ストレイトロード:ルート140(61~62周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は3001~3100+おまけ。なお各話の内容は特に連続していません。 現在も引き続き1日1組つぶやいていますが、まとめ作成は不定期になりそうです。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3013。衰勢(すいせい)。

2021-12-20 19:06:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

盛装の人々が集った宴会場は想定より混雑していた。藍を見失えば捜索に苦労しそうだ、と危機感を覚えた矢先、私と藍の間に黄色のドレスが割り込んできた。距離が開いてはいけないと一歩踏み出せば先回りしてくる。相手は私の方を向き、おかしそうに笑っていた。「地味なおじさんね。藍には似合わない」

2021-12-21 18:59:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3014。盛装。 前に300字ポスカ企画で書いた「宴の前」を少し意識しつつ。 衣装を新調してもカバーできない要素はある。どうしても。

2021-12-21 18:59:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

赤く透き通った石は怪物の体内から見つかったという。研究材料と知らない者が宝石として値をつけてもおかしくない。「いや、出自を知れば気味悪がられるさ」「逆じゃないの?」発見者は藍の指摘を笑って否定した。翌週から様々な人や組織による争奪戦が始まったが、その規模は私達の予想を超えていた。

2021-12-22 18:40:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3015。争奪戦。 タイトルだけ投稿失敗しているのに気づいてやり直し、って初めてかもしれない。

2021-12-22 21:20:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

友人宅を訪れた藍は私の同伴を求めなかった。車の前で見送った後、端末に届いていたメールを開いた。『必ずこの条件で迎えに来ること』時刻はもちろん服装や駐車する場所、出迎える際の立ち位置まで細かく指定されている。買い物の指示もあった。人を喜ばせる芝居ではなく痛い罠を計画しているようだ。

2021-12-23 18:58:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3016。立ち位置。 起こる「何か」の種類すら伏せられている従者。

2021-12-23 18:58:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

一日の内に二箇所で同じ印の集団を目撃した。彼らは祝祭の日に合わせてスープを振る舞い、一方の集落では長蛇の列に大人も子供も連なっていた。ところがもう一方では人々の壁が鍋を取り囲み、藍によると誰もプレゼントを受け取ろうとしないという。「こっちには悪いウワサの方が早く広がったのかもね」

2021-12-24 18:43:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3017。長蛇の列。 無条件の贈り物にも時には賛否が生まれる。 違いのある世界。

2021-12-24 18:43:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

『それを見つけてどうする』老いた声が重く問う。かつて研究者だった人物はビデオ通話の画面越しに藍を睨んだ。質問に質問で返されても彼女は揺らがない。「それが夢の鍵なら使うし、違っても本当のことがわかれば何か変えられるかもしれない」怪物を巡る謎の解明は通過点に過ぎないと断言してみせた。

2021-12-25 18:50:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3018。通過点。

2021-12-25 18:50:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

足をくじいたと泣いていた少年は、背負った途端に元気を取り戻した。「おっちゃん、魔女の手下なんだろ?」訂正しかけた言葉は遠慮ない質問に遮られる。「給料いくらもらってんの?」飲み物を吹き出す音は藍だろうか。「手取りだけでもいいからー」頬を強く引っ張られ、誰の方向にも顔を向けられない。

2021-12-26 19:20:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3019。手取り。

2021-12-26 19:20:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

人類が空を奪われてから最初の年末、一つの論争があったという。聖なるソリは変わらず空を飛べるのか。人々の描いた答えが特別列車や船等の代替手段、怪物に屈しない重装備の飛行隊という願望に分かれた結果、今やトナカイの角が鉄製だと信じる子もいるとか。「わたしじゃないからね?」藍が強調する。

2021-12-27 18:53:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3020。トナカイ。 若干遅刻してる話題ですが。 有人無人を問わず飛行機の使用が禁じられた世界なので(理由:そこそこ大きなものが空を飛ぶとクリーチャーに襲われる)、サンタの飛行も自粛させたポスターとかが多分あったと思ったので。

2021-12-27 18:53:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「いきなり出てきてべらべらと、何様のつもりだ!」激昂した男に詰め寄られた。横柄な態度を揶揄する一言は藍が、それも小声で発したきりだ。私には口を開く許しもなかった。「お客様!」直前まで文句を浴び続けていた店員が唐突に叫んだ。振りかざす腕に隠された鉤爪のようなものが見えたからだろう。

2021-12-28 19:33:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3021。何様。 こういう質問に対する返答のパターン、たまに面白いものがありますよね。

2021-12-28 19:33:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

山のように重なった枝葉を取り除くと小型トラックが現れた。私達の車より古い年式で、それを動かす燃料は今や入手できない。「忘れ物がある」藍が荷台の隅に転がっていた箱を取り出した。濡れた跡はあるが、送付状の記載から辛うじて荷主が判った。「代わりに届けるつもり?」藍は気が進まないようだ。

2021-12-29 19:08:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3022。荷主。

2021-12-29 19:09:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪しい人影が道路脇の車に乗り込むと、前後に整列した同型の車が一斉に発進した。「わたしより先に捕まえる気?」私の制止より先に空が魔女に応えた。冷たい風と共に黒雲が現れ、車列を追うように流れていった。しばらくして濡れ鼠となった集団が戻ってきた。「あの子は雨キライだからすぐ逃げたはず」

2021-12-30 20:26:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3023。濡れ鼠。

2021-12-30 20:26:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

子供に寝ずの番など無理だ、と大人は思って当然だろう。ここは暖かい家の中ではない。村ごと移転する途中の野宿、怪物より野の獣や虫を恐れるべき場面だ。「理由を聞かないの?」指摘に怯む子供達をかばうように藍が立った。その指を上空へ向けて。「星の話をしておいて、それを見るなって面白くない」

2021-12-31 19:36:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3024。寝ずの番。

2021-12-31 19:36:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

荒野に花が咲いていた、と別の子供から二度言われた。彼らは一通り話して満足すると私の横を通り、心躍る出会いを野ばらに例えた有名な詩を口ずさみながら去った。「違う曲だった」二組目の背中を見送った藍が呟く。同じ言葉を違う旋律に乗せて繰り返す間、柔らかい風が吹いていた。「確かに咲いてる」

2022-01-01 18:45:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3025。野ばら。 ゲーテの有名な詩と、描かれた光景を思わせるどこかの話。

2022-01-01 18:45:59
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