成形炸薬の装甲貫通後の効果について

間違いを指摘していただけると助かります。 2月18日、成形炸薬の加害原因に対する資料として<US Army Medical Department Borden Institute 『Conventional Warfare Ballistic, Blast and Burn Injuries』 http://t.co/pBZe245p> を、爆焔効果に関する資料として<Joseph E. Backofen, Jr. 『Armor Technology Part V: Crew Survivability』 ARMOR january-february 1984 p21~p25>を追加。
44
山瀬広 @taisennshatiku

※成形炸薬の装甲貫通後の効果について※ (参考文献は最後に)

2011-10-15 22:58:30
山瀬広 @taisennshatiku

まず調べ始めた動機について。中東戦争論文集の《参考文献1》のp582に、第四次中東戦争の戦訓として『戦車は、戦車砲・対戦車火器の射弾の直撃を1発受けただけでは、100%戦闘不能に陥らない。』ことや、

2011-10-15 22:58:37
山瀬広 @taisennshatiku

『HEATの特性上、相手のぜい弱部(弾薬収納部等)をねらうか、スエズ東岸の戦闘のように1車に同時に3発以上命中させることが即時戦闘不能に陥れるための戦法上の決め手になった。』とあり、

2011-10-15 22:59:07
山瀬広 @taisennshatiku

戦車一両に対し多数弾集中する必要があるのかと感心したのと同時に、そんなに必要なのは何故なのかと思ったのがきっかけです。

2011-10-15 22:59:24

貫通後の破壊効果・主要因

山瀬広 @taisennshatiku

破壊効果が小さい事について《参考文献1》の文中では、

2011-10-15 22:59:37
山瀬広 @taisennshatiku

『HEATの場合、火条が比較的細いので、これによって損害の及ぶ人員・物体は、限られた範囲にとどまることが多い。ただし、火条が弾薬・燃料・油脂等に当った場合には、火災による絶大な二次被害が発生し、戦闘不能状態になった。』(p582より)

2011-10-15 22:59:55
山瀬広 @taisennshatiku

とありましたが、「火条が細いため」だけでは個人的にやや説明不足であると感じました。しかし調べてみると、この説明は正鵠を射ていたのです。

2011-10-15 23:00:11
山瀬広 @taisennshatiku

こちらの<Weapons Effects and Parachute Injuries>http://t.co/APQL2bBh(PDF)のp1.10によると、成形炸薬により生じたジェットとスポール(剥離した微細な装甲片)が人員に損害を与える二大原因とあり、

2011-10-15 23:00:49
山瀬広 @taisennshatiku

またこちらの<Behind Armour Effects at Shaped Charge Attacks>http://t.co/00O20t7K(PDF)のp49によると成形炸薬により穿孔されたとき最も多く観測されるのはジェットとスポールであることが分かります。

2011-10-15 23:01:17
山瀬広 @taisennshatiku

<Behind Armour Effects at Shaped Charge Attacks>p49の図 http://t.co/00O20t7K

2011-10-15 23:01:52
山瀬広 @taisennshatiku

他にも《参考文献2》のp28、《参考文献3》のp21-p22によると、貫通後の人員・器材の損害の原因はジェットや飛散したスポールによるものと説明されています。

2011-10-15 23:02:10
山瀬広 @taisennshatiku

ちなみにスポールとは、ジェットや徹甲弾が装甲を貫通した際、貫通孔から噴出したり、孔付近から剥離して飛散る“装甲片”のことを言い、装甲が薄かったり、装甲を飛び出す時のジェットや徹甲弾に残るエネルギーが大きければ大きいほど量が多くなります。

2011-10-15 23:02:32

2月18日追加部分

山瀬広 @taisennshatiku

US Army Medical Department Borden Institute http://t.co/pBZe245p このリンク先の「Chapter 1: The Weapons of Conventional Land Warfare」の

2012-02-18 18:45:34
山瀬広 @taisennshatiku

「Pages 23-37」のPDFファイル内に、成形炸薬のジェットが装甲を貫通した際の乗員の被害についての記述があります(p27-p30) ただし、PDFにはどのような傷が生じるかを示すために『遺体・負傷者の受傷部のカラー写真が数枚載っています』ので、閲覧にはご注意ください。

2012-02-18 18:45:49
山瀬広 @taisennshatiku

これによるとジェットの直撃や爆風により殺傷されることは少なく、大抵の場合は飛散ったスポールによって殺傷されるとあります。また第二次大戦やベトナム時における米軍兵士の成形炸薬による被害はスポールによるものが一般的だったようです。

2012-02-18 18:46:04

スポールへの対処法

山瀬広 @taisennshatiku

さて、そのジェットとスポールによる損害なのですが、それほど恐れるものではないようです。ただし、装甲を厚くしたり、スポールライナを取り付けるといった相応の対策をとった場合においてですが。

2011-10-15 23:03:58
山瀬広 @taisennshatiku

《参考文献4》にて近藤清秀氏が、《参考文献5》にて大和武氏が、それぞれタル氏に対して成形炸薬の効果について質問したものがあるのですが、タル氏の返答に

2011-10-15 23:04:17
山瀬広 @taisennshatiku

「装甲が薄い場合、ジェットにより生成されるスポールの飛散角は120°であるが、装甲を厚くしたり、多重装甲化することで飛散角は30°まで減少し、威力圏が小さくなる」「貫通時のジェットの残存エネルギーは10%以下」とあります。

2011-10-15 23:04:42
山瀬広 @taisennshatiku

つまり装甲を厚くすることでスポールの発生量と飛散角を抑え、人員・器材への被害を局限化することが可能なのです。

2011-10-15 23:05:04

補記:成形炸薬による爆焔効果(ガス化)

山瀬広 @taisennshatiku

またスポールを原因として発生する損害に、爆焔効果(ガス化)と言うものがあります。これは貫通後、乗員室内で粉塵爆発のような爆発を起こすもので、乗員・器材に対し甚大な被害を与えます。

2011-10-15 23:05:30
山瀬広 @taisennshatiku

《参考文献3》《参考文献6》《参考文献7》によると、この現象は大量のスポールが急激に酸化することによって爆発が起きるとされており、スポールが熱を持ち、かつ酸化皮膜に覆われていないという特殊状況下で起きるもので、発生するスポール量の少ない重装甲ではほとんど起こらないもののようです。

2011-10-15 23:06:48