金明秀先生のスタイル吐露

@han_org/金明秀教授の、研究と政治的実践についてのスタイルもしくは戦略に関する一連のツイートをまとめました。
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金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

《「研究者」の発言》が《「研究者」としての発言》として受け止められるためには、その発言に《「研究者」としての発言》という意味付けを与える「場」が必要でしょうね。ツイッターの場合、その「場」は偶発的に成立することもあれば、しないこともある。

2011-10-30 23:52:44
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

「学界」は《「研究者」の発言》を《「研究者」としての発言》として成立させるための代表的な「場」ですね。ぼくも、社会学の中の特定の領域の中では、自分の発言を純粋に学術的な観点から発したものだと捉えてもらえる(たとえ原初的な問題意識が濃厚に反映していようとも、それを織り込み済みで)。

2011-10-30 23:59:17
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

しかし、多少、専門領域を離れてしまえば、「学界」といえども、《「研究者」の発言》を《「研究者」としての発言》として定位させる効果は薄くなる。ましてや、マイノリティ研究者が人文社会科学的な研究を行う場合、「あれは学問ではなく政治だ」というレイベリングを受けることも珍しくない。

2011-10-31 00:02:28
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

まあ、人文社会科学的な研究の場合、マイノリティであろうとなかろうと、その人の政治的スタンスが研究上の視角を左右しうるのだけど、マイノリティ研究者の場合、ことさら政治的な背景が、当人の意図とはずれたところで、前景化してしまう傾向がある。

2011-10-31 00:07:35
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

そういうプレッシャーに対して、マイノリティ研究者は、政治性を逆に前面に押し出すか、極度に政治性を包み隠してしまうか、いずれかの戦略を採りがちであるように思う。いずれの戦略であれ、本人の意図とずれたところで不本意に政治性を読み込まれるリスクを軽減できる。

2011-10-31 00:11:44
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

「自説を展開する上で朝鮮半島の研究者の業績を出典には使わない」みたいなマイ・ルールを課していたのは、金達寿さん。ぼくにはその問題意識がよくわかる。植民地主義的な観点から、自説を出典ごと否定され(るという二重の屈辱にさらされ)かねない、という懸念だろう。

2011-10-31 00:14:07
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

ぼくの場合、「学界」の中での戦略は、(1)問題意識の政治性は一切隠さずに前面に提示する。(2)しかし、アプローチはできるかぎり正統的な手法を用いる、というもの。計量的な手法を選んだのも、そのため。

2011-10-31 00:17:37
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

一方、「学界」の外での戦略は、《自分の発言》を《「研究者」としての発言》として受け取ってもらうこと自体をはじめから期待しない、というもの。これは、マイノリティ研究者に対する過剰な政治性の付与への対策というだけでなく、「学界」の外へと研究成果を還元する際の心構えの一つでもある。

2011-10-31 00:22:39
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

ツイッターを例にとりながらもう少し具体的にいうと、ぼくが差別や人権問題に関してツイートするとき、ぼく自身は《「研究者」としての発言》であるように誠心誠意努めている。自分の学問的信条を逸脱することはけっして書かない。でも、それを「当事者」の発言だととられてもまったく気にしない。

2011-10-31 00:30:10
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

また、在日とは異なるマイノリティについて発言するとき、ぼくは《「研究者」として》の知識と感性の範囲で、自分の政治的信条に照らしてもっとも適切だと思われるスタンスを採用している。でも、それをマイノリティの利害のために発言しているととられても、まったく気にしない。

2011-10-31 00:36:17
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

以上の態度には、何らかの政治的な争点をめぐる構築主義的な過程に参加することを躊躇させないというメリットがある。それは、日本のアカデミアの人々には、一般にはハードルが高いことだろう。

2011-10-31 00:43:01
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

ぼくがネットでやっていることは、有機的な公共社会学の実践であると同時に、当事者の運動の一部を構成してもいる。ぼくの中に両者の区別はあっても、混同して受け止められることを厭わない。

2011-10-31 00:46:34
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

迷っていたけど、やっぱり書いてしまおう。このスタンスをとることによって、ある種の理想的なブリッジ役割を達成できると、ぼくは考えている。あるマイノリティと他のマイノリティの。マイノリティとマジョリティの。アカデミアと非アカデミアの。等々。

2011-10-31 00:49:44
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

こういう気恥ずかしいことを書いてしまえるというのも、このスタンスのメリットの一つだろうなあ。

2011-10-31 00:51:57