ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編 #6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。レッドハッグです」「ドーモ。レイテツです。貴様が救援信号を？」「ああそうさ。ダメ元でね。アタシ一人じゃどうにもならない状況だった」『一人じゃねえ。俺も居る』バイクが音声を発した。「黙りな。ええと。何しろアタシも今じゃネオサイタマの他所者だ。アンタしかアテがなくてさ」18

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女は黒いポリマーめいた物質を装束めかせて身体を覆い、羽織ったジャケットの背には逆さの「婆」の漢字が刺繍されている。「あの後ネオサイタマにダラダラ留まってテキトーに仕事してたら、このザマ。出られやしない」『全くだ』跨るバイクは自律AIじみてUNIXライトを光らせ、相槌した。　19

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『結構多忙だってのに。成り行きでこうして市民の皆さんをな。まあ俺は正義のロボットだし、望むところだ。あ、俺はノブザメE。人型にも変形する。つうか人型が本来、』「フー」レッドハッグはタバコを吸い、バリケードの崩された駐車場広場を振り仰いだ。テントが集まっている。「まあそういう事」 20

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「ハヤシダ＝サン……！」「クソッ……！」隊員達が死亡した隊員を引っ張ってきた。脳天をハッポースリケンが貫き、死に至らしめている。「アンタら、悪いけど悼む時間はまだない。きっと、すぐに次が来る」レッドハッグはバイクの上で、黒く放電する不気味なカタナを構えたままだ。　21

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「なんてこった」「KATANAが来てくれたのか」打ちひしがれた武装市民が何人か、集まってきた。「なあ、安全地帯が他所にあるってのは本当か」「そういう話をもってきた奴がいるんだよ。その後、すぐ死んだが」「IRCができねえから……」「ウキヨエが見えて、顔なしの奴らも来ないッてよ」　22

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隊員たちは互いを見た。レイテツは言葉を濁した。具体的に答えるべきか、難しい問題だ。武装市民達はZBR薬物影響下の血走った目で唸った。「どっちにしろ、この場所を捨てなきゃならなくなっちまったら、やるしかねえ」「エクソダスだ」「KATANAの皆さん、そん時は助けてくださいよ」　23

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「我々も現在の状況を把握しきれていないのが正直なところだ」レイテツは言った。「だが最善は尽くす」「マッポー来たれり！」テントの中から、ボロ布を纏った老人が這い出し、唐突に叫んだ。「キンカク・テンプルの輝きが告げる！ゴーン！ゴーン！エヴリワンゴーンなり！」「おいやめろジジイ！」24

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「あ、ああ」老人は頭上の黄金立方体を見上げ、恍惚とした。武装市民達が駆け寄り、テント内に戻そうとした。だが間に合わなかった。老人は立ち上がり、その場でセイケン・ツキを開始した。「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」「クソッ」「おしまいだ」武装市民達は匙を投げた。「また一人やられた」25

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「イヤーッ！イヤーッ！イヤッイヤッイヤーッ！」老人は血を吐きながらセイケン・ツキ速度を加速させてゆく。皆が焦った。異常だ。「……！」レイテツは頭を押さえた。リイイン。嫌な周波数がニューロンを掻き乱した。「来るか！」レッドハッグが唸った。「イヤーッ！」ビル陰から、黒い闇！　26

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」一体、二体、三体と、次々に側転で出現するフェイスレス達！「クソが！」「来やがったぞ！」KATANA隊員がライフル掃射で迎え撃つ！「イヤーッ！」彼らは銃弾を回避し、躍りかかる！「イヤーッ！」レッドハッグがバイクから跳んだ！空中で斬る！「アバーッ！」　27

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胴体から両断されて飛び散る黒い影の後ろに、さらなるフェイスレスが続く。レイテツは空中に片手をかざし、コリ・クナイで撃ち落とした。もがきながら落下する影に隊員が駆け寄り、容赦なく銃撃した。「イヤーッ！」「グワーッ！」すり抜けた別のフェイスレスが隊員を襲う！　28

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レイテツは後ろからカタナを突き込み、その者を仕留めた。だが別方向からあらたなフェイスレスが側転出現！「８時方向！」迎撃！BRAKKA！BRAKKA！「グワーッ！」今や四方八方から出現するフェイスレス！レッドハッグのバイクが軋み音と共に起き上がり、自称どおり人間型となる！そして参戦した！　29

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「これが鋼鉄のパワーだ……グワーッ！？」のしかかってくるフェイスレス！レッドハッグが援護！「イヤーッ！」「グワーッ！」その一方で、武装市民が不意に武器を捨て、セイケン・ツキ開始！「イヤーッ！イヤーッ！」ナムサン！ジゴク！　30

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この乱戦下、レイテツは敢えてセイシンテキを整え、カタナを逆手に持って地面に向けた。刀身にコリ・ジツの力がみなぎり、白く発光する。それを突き立てる！「イヤーッ！」KRAASH！放射状に広がる白い冷気が無差別にその場の者たちを凍結した。怯むフェイスレス！KATANA隊員は装甲に守られている！　31

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BRATATATA！一気呵成の反撃がフェイスレスを蜂の巣にし、押し戻す。武装市民達は凍る足元にすら意識を向けず、セイケン・ツキを継続している。「イヤーッ！」「グワーッ！？」隊員の一人が斜めに撥ね飛ばされ、ビルの壁に衝突した。HMDに心停止表示。フェイスレスの一つが新たなクロヤギとなった。　32

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「な……」「ア……」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」クロヤギ・ニンジャが両腕を鎌形状に変え、怯んだ隊員の首が吹き飛ぶ。レイテツは地を蹴り、クロヤギ・ニンジャに斬りつけた。「イヤーッ！」「イヤーッ！」二刀鎌とK.E.Sカタナが拮抗！鍔迫り合いとなる！　33

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「イヤーッ！」レッドハッグはノブザメEと並び立ち、引き受けたフェイスレスを倒し尽くした。そしてレイテツに加勢しようとした。だが……ナムサン。腰まで斬りおろしたフェイスレスの残骸が泡立ち、山羊角と髑髏メンポを生成し、二倍にも膨れ上がった。新たなクロヤギ・ニンジャである！　34

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「イヤーッ！」「グワーッ！」ノブザメEが叩きのめされ、「イヤーッ！」「グワーッ！」レッドハッグが丸太めいた蹴りを受けて弾き飛ばされた。『あれはジツがない。要らない』レイテツと武器越しに睨み合うクロヤギが嘲った。『だが、お前は良い。我がものとなれ。コリ・ニンジャ・クラン上位者よ』 35

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「俺はレイテツ。KOLのニンジャだ……！」レイテツは二刀鎌を押し戻す。「貴様は何者だ。ネオサイタマを変えたのは貴様らか」カタナが発光し、クロヤギの両腕に氷が侵食する。クロヤギは笑い、問いに答えた。「我はカツ・ワンソーの影。ゆえに、この小さき都市をほしいままにする権利を、当然持つ」 36

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「なにを……」それはレイテツの理解を超えた言葉だった。眼前の髑髏メンポが軋みながら顎を開いた。両腕の氷が溶けて落ち、レイテツの力を凌駕し、クロヤギが首筋に喰らいついた。「AAAARGH！」「グワーッ！」　37

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「Wasshoi！」

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黒い牙がレイテツの装甲を貫通し、肉を裂き、鎖骨を割り、深く入ってくる。彼の内なるニンジャソウルは反射的に彼の肉体に冷気を駆け巡らせ、致命傷を止めようとする。ニンジャアドレナリンがニューロンをどよもし、緩慢に流れる時間の中、レイテツは、クロヤギの後ろの空をえぐる赤黒い渦を見た。 39

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牙が止まった。そして、ゆっくりと抜けていった。それはクロヤギの望んだ事ではなかった。クロヤギの背後、ドライブ回転しながら飛び来たった赤黒の渦は、実際、ニンジャであった。赤黒のニンジャはクロヤギの背中にとりつき、山羊角を後ろから掴み、凄まじい力で引っ張って、顎をこじ開いたのだ。　40

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「AAAARGH……！」メキメキと音を立て、クロヤギは強制的に後ろにそり返らされてゆく。「「グワーッ！」解放されたレイテツは地面を転がった。そこへ第二のクロヤギ・ニンジャが襲いかかった。「イヤーッ！」割って入ったのは、すぐさま戦線復帰したレッドハッグである。レイテツを抱え転がる！　41

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ドクン。ドクン。ドクン。ニンジャアドレナリン過剰分泌下、レイテツは苦痛にのたうち、出血する頸の傷を己のコリ・ジツで止血しようともがいた。レッドハッグが立ち上がり、武器を構え直す。レイテツは見た。クロヤギ・ニンジャの顎を……後ろから……裂き開いてゆく……死神じみたニンジャ……！ 42