ストレイトロード:ルート140(61~62周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は3001~3100+おまけ。なお各話の内容は特に連続していません。 現在も引き続き1日1組つぶやいていますが、まとめ作成は不定期になりそうです。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「親子じゃないなら何なんだね君達は」年配の警備員が私の身分証と藍の真顔を見比べる表情が、当の藍には大層面白かったようだ。大笑いを堪えるのに忙しくてしばらく会話にならなかった。「付き添いがダメなら何て言えばよかったのかしら!」保護者、教師、召使。相棒と評した者もいたが対等ではない。

2021-12-08 19:44:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3001。相棒。 藍とゼファールの旅路は続く。

2021-12-08 19:44:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物を墜落させた強風は現場付近の家屋にもそれなりの被害をもたらした。疲れきった藍を背負って戻る途中、後始末に追われる人々の姿に心が痛んだ。幸い私達の車は無事だったが、役場の職員が待ち構えていた。「顔色やばいけど大丈夫なの。胃痛の薬あるよ?」無言の藍が眠っているなら正直に答えたい。

2021-12-09 18:53:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3002。胃痛。 ゼファール、人によってはその辺が持病だと思われていそう。

2021-12-09 18:53:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

野外イベントで知られる公園が、近隣の集落から避難してきた人々を受け入れていた。彼らの世話をする支援者に声をかけられた藍は、真っ先にどこの団体の運営かを尋ねていた。「何故そこを問題に?」「安全のためよ」人目につかない場所でようやく答えを聞けた。「わたしのこと嫌いな人だったら困るし」

2021-12-10 19:37:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3003。運営。 マザー・フレイムだけが厄介な相手ではない。彼女の関係が一番面倒なのは確かだけど。

2021-12-10 19:37:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

次の街まで同乗する少年は初めての野宿にも怯まなかった。洗濯を手伝うと言うので道具を貸すと、衣服や洗剤の注意書きを読み、バケツに集めた水の液温まで確認してからようやく洗い始めた。「大人に教わる方が早いのに」「人の手順は必ず自己流なので信用できません」私を見る藍の妙な笑顔が気になる。

2021-12-11 18:50:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3004。液温。 文字の情報は頭を素通りだけど人の言葉なら飲み込むとか。音声は記憶に残らないけど文章はためらいなく読めるとか。いろいろいますよね。 [液温]で検索したら洗濯の話が上位に出たので使ってみました。

2021-12-11 18:50:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

農作物の貯蔵庫を怪物から守るべく藍が考案した作戦には大掛かりな仕掛けが必要だった。人手や時間より地主の協力を得る段階が難しく、周辺住民は皆不可能と考えたらしい。「これを見ても黙って引き下がる?」食べ物を狙い急降下する群れを突風が薙ぎ払った。泣き叫ぶ地主は何が大切か気づいたようだ。

2021-12-12 19:51:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3005。大掛かり。

2021-12-12 19:51:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風が止んだ後の街で瓦礫の撤去作業中、小柄なレスリング選手に出会った。全く違うリングで年の近い藍が活躍する姿に刺激を受け、自分も人々を支えるべく手伝いに来たという。その日藍自身は眠っていて会えなかったが、後日に別の地域で対面できた。違う階級の強敵も軽く投げると噂される実力者として。

2021-12-13 18:43:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3006。階級。

2021-12-13 18:43:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

今日の交渉で藍は終始後手に回っていたが、相手の得意なやり方を探っただけと本人は言う。彼女に気後れなど似合わないが、失敗を隠して強がることはあるので、席を外した隙に端末の画面を覗いた。送信前のメールに弱音はない。強敵の裏工作を警戒しているが、要求された額が一桁違うのはわざとなのか。

2021-12-14 18:52:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3007。気後れ。 強き魔女でいることを自分に課していそうではある。 でも数字には弱い?

2021-12-14 18:52:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ホテルの前で私達を呼び止めた女性は疲れた顔をしていた。「あんなことはもうやめて」藍が取材を受ける姿を見たのだろう。「うちの子にも不思議な力があって。あなたが活躍するほど化け物扱いされてて困るの」母親の話しぶりからは、長いこと子の能力と周囲の空言に振り回されてきた苦労がうかがえた。

2021-12-15 18:59:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3008。空言(くうげん)。

2021-12-15 18:59:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

自動走行ロボットは発信器をつけた怪物の追跡中に反応が途絶えたという。研究員の手元に残る映像は最後に渓谷らしき場所を映していた。「人が歩けないような崖だから機械にしたのに」「谷には何も落ちてなかったけど」山から吹きつける風を浴びた藍が呟いた。「カメラっぽいものにじゃれてる子がいた」

2021-12-16 18:52:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3009。渓谷。

2021-12-16 18:52:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「屋根の上に逃げた」藍が指した先を向いたまま数歩下がると尖塔がよく見えた。その端で泥棒が白いタオルを大きく振っている。双眼鏡越しに顔を確かめた。「降りられないから降参ってこと?」「しかし笑顔なのですが」諦めや恐怖にそぐわない表情のまま、彼は足を踏み外した。冷たい風は驚きの表れか。

2021-12-17 18:56:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3010。降参。

2021-12-17 18:56:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風のない夜に農地を荒らしたのは人間だった。対立する少年グループの喧嘩による惨状を、当事者は相手の差し金と決めつけ、年長者は怪物の被害を疑い恐れた。そして集落に立ち寄った私達に怒りをぶつけてきた。「証拠くらい用意しなさいよ」乾いて固まった土に残る足跡は藍の靴より明らかに大きかった。

2021-12-18 19:33:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3011。差し金。 この場合は余所者だからというより、多分クリーチャーと同一視とか操ってる疑惑とかのせいで疑われている。 もちろん事実は異なる。

2021-12-18 19:33:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

角を曲がると長蛇の列が現れた。藍が車の窓越しに看板の商品名を読み上げ、急に頬を膨らませた。「並ぶ時間ないときにこんなの見つけないでよ!」若者を中心に人気となり長らく品薄だった菓子がようやく再販売されたらしい。「あれ買ってくる用に配達員でも雇おうかな」私には提案できない解決方法だ。

2021-12-19 18:53:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3012。品薄。 寄り道する暇はない、ゼファールを行かせると自分は徒歩になる、さてどうする?……が二択にならないのが藍ちゃんかな、と。

2021-12-19 18:53:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある川沿いの街で夜を明かした。大きな工場を中心に成り立ち、かつては賑わっていたことが古い看板から読み取れる。だが散歩に出た藍は意外な発見を告げた。「何も暴れてない。爪跡も落とし物もなかった」怪物でなければ人間の仕業だ。この地は盟主だった企業の衰勢によって何もかもを失ったのだろう。

2021-12-20 19:06:59
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