉の乙女が飛んでいるのに気づくのが少し遅れた。
2022-08-09 15:38:24「元のエイルの記憶はあっても、性格は似てても、あたしは別人だ、元あった感情は燻ってても、全然違う心が今のあたしの胸の中にはある。だから……」 言葉にすれば陳腐なような気がした。 「つまり、人違いだよ」 嵐の乙女は口を閉ざした。
2022-08-09 15:40:23「しってる」 黒玉の乙女は特に表情を変えず、いや、そもそも表情自体、魔女に並ぶ程に無いのだが、ともかく表情を変えずに言った。
2022-08-09 15:40:57「でも、エイルは名前をつけてくれたから、だからわたしも真似してみたの」 名前。 つけただろうか。黒玉の乙女は、確かに魔女から名前を呼ばれたことはない。 なぜなら魔女と伴侶の関係は、互いに一対一で完結しているからだ。他者がないから名前も要らない。
2022-08-09 15:43:52黒玉の乙女を他の乙女が呼ばわる時も、黒玉の乙女であることさえ分かれば名前は要らなかった。黒玉の子、と呼べばよかった。皆家族だからだ。他人がいない閉じた生活では名前は要らない。
2022-08-09 15:44:43「……オニキス」 「うん」 オニキスは頷いた。かつて他人だったエイルが、名前がなくては不便だからと仮に呼び始めた名前だった。 「……そんなもので見初められたのかよ、あたしは」 エイルは笑いながら呆れて、天を仰いだ。
2022-08-09 15:45:46「エイル二号がいい?」 黒玉の乙女が首をかしげる。 「エイルでいい」 「そっか」 黒玉の乙女はまたそれきり、急にエイルに興味を無くしてまたどこかへと飛んでいこうとした。
2022-08-09 15:46:48新たにエイルと名付けられた嵐の乙女は、エイルが抱きようもなかったぞくりとする、あまりに美しく自由な姉妹への劣情を自覚する。 飛んでいこうとしたオニキスをエイルは後ろから抱き止めた。
2022-08-09 15:47:50「……」 何も言葉を発さないエイルにオニキスは向き合う。 貸すかに微笑んで、エイルの下腹部に、自身の黒玉で作られた艶やかな陰茎を擦り寄せた。 「あそんでくれる?」 無邪気な問いかけ。 「……あぁ、何でもしてやる」 エイルは自分に比して小さな姉妹を胸の内に抱き入れた。
2022-08-09 15:50:10黒玉の乙女は、嵐の乙女の身体を好きに弄んだ。身体が風で出来ているからと下腹部に直接手を差し入れて子宮と前立腺を掌握してみたり、行為は茫洋とした見た目、性格とは裏腹に苛烈な物となったが、
2022-08-09 15:51:46開き直った嵐の乙女とはまた別に、時代は進む。西方は未だに神秘の色が濃く、骨磁の乙女が姉妹に加わる頃もまだ人は騎馬と剣と魔法で地面を歩いていたが、その影で確かに異常な発展を続ける技術は存在した。
2022-08-09 15:54:47魔女の言った通り、嵐の乙女は二度と一人、竜の巣に挑むことはできなかった。嵐がまるで壁のように手で触れることが出来る。風は同質な物によって干渉が出来る。故に嵐の乙女にとって竜の巣は最早巨大な壁でしかなかった。
2022-08-09 15:56:09かつてエイルだった部分がそれを確認する度に痛み、エイルと名付けられた部分がその度に黒玉の乙女を呼び、二人きりで遠く空へと飛びに出掛けるのだった。
2022-08-09 15:57:00虚しく、と言うのは本人達の生命力が強すぎて治療せずともめきめきと治って行ったからだ。全身の骨が複雑に折れていた筈だったが半年で復帰した。
2022-08-09 15:58:59憎まれっ子世に憚ると言うのか。嵐の乙女はそれを承知していたし、彼らがまだ空を飛ぼうと工夫を重ねているのはしっていたが、あえて干渉する義理もなかった。
2022-08-09 15:59:33古い空飛ぶ鉄は完全に失われた。竜の巣へと消え、彼らが模範とするべき空飛ぶ機械は無くなり、航空技術は再び停滞を迎えた。しかし空を飛ぶことをやめない者達が残り、受け継いでいった。
2022-08-09 16:00:29